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テンプレート(ひな形)があれば、誰でも契約書はつくれる。ただ、ほんの少しの差がものをいう世界でもある。【契約書の出来栄えに差がつく5つの視点】

「契約書がつくりたい」「簡単なものでいい」「できれば安く、というかタダでつくりたい」「早く(速く)つくりたい」・・・。

そんなときあなたが真っ先にやることは、契約書のテンプレート(ひな形)を見つけることではないでしょうか?

誰でも作れる!

テンプレート(ひな形)があれば契約書は誰でも簡単につくれます。ただ、料理と同じで、材料が同じでも味は違ったりします。契約書にも、コツやこまかいポイントがあるからですね。

自分に有利に、とはいえ相手にもそれほど嫌がられず、できればシンプルに過不足の無い内容で、法的に差し支えることもなく、見栄え良く、そういう契約書にするためにはどうしたらいいのでしょう? プロっぽい契約書はどこが違うのか、どこで差がついているのか?

どこで差がつくのか?

これについて真剣に考えた結果、契約実務歴18年以上の僕が考える「差がつくポイント」を、ざっと説明します。ちなみに、契約書にもいろんな種類があるので、今回はあなたがお客さんからなにか仕事をたのまれた場合に締結する、いわゆる「業務委託契約書」を前提にして話をすすめます。

契約書の出来栄えに差がつく5つの視点

契約書のポイントは、5つ
①あなたが引き受けた仕事の内容を「明確化」する
②代金請求は「きっちり」と
③損害賠償責任/契約不適合責任はできれば「最小化」
④キャンセルは可能?
⑤著作権の帰属にこだわろう

本当は条文ごとに注意点を挙げるべきでしょうが、長くなるので今回は必要不可欠なポイントのみに絞りました。
それぞれを簡単に説明します。

①あなたが引き受けた仕事の内容を明確化する

どんなに良いテンプレート(ひな形)がみつかっても、あなたが引き受けた仕事の具体的な内容までは、書かれていないでしょう。そこは当事者しか知り得ない、オリジナルな部分だからです。こればかりはご自身で埋めるしかありません。

内容の明確化は、契約書で最も重要なことのひとつです。「どこからどこまでを引き受けたのか」が明確でないと、あとになってお互いに期待のズレが出てくるかもしれないからです。曖昧にしていると、お客さんが依頼内容を好き勝手に増やしたり、こちらにミスの責任をおしつけたり、大きな修正を何度も要求してくるかもしれません。契約書はこうした「ズレ」をそもそも生じさせないか、あるいは「ズレていることが客観的に分かる」ようにするために必要です。

②代金請求はきっちりと

契約書は代金請求の根拠(有料であることの証拠)になるものです。だから支払に関する条項はとても大切な部分なのですが、値段を書くだけで済ませている例が結構あります。たとえば「報酬は一万円です」のように。これだと値段はわかるかもしれませんが、情報としては足りません。

契約書に書くなら、消費税の有無、支払方法、支払期日、銀行なら銀行の振込先、振込手数料等は負担するのか、まで書かれている必要があります。また、テクニックとして支払が万が一遅れた場合の遅延利息について定めることもありますし、担保や相殺について定めたり、返金の条件や返金しないことについて定めることもあります。

③損害賠償責任/契約不適合責任はできれば最小化

契約したことを守れなかった場合に、もしかしたら相手方に損をさせてしまうことがあるかもしれません。そういうときに「損害賠償」の問題になります。もちろんそうなってしまう可能性はかなり低いのですが、ゼロではありません。

どんなに誠実に仕事をしていても、納入が遅れてしまうかもしれないし、意図せず権利関係のトラブルが起きるかもしれません。そこで、契約書に損害賠償責任を制限する条項を設けます。

つまりもしあなたが、お客さんから「損害を賠償してほしい」と要求された場合に、「はい、わかりました」とすべて応じなければならないのか? という問題で、もっといえば、なにもあなたが全部の責任を負うのではなくて、損害賠償責任を限定する(小さくする)ような条文を入れておくことで
リスクをコントロールします。

それから契約不適合責任というのは、売主などがお客さんに商品(成果物)を引き渡した後であっても、不具合の発生やその商品などに契約との不一致があれば、責任があるだろうという意味です。簡単にいえば法的なアフターフォローのようなもの。これについも契約で責任をもつ期間を短縮したり、不一致の内容を限定したり、不一致があった場合の対応を明確にしておいたりできます。具体的にどんな損害や不具合が生じやすいかは業務分野や内容によるので、実情にあわせてできるだけこれらのリスクを最小化すると、有利な契約になります。

ただ、損害賠償についてあなたにばかり有利に規定すると、相手にとっては不利な契約ということになり、契約交渉で揉めて相手が締結しにくくなることもよくあります。実際この点をめぐって難航することは本当に多いです。なので「できれば最小化」を目指しつつ、落としどころをみつけていく微調整が必要になります。

④キャンセルは可能?


具体的な仕事の内容によっても都合が変わると思いますが、契約を解除することはできるのかや、「キャンセル料」を設定するか、といった項目も忘れずに検討しましょう。

たとえばあなたがデザイン制作を担当していたとして、完成間近の段階でお客さんから「あの件、やっぱりなかったことにして」などと言われたら非常に困りますよね。一番気になるのは、ギャラはどうなるのか? 

途中で依頼を止められた場合にも相応の報酬を請求できることについては、民法上も規定はあるのですが、具体的にいくらが妥当なのかまでは定められていないので、ケースバイケースとなります。そこで、先にキャンセル料規定を決めてあれば楽です。

ほかにも解除の条件を詳細に定める規定もあります。契約は締結するときよりも解除するときにもめやすいので、この条件も良くチェックしておいたほうがいいでしょう。

⑤著作権の帰属にこだわろう

あなたが頼まれたお仕事の内容にもよりますが、成果物に著作権が含まれる場合や、著作権そのものが契約の目的になるような場合は、特に権利帰属の問題があります。ようするにあなたが著作権を保持するのか、お客さんに譲渡するのかが問題になりやすいので、契約書でその点をはっきりさせるということですね。この点があいまいになっている契約書は非常に多いです。

もちろん、そもそも著作物のやり取りをするわけではない場合には、この条項が問題になりません。(たとえばハウスクリーニングをまかされたときの契約で、著作権の帰属を確認することはほぼないでしょう。)しかし作業の結果何かしらのデータ(文章テキスト、プログラム、音声、画像、動画等)を完成させることになっている契約では、それらに著作権が自動的に生じます。そこで、その著作権を譲渡するのかしないのかを確認する必要が出てきます。

ちなみに「譲渡」する場合には著作者人格権を行使しないことについても定めることと、「著作権法27条と28条の権利を含む」と補足的に書かなければならないというルールがあるので、この点もチェックしましょう。この点は根本的な意味が少しわかりづらいと思いますが、今回は詳細な説明はしません。クリエーターの方など、今後も作品の権利処理に関わって行かれる場合は勉強しておいて損は無いと思います。

5つの視点で差がつく!


契約書のクオリティに大きく影響する5つのポイントを紹介しました。同じひな形を使っても、あなたがカスタマイズすることでオリジナルな良い契約書にうまれかわります。5つの視点は作成するときだけでなく、もちろん、相手から示された契約書をチェックする際にも、この5つの観点を覚えておけば非常に役に立ちます。

ぜひ、あなたも今度契約書を手にしたときは、目的、支払、解除、損害賠償、権利帰属、といった対応条項を、上記のポイントを思い出しながら読んでみて下さい。今までよりも深く読めるはずですよ。


契約書のひな形をまとめています。あなたのビジネスにお役立てください。


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