ロボットの社会実装時間軸で本当にSDGsへの貢献は間に合うのか?

SDGsブームが続いています。「SDGs」という言葉を聞かない日はないくらいメディアでも当たり前の言葉になり、Eテレみたいな子供向け番組でも使われていて、スゴイ時代になったもんだと思うわけです。

いや、ちょっと待てよ。このSDGsを作ったのは国連だったはず。そんなバズワードだけみたいな取り組みは、流石にしないでしょと思い、ちゃんと調べてみると、ガチガチに時間軸が切られたKPI設定されていて、迂闊にSDGsの実現に貢献しますっ!!とは言いにくくなったという話。

SDGsの復習

ご存じの方がほとんどになってきましたが、SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された17のゴールのことです。

「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」「3.すべての人に健康と福祉を」、、、、、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」といった形で、発展途上国も先進国も全員で取り組むべき、大義のある17個の目標が「だれ一人として取り残さない」状態で達成されることを目指しています。この目標自体は、どれも大事で、それは達成しないといけない!!という内容ばかりです。

日本、海外でのロボットによる貢献

これらの目標の実現に向けて、「ロボット」や「ロボティクス」が果たす役割も結構あるというのが色々なところで言われています。例えば、サイエンスライターの森山和道さんの記事でも、その背景やロボティクスが貢献できる具体的な領域が紹介されています。そして、「全体最適」という視点の大切さが指摘されています。

もともとロボットはSDGsの目標8「働きがいも経済成長も:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」や、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう:強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続 可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」とは親和性が高い。というよりも、これらの目標を達成するためにはロボットは必須の技術の一つだろう。

引用:SDGsとロボットの「切っても切れない」関係、つながる世界で「全体最適」の知見活かせ

もちろん、日本だけの話ではなく、海外のロボット分野からも多くの視点で活動の重要性が言及されています。

例えば、世界的なロボット産業団体でもあるIFR(International Federation of Robotics)からは、この5月に”Robots Help Reaching UN Goals of Sustainable Development”というリリースが発表されました。(日本語版

この中では、17個のゴールの中で13個のゴールにロボティクスは重要や貢献ができるとして、太陽光発電に関連する装置の製造の自動化、修理を意識したロボットの活用、スマート農業などの事例を交えながら、紹介がなされています。

また、アカデミックフィールドにおいても、世界最大のロボット系国際学会の1つであるIROSの中でワークショップが行われ、IEEE RAS Magazine4月号の中に ” The Role of Robotics in Achieving the United Nations Sustainable Development Goals”という記事が発表されました。(Web版PDF版

この中では、17個全てに対して、ロボティクスは果たすべき役割があるとした上で、実例と共に、実現に向けた課題も指摘されています。個人的に面白いなと思ったのは、アイコンをロボット向けにカスタマイズした以下の図でした(初めは気付かないくらいナチュラルでした。笑)。図を見ると、なんとなくロボットがどんな貢献が出来そうかがわかるステキなイラストです。
活動自体は、Sustainable Roboticsというグループが行っているようです。

Reference: The Role of Robotics in Achieving the United Nations Sustainable Development Goals

改めて、SDGsをちゃんと知る

ロボットが貢献できるゴール領域は、IRFが言うように13個なのか、IEEEが言うような17個全てなのかという議論は一旦置いておきましょう。ここでは、もっと大事な問題があると思っています。

もう一度、SDGsとはなんなのか振り返ってみましょう!

ウィキペディアによると、

・持続可能な開発目標(じぞくかのうなかいはつもくひょう、英語: Sustainable Development Goals、略称: SDGs(エスディージーズ))は、17の世界的目標、169の達成基準、232の指標からなる持続可能な開発のための国際的な開発目標。
・ミレニアム開発目標 (MDGs: Millennium Development Goals) が2015年に終了することに伴って、同年9月25日の国連総会で採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ』(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development、または単に2030 Agendaとも)に記述された2030年までの具体的指針である。


ここで気になる箇所が2つあります。
一つは、17のゴールだけではなく、169の達成基準(target)、232の指標(indicator)があるということ。そして、もう一つは、2030年までの具体的な指針であること。

私自身もSDGsという言葉は使ったりしますが、この2点をあんまり意識しながら、発言したことはありませんでした。感覚的には、できるだけ早く解決していかないといけない世界的に大事なことくらいの理解でした。

でも、そうではなかったのです。総務省が訳してくれている資料がありましたので、興味がある方は是非見てみてください。

かなり具体的です。
例えば、ゴール2 飢餓をゼロにの中で、いくつかあるターゲットや指標を見てみるとこんな感じです。

ゴール2:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

ターゲット2.2:5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合 意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の 栄養ニーズへの対処を行う

指標2.2.1 5歳未満の子供の発育阻害の蔓延度(WHO子ども成長基準 で、年齢に対する身長が中央値から標準偏差-2未満)
指標2.2.2 5歳未満の子供の栄養不良の蔓延度(WHOの子ども成長基 準で、身長に対する体重が、中央値から標準偏差+2超又は-2未満) (タイプ別(やせ及び肥満))
指標2.2.3 15~49歳の女性における貧血の蔓延度(妊娠状況別、%) 

かなり具体的なKPIが設定されています。そして、2030年だけではなく、途中の2025年などにもマイルストーンが設定されているのです。

ターゲットの設定まで書籍含めてある程度の情報があるかと思いますが、その先のKPIというところまではあまり知られていない感じです。

正直、私自身も全然知りませんでした。

2030年に具体的にどの指標にどれだけ効くのか?

「この研究開発は、SDGsの目標●に貢献できるテーマです」みたいな話はよくあります。私もそういう話をしたことがあります。

もしそのときに「どのターゲットのどの指標に対して、2030年の段階でどの程度貢献できますか?」と聞かれたら、少なくとも自分自身は全く答えられません。そもそも指標が何かすらも知りもしませんでした。

これではSDGsウォッシュとか、うわべだけもか言われてもしょうがないなと反省です。ほぼ「社会課題可決に向けて頑張ってます!!」とだけ言っているのと同じようなもんです。

それ自体が完全に意味がないとか、ダメとかいう気もないですし、社会課題は解決しないよりした方が良いに決まってます。そして、もちろん、KPIに踊らさせる必要はないとは思いますが、それでも国際的に合意された目標値設定です。無視するわけにはいかないものです。

パスワードに乗っかり、SDGsに貢献という言葉をあんまり考えずに使っていましたが、ちゃんと内容を理解した上で、しっかり貢献したいなと思いました。

2030年まであと8年。まだ時間はあると言えばありますが、目標の壮大さを考えれば、あまり時間もありません。これまでロボットの社会実装は、褒められるほど高速には進んでこなかったのも事実かと思います。あと8年という時間軸も意識しながら、役割を果たしていきましょう!

では、また来週〜。
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安藤健(@takecando)

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