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漢文の海で釣りをして

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古今の漢籍が泳ぐ歴史の海に釣り糸を垂らし、釣れた漢文を我流な解釈で書き連ねたものです
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#漢詩

漢文の海で釣りをして【第1回】小さな春でも、春は春

漢文の海で釣りをして【第1回】小さな春でも、春は春

【漢文ってスゴいんです】 中国の大地に甲骨文字が生まれて爾来数千年。漢字で書かれた文章…すなわち漢文はその知恵を蓄積させ続けて、現代にまで読み継がれています。
歴史的に漢字を使用してきた国々では、ひとつの共通言語としての役割を果たしてきました。漢字文化圏において漢文は、国境はもちろん時代をも超えることが出来ます。
例えば『韓非子』に出てくる「矛盾」という言葉などは、千年前の中

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漢文の海で釣りをして【第4回】変わるもの、変わらないもの

漢文の海で釣りをして【第4回】変わるもの、変わらないもの

「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」
≪訳≫毎年毎年、花は同じように咲くのに、毎年毎年、それを見るひとのこころは同じようにはいかない
≪出典≫劉廷芝「代悲白頭翁」

古来より日本人にも愛されてきたフレーズです。「年年歳歳」「歳歳年年」は書き下すのが難しいのでそのまま「ねんねんさいさい」「さいさいねんねん」と読みます。これはこれで朗誦するとなかなかリズムがよいです。
「代悲白頭翁」は漢詩。こ

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漢文の海で釣りをして【第9回】春はやってくる、そして過ぎていく

漢文の海で釣りをして【第9回】春はやってくる、そして過ぎていく

「歌管高楼声細細 / 鞦韆院落夜沈沈」
≪訳≫宴の歌の音も遠く / ブランコひっそり夜の庭
≪出典≫蘇軾「春夜」

漢文に返り点をつけて日本語っぽく読む。
書き下し文と呼ばれる日本独自の漢文の読み方です。
しかし、なかにはどうしてもこの方法では読めない漢文というものがあります。
本日の句がそれです。

歌管高楼声細細
(かかんこうろうこえさいさい)
鞦韆院落夜沈沈
(しゅうせんいんらくよるちんちん

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漢文の海で釣りをして【第11回】世界最強の権力者でも手に入れられなかったもの

漢文の海で釣りをして【第11回】世界最強の権力者でも手に入れられなかったもの

「少壮 幾時ぞ 老いをいかんせん」

≪訳≫若く元気な時間というのは無限ではない。どんなひとでも老いを止めることはできない
≪出典≫漢の武帝「秋風辞」

約400年続いた漢王朝。
その最盛期に君臨した皇帝が武帝です。
当時の中国は世界最強の国といっても過言ではありません。
その国の頂点に立つ男…いわば世界で一番、富みと権力を手中にしていた男が読んだ詩から今回の一文です。

武帝がこの詩を詠んだのは

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