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「大卒で飲食ではたらく!」ができない留学生。【ビザの行政書士】

在留資格『技術・人文知識・国際業務』は、留学生が専門的な職に就くためによく活用される在留資格です。外国人の方が「就労ビザ」というとこの在留資格を指すことが多いです。入管庁は、この在留資格において、留学生が学んだ専門的な知識や技術が、彼らの就職先と直接的に関連している必要があるという方針を採用しています。この方針は、留学生が留学生の在留資格から『技術・人文知識・国際業務』への変更をする際に特に重要視されます。

しかし実際には、学んだ専門的な知識と就職先がリンクすることは、非常に難しいです。例えば、情報技術、工学、教育学などの学部では、学んだ内容と職業が直結する可能性が高く、入管庁の方針に沿いやすいです。これらの分野では、専門知識を活かした職業に就きやすいため、在留資格の取得が比較的容易になります。

一方で、文学部や心理学部、経済学部など、主に文系学部の場合、専門知識と直接リンクする職業に就くことは一層困難です。さらに例えば、国際ビジネス学部のような幅広い知識を提供する学部では、専門的な業務に該当するのがどの仕事なのか、定義が曖昧となりがちです。このような状況は、留学生だけではありません。日本人学生にも共通する問題ですね。学部を卒業しても、多くの卒業生が学んだ専門分野とは異なる職に就くことは一般的です。例えば、文学部の卒業生がライター、編集者、学芸員などの専門職に就く確率は限られています。専門領域から離れ、人手不足の業界・職種に就職することは当たり前のことです。「文学部から未経験でプログラマーに!」というPR文を私は見たことがあります。

行政書士は、学校卒業の在留資格変更をよく行います。残念ながら多くの場合、学校で学んだ専門性と就職先とがリンクしておらず、いわゆる「作文」を行う必要性があります。行政書士の職人技(笑)が発揮されますね。

この問題の背景には二つの根深い問題があると考えます。一つは、教育機関が現実社会で求められる人材育成に応えられていない、ということです。明治以来の近代化の流れの中で西欧から移植した大学組織が「古き良き伝統のアカデミック」になってしまっています。大学(の学部区分)が社会の変化に適応できていないです。もう一つは審査をする入管庁の審査基準です。こちらも同様に現実の変化のスピードに合致しない部分が出てきています。
これらの歪(ひずみ)は日に日に大きくなっており、いつか大きな問題となる日がくるでしょう。私は一人の行政書士として目の前にいる困っている人の力になることを日々継続します。


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