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全ての職種で請負関係は変化する"建築家がアクセサリー作家となる時代"


まだ学生だった。

23歳の若造が、建築の世界で巨匠と呼ばれるような建築家に言った言葉。

「建築家がアクセサリーを作って自分で売らないと生きていけない時代が来る」

当たり前のことだが、その後怒られた。怒られすぎて脳がシャットダウンして何を言われたか覚えていない(笑)正直怒らせることも分かっていた。でも言うしかないと思って、信念を持って伝えていた。その信念は、その建築家の影響力でこれから建築と向き合わなければならない若い人たちに警鐘を鳴らして欲しいという思いから来ていた。

ではなぜ僕はそんな考えを持ったのか。


2つの大きな社会的変化


一つ目は、現在であれば建築に携わっていない人でもすぐに理解できるであろう「建築仕事の減少」の予測だった。僕が予測を始めた2006年当時はまだ建築仕事の減少という予測が理解される時代ではなかったが、僕は卒業設計で「少子高齢化問題」を扱っていたこともあり、それは予測可能な問題だったし、一部の社会学者はその問題に対して警告を出していたから2006年当時であっても予測は可能だった。


その数年後、設計事務所で働いているとリーマンショックの影響で経営者から「お給料が払えない」と伝えられ、あぁこうやって建築仕事は色んな影響を受けていくのだなと実感した。

しかしここで悲観しなくても良い!!世界的に見れば人口も増え続けているし、建築仕事は増えていくのでは?と思った人もいるかもしれない。それは大きな間違いで、建築仕事はクライアントの減少の他に環境問題とも一緒に考えられる。炭素使用の問題などを考慮すると、旧来の建築では世界でも仕事は激減すると予測される。

そして建築関係者なら分かると思うが、建築雑誌に掲載されている建築仕事がここ10年で激変している。もし興味がある人が本屋さんで過去の本と出版されたばかりの本を見比べてほしい。今はリノベーションなどが主流となっていて、新築に限っては挑戦的な建物は身を潜め、既視感のある建物ばかりが紹介されている。それだけ新築案件が貴重なのだ。

徐々に規模感が小さくなっているのだ。そして30、40年前には「住宅レベルの規模を設計する人を建築家と呼ぶな。都市を創造する者こそ建築家なのだ」という考えが建築界にはあった事実もある。今では考えられない。

今、僕が「アクセサリー作家を建築家と呼ぶ時代が来る」と言っても信じられないだろうが、実際に起ころうとしていてもおかしくない。


2つ目。ここからがとても重要な考えで、どんな分野に対しても言えることだ。

建築家、と聞くと皆さんは「建物のデザインを考え、設計図を書いて、施工者(作る人たち)に指示を出して、クライアントの満足に答える職業の人」と考えてはいないだろうか。僕はこの役割に大きな変化があると考えた。それは情報社会の到来と空家の増加に大きな関係がある。

この説明をする前に一つお伝えしておくべき事実がある。それは建築家は建築士(設計図を描く人)ではない、ということだ。正直にいえば建築家は誰でも名乗ることができる。しかし建築士(設計図を描ける)になるには国家資格が必要となる。情報社会が到来する15年くらい前までは「建築家=建築士」として語られていた。しかし中には誰もが知っている建築家でも建築士の資格を持っていない人もいる。

建築家はいわば「プロデューサーやディレクター」に近い。設計図を描くのは建築士の仕事なのだ。


情報社会の到来、そして空家の増加などによって、建物をデザインする人の中に、建築学科で学んだ人や建築に精通する人 "以外"の職種の人たちが現れ始める。例えばDIY。

DIY(ディー・アイ・ワイ)とは、しろうと(専門業者でない人)が、何かを自分で作ったり修繕したりすること(wikipedia)

他には音楽プロデューサーがショッピングモールのデザイン責任者になった事例を初めて知ったのはもう10年以上前になる。

そして一番衝撃的だったのはテクノロジー集団TEAMLABが建築に関わるようになったことだ。社内に建築家(建築士)を雇い、テクノロジー集団として建築に携わり始めたのだ。

このようにこれまで建築学科卒業で建築分野に精通する人たちの畑だった分野にどんどん建築畑以外の人たちが入ってきたのだ。

僕自身、世界的な設計事務所で働いていた時、所長からこんな言葉を言われたことを覚えている。「仕事のない建築士(設計図を描く人)はこれから五万と増える。設計士の勉強をしている暇があったら別の勉強をしろ」と。これはかなり衝撃的な言葉だった。


どんどん他分野に侵食される建築という職業

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