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ロボット開発者にとっての専門家バイアスはどんなものがあるのか。

今週、先週となぜ「バイアス」について学ぶ機会が複数回ありました。
人事的な研修だったり、技術的な話だったり、文脈はいろいろ。
バイアスにより医者にはゴリラが見えないという面白い話を教えてもらったっのですが、ロボット開発者には何が見えないのか?というのが今回のnoteです。

基本的にバイアスというのは、過去の自分の経験だったり、他者から聞いた経験だったりをもとに、あまり深く考えずに、反射的、直感的に判断がなされるために起きたりします。

学術的には、ノーベル経済学賞も受賞した心理学者のダニエル・カーネマンの二重過程理論という概念の中で説明されることが多く、ざっくりいえば上に書いたように素早く考える思考の方がじっくり考える思考より強くなって起きるわけで、膨大な情報量を素早く処理できたり、人間の脳への負荷を軽減できたりする一方で、事実を捻じ曲げたり、都合よく解釈したり、認知が歪み、合理的でなくなるという、いわゆる、思い込みみたいなことにも繋がります。

バイアスにも、自分の考えを肯定する情報だけを見てしまうような確証バイアス、ピンチな状況を判断できない正常性バイアス、変化をしないようにする現状維持バイアスなどなどいろいろな種類があるわけですが、個人的におもしろいなぁと思ったのが「専門性バイアス」というものです。

専門的には、「inattentional blindness」とも言ったりするようですが、わかりやすい実験が、2013年に行われた放射線科医に「ゴリラ」の混ざった医療画像を見せても多くがゴリラの存在に気づかなかった、というものです。

以下の動画に内容が簡潔にまとめられています。

もっと詳しく知りたい人は、元の論文を読んで頂ければと思います。
Drew T, Võ ML, Wolfe JM. The invisible gorilla strikes again: sustained inattentional blindness in expert observers. Psychol Sci. 2013 Sep;24(9):1848-53. doi: 10.1177/0956797613479386. Epub 2013 Jul 17. PMID: 23863753; PMCID: PMC3964612.

研究のポイントは、
・24人の放射線科医が見慣れた肺結節を見つける課題を実施
・最後に提示された症例には、結節の48倍の大きさのゴリラのイラストを挿入
・放射線科医の83%(20/24人)はゴリラを見つけられなかった
・ただし、視線を分析した結果、ゴリラを見落とした人の大半は、ゴリラの位置を見ていた
というものです。

実際の画像がこちら。画像をクリックしてみて下さい!

A: Chest CT Image containing the embedded gorilla. B: Eye-position plot of one radiologist who did not report seeing the gorilla. Each circle represents eye-position for 1ms. 引用:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3964612/figure/F2/

Aの写真の中にゴリラが写っているのがわかりますか?右上の方です。わかりました??

このゴリラに専門家の80パーセント以上が気づかなかったということです。

さらに面白いのは、視線としてはゴリラを見ているにも関わらずという点です。
視野には入っていても、認識はしていない。

脳内の処理で見えないというよりも見てないということでしょう。医療画像の中にゴリラが写っているはずもないですし、ゴリラを認識する必要性もないですからね。専門家からすれば効率的に診断するために不要なものは脳内で消し去っているのです。

面白いなぁ〜と思った一方で、自分にはどんな専門家バイアスがあるのかと少し気になりました。
と思ったもののバイアスの難しいところは、無意識の処理すぎて、なかなか自分では気付けないというジレンマに陥ってしまいました。

ロボット開発者の専門家バイアスは何だと思いますか?
おそらくゴリラには気付くはずです。笑

ロボットが使われる環境で気付かない存在になっているものが何かというのは、結構大事な問いな気がします。
『人』という答えにならないことだけを願っています。


では、また~!!
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安藤健(@takecando)
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