イーリード大橋武広

社会保険労務士×事業会社の人事部長×今は人事コンサル兼経営者/ゴルフはクラチャン6回の…

イーリード大橋武広

社会保険労務士×事業会社の人事部長×今は人事コンサル兼経営者/ゴルフはクラチャン6回の腕前w/人事周りのことを綴るべく、令和6年6月にnoteを始めました。

最近の記事

すらすら読める人事小説:部下を持つ⑩

くしくも、この瞬間が新生新卒採用チームの船出の瞬間だった。記念すべき第一歩としては、少々貧弱な場の設定である。山田は、新生チームの船出は、もっと華やかに豪勢に行きたいと常々思い描いていた。 「あ、ああ。よろしく。山田です」 それにしても、聞いていないことだらけじゃないか。東口の他にもメンバーがいたなんて。しかも入社したばかりの新卒社員とは。俺に新人教育もやれと言うのか。 山田は心の中で、数日前に描いたチームビルディングの計画が早速狂いだしていることを感じた。 「今日の段取りは

    • すらすら読める人事小説:部下を持つ⑨

      4月初旬の大阪は、春の冷たい雨だった。山田と越智は、土地勘がないために道に迷いつつ、予定より20分遅れで面接会場に入った。 面接会場は貸し会議室が入る背の高いビルだった。慌てて飛び込んだエレベーターでは着慣れないリクルートスーツ姿の学生数名と一緒になった。 「うちを受けに来た学生か」 いよいよ始まるなと気持ちを引き締め、山田は、硬めの表情で階数を示すボタンを見上げた。 「課長、5階です」 越智が立川産業の面接会場を小声でささやく。「うん」と山田が答えた声だけが妙にデカく、そし

      • すらすら読める人事小説:部下を持つ⑧

        「越智さんは、なぜ新卒採用チームに来てくれたの?」 「あ、はい。実を言うと復職場所として新卒採用チームを佐川部長から提案されたとき、チームの課長が岡部課長なら会社を辞めようと思いました。でも山田課長だと聞いて、それなら戻ってもいいかなと思いまして」 越智はやや照れながら、正直な気持ちを山田に伝えた。 「俺だから?」 こいつは俺の何を知っているのだろうか?果たして俺は、人事部の若い社員から何と思われているのだろう。山田は、越智の言葉に素直に喜べずにいた。ただ、越智の反応を文字通

        • すらすら読める人事小説:部下を持つ⑦

          貧弱な船出 山田は、復職明けの越智とは、いつものオフィスではなく、非日常のシチュエーションで話をしたいと考えた。そこで、越智の復職日を山田の大阪への出張日と重ね、越智を同行させた。大阪に場所を移し、ゆっくりと水入らずで話そうというわけだ。 大阪では、滞っていた学生との採用面接が組まれていた。新卒採用チームの東口が、学生からの掲示板への書き込みや問い合わせにしびれを切らし、上司不在の中、誰に断るわけでもなく勝手に面接を組んでいたのだ。 越智は、緊張した面持ちで東京駅の22番

        すらすら読める人事小説:部下を持つ⑩

          すらすら読める人事小説:部下を持つ⑥

          「先週飲んだんだよ。元気なかったけどな。一度俺から話してみようか?」 佐川の発言からは越智と飲んだ目的はわからなかったが、越智の退職を事前に防ぐための手立てといったところだろう。 そのころ立川産業では、人事部社員の退職が続いていたのだ。佐川は社長からそのことを指摘されていた。これ以上の退職者を出すわけにはいかないと感じた佐川は、人が変わったように社員との距離を縮め始めていた。いくらリスク管理に長けた佐川でも、全ての社員に目を光らせておくことはできない。そこで、山田にも責任の一

          すらすら読める人事小説:部下を持つ⑥

          企業人事小説:部下を持つ⑤

          「扇谷さんの代わりは採用しても良いですよね?予算上は問題ないはずですし」 「もちろん」 異動希望を出すほど気持ちが切れかかっている東口と、これから採用できるかどうかもわからない派遣社員。山田は、厳しいスタートになることを覚悟した。 「あと二人は必要ですね・・・」 山田の頭には、あと2枚は必要だと瞬時に浮かんだが、佐川からの返答はない。外からの採用は無理であろう。何人か社外の知り合いの顔が浮かんだものの、そもそも彼らが来てくれるかわからない。たとえ来てくれることになったとしても

          企業人事小説:部下を持つ⑤

          企業人事小説:部下を持つ④

          「やります。ただ、チームメンバーは誰をお考えでしょうか?」 メンバーの東口が異動希望を出していることを知ってはいたが、あえて個人名は出さずに佐川の出方をうかがうような聞き方をした。 「誰か加えたいメンバーはいる?」 チームを再構築する場合、リーダー自らメンバーを選定するのがセオリーだ。そのことを知ってか知らずか、佐川はメンバー選定を山田に任せるような質問を投げかけてきた。 「そうですね、現在のメンバーは東口さんと派遣の扇谷さんだけですよね。」 「いや、扇谷さんは辞めることにな

          企業人事小説:部下を持つ④

          企業人事小説:部下を持つ③

          「いや~、参ったよ、岡部には。あれだけ時間をかけて育ててきたしフォローもしたのになぁ。最後は俺のせいで体調が悪くなった、その責任を取ってほしいなんて言うんだから」 「山田さんも知っていると思うけど、岡部にはほとほと手を焼いたんだよ。家族ぐるみで世話をしたことだってあったんだから。」 佐川の口調は次第にヒートアップしていく。やがて岡部のことも呼び捨てだ。 「それがついには俺を刺してきやがったんだから、本当に参るよなぁ。というわけで大変なことは重々承知しているんだけど、新卒採用、

          企業人事小説:部下を持つ③

          部下を持つ②

          企業人事小説 部下を持つ② 「山田さんには、今度新卒採用チームも見てほしいと思ってね」 ばつの悪そうな、それでいて少し強がった表情を浮かべ、佐川部長は目の前に座る山田課長に話を切り出した。普段、何か要件があれば自席から社員を呼びつけ、小声で話しを切り出す佐川部長が、人事部にあてがわれた個室を自ら予約し、二人きりで話をしたかったのにはわけがある。 これまで佐川部長自身が手塩にかけて育ててきた新卒採用チームの岡部課長が、パワハラの加害者として部下たちの訴えに遭い、体調を崩し休職

          企業人事小説:部下を持つ①

          はじめまして、イーリード株式会社の大橋と申します。 私は、社労士事務所での修行を経て、事業会社数社で人事部を経験し、そして現在は人事コンサルを生業とする、イーリード株式会社の代表をしています。 これまでとてもたくさんの人と出会い、様々な経験をさせてもらいました。 その経験から学んだことは、部下を持つことの難しさ、そして喜びでした。 部下を持つ人の中には、部下の失敗でイライラしたり、こちらが意図していない動きをする部下に振り回されるなど、とても面倒くさいと感じる人もいるかも

          企業人事小説:部下を持つ①