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書籍編集者アップデート計画(β版)

 今日はお役立ち系の話ではなくて、総理大臣でいうところの「所信表明」みたいな感じの話です。

 ここ数年、佐渡島さんの本をつくったり、最近は箕輪さんの活躍も見ながら「書籍編集者はどういう動きをしていくべきか」考えてきましたが、なんとなくまとまってきたのでアウトプットしておきます。題して「書籍編集者アップデート計画」です!!(夜中のノリみたいでちょっと恥ずかしい!) これをもとに具体的にいろんな人と話したりできればいいなと思っています。

「出版」とひとことで言っても大きく分けて二つの段階があります。ひとつが「つくる」こと。もうひとつが「届ける」こと。この2つは相互に関連していて、僕はどっちもアップデートが必要だと思っています。

①届きやすいコンテンツに加工する

 まず書籍編集者がやるべきは「コンテンツを届きやすい形に加工する」ことです。これまでは著者・書き手のコンテンツを「紙」に落とし込めばよかったでしょう。でもいまは、音声メディア、映像メディア、ブログ、イベントなどあらゆるかたちのメディアがあります。これらのメディアに適応したものに加工するというのが、これからの編集者には必要でしょう。

 料理でいうなら「冷めても美味しい」とか「一口サイズでも美味しい」とかそういうことです。紙を中心にしつつも(未だに紙の本がマネタイズ的に有利な気がしています)コンテンツを360度展開させる。あらゆる環境・メディアに合わせてコンテンツを加工する。これをもっと進めていきたいと思っています。

発信力=コンテンツ力✕メディア適応力

 発信力というのは「コンテンツ力✕メディア適応力」ではないかと思っています。コンテンツ力が最強の人、たとえば明石家さんまさんみたいな人なら、メディア適応力がなくてもどこでも通用するでしょう。テレビでも本でも舞台でもWEBでも通用します。一方で、コンテンツ力が弱い人はどうすればいいのか? ぼくは「メディア適応力」があれば発信力は高められるのではないかと考えます。

 ユーチューバーがなぜあれだけ注目されたのかと言うと「ユーチューブというメディアの特性にピタッとあった」からです。素人っぽい、ゲリラっぽい、あの温度感がユーチューブの視聴者の体温に合った。ユーチューバーが仮にテレビに出ても面白い人に映るとは限らないでしょう。コンテンツ力を上げるのと同様、メディア適応力を上げる。これがいまの編集者に求められている力ではないかと思います。 

②SNSを通じてお客さんとの接点を増やす

 2つめは「届ける」フェーズの話。これがまた問題です。

 言うまでもなく、書店に行く人は減りました。書店自体も減っています。ふつうに生活している人が本に出会う機会はどんどん減っています。最近は本をつくっても「なかなか気づかれない」「見つけてもらえない」と感じることも増えてきました。よって、本との接点も編集者がつくっていく必要がありそうです。 

 著者とも密にやりとりしていて、一方で読者マーケットも見ている、ちょうど真ん中「要」にいるのが編集者です。その編集者が主にSNSを使ってもう少し前に出て発信することで、少しでも読者に知ってもらえるチャンスは増えるのではないか。

「え? でもSNSユーザーにしか届かないんじゃない?」という声もありそうです。たしかに。多くの読者に直接届けるのは難しいかもしれません。でも、SNSユーザーが口コミでまわりに広めてくれる可能性もあります。また、インフルエンサーに興味を持ってもらえればSNSでの露出度は高まり、それが現実にも波及していきます。もうネットはネットだけの世界に留まらない、というのがぼくの実感しているところです。

常識も、習慣も、変わる

 編集者が前に出るべきかどうかは未だに議論はあると思います。業界内には「編集者は黒子であるべし」「前に出るべきではない」という人も多いでしょう。もちろん「才能があり、コンテンツを有しているのは著者である」なんてことは、編集者はとっくの昔にわかっています。「超大前提」の話です。ただ、それでも、なかなか届けたい人に届きにくい時代になったから困っているのです。

 編集者は「編集者自身」を発信する必要はないかもしれません。一方で、著者や書き手についてきちんと発信できるようになったほうがいい。ただ、書き手のことを推すときに「推してるお前は誰なんだ」ということにもなるので編集者自身を発信する必要もある……。「卵が先か鶏が先か」みたいな問題ですが、少なくとも今よりも編集者が顔を見せて、前に出て、発信する必要はありそうです。

③最高のものを作るシェフになる

 うだうだ言ってますが、ぼくはこの仕事に悲観的な思いはありません。試行錯誤しながらやっていますが、それでもけっこう楽観的です。それは「メディアが増え続けるにつれ、良質なコンテンツへの需要は加速度的に高まっていく」と思っているからです。

 お皿は増え続けても、それに乗っける美味しい料理がそれに比例して増えていくとは限りません。二次利用、三次利用みたいなコンテンツも増えていくでしょう。コンテンツは無限に増えるかもしれませんが、それに伴って地球上の人が増えるわけではありません。おもしろい人、すごい人が増えていくわけではないのです。

 きちんと現場に行き、生の情報をつかんで適切に加工できれば、まったく恐れることはないでしょう。目指したいのは「最高の料理を生み出せるシェフ」といったところでしょうか。きちんと腕を磨いていれば、これまで以上に編集者が求められる場面は増えるのではないかと思っています。

編集の仕事を楽しまなきゃ!

 最近、同業者と飲んでいてもなんとなーく暗い話が多い。(年度末だから余計に忙しいというのもありそうですが)とにかくちょっとうつむきがちなんですよね。

 編集者って、ほんとは、分野問わず「事件」のあるところに首を突っ込んでいって「こんな変な人いるよ」「こんなおもしろいことあるよ」「こんな考え方もあるよ」ってみんなに言いふらして回るような存在のはずです。なのに、いつのまにか自分に足かせをつけて動けなくしている感じがします。ぼくもそうです。だから、もっと自由でいいんじゃないか、と思います。

脳内を希望と可能性で満たせ

 これまでの編集者としての仕事も、出版のあり方も、今後の大変化を前にしたら「序章」に過ぎないでしょう。でも、これまでの経験を土台にしつつ「これが新しい出版だ」といえるカタチを見つけていきましょう。出版不況は禁句です。紙かウェブかなんて議論はどうでもいい。不安だ不況だなんて言っていないで、これからは希望と可能性で脳内を満たしていきましょう。

 というわけで「出版・本・コンテンツのこれから」を考えるイベント(?)をやりたいなーと計画しています。ぜひいろいろ話しましょう。特に同業者。詳細決まったらツイッターで告知しますのでフォローよろしくおねがいします。

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