見出し画像

保育園の人手不足をマーケせよ!

先日、久しぶりに中学校の同窓会がありました。たくさんの友人と出会い、いろんな話をしたのですが、その中で保育園の園長をしている幼なじみから「実はうちの園の保育士さんの採用がうまくいかないんだけれど、どうしたものかな?」という相談を受けました。そして彼の話がまるで「売上が振るわない商品を抱えた、マーケティング担当者」ようでとても興味深かったので、今日はそのことを書きたいと思います。 

彼の話は以下のようなものでした。
✓3年前に1人採用して以来、募集を続けているが、成果が出ていない
✓少し給料を上げたり、古かった施設を改装してみたりしても、効果なし
 (これ以上は、保育園の体力から考えてみても難しい)
✓若い人向けに、ネットの募集広告を増やしてみようと考えている

これを聞いた時、私は日頃お会いしているマーケティング担当者、
それも商品の売上不振に苦しむ担当者の方の発想と、すごく似ていると思いました。彼らは現状の不振から何とか脱するべく、以下のような打ち手をすることがよくあります。
✓価格を下げる(※園の場合、給料を上げる)
✓パッケージをオシャレにしてみる(※園の場合、施設を改装する)
✓広告・キャンペーンをしかける(※園の場合、ネットの募集広告を増やす)

このような施策が効くこともありますが、それはまれ。多くの場合は、効果を発揮しません。なぜならば、多くの場合、その商品を売るための課題が「価格」「パッケージ」「広告・キャンペーン」ではない、言い換えれば、それらを改善しても事態が改善しないからです。

そもそも商品の売上を拡大するための課題とは、何なのでしょう。さまざまな解釈があると思うのですが、私は売上を拡大させるための課題とは、

良いお客様(商品を愛し、数多く、長く買ってくれるお客様)が数多くいる状態をつくること

だと思ってます。

そして良いお客様をつくるために重要なのは、

良いお客様は、その商品の何を、どんな状況・流れの中で、気に入ってくれたのか

を知ること。その上でまだお客様ではない方に、

どんな風にアレンジを加えれば、お客様になって下さった方と同様の認識が生み出せるのか

を考えることが重要だと思ってます。

なのでその時も、幼なじみの園長に「あなたの園の中で、今一番、楽しそうに働いている人って誰?」と聞きました。商品でいう「良いお客様」です。
そうすると彼は「3年前に採用した女性」と言いました。

続いて私が聞いたのは「その女性はどんな経緯で、あなたの園に決めたの?」と聞いたところ、彼は「インターネットの募集広告で応募してきたんだけど、広告に載っていた、うちの園の”保育理念”が気になったらしいんだよね。そのあと面談して、その”保育理念”の背景にある思いをオレが詳しく説明したら、とても感動したんで入ったって…」と言ったとき、彼がハッとした顔をしました。

私はすかさず「そうなんだね。あなたの園の売りは”保育理念”なんだね」と続けました。そして「ところで、インターネットって、”保育理念”を詳しく伝えるのに最適なんだっけ?」「他に”保育理念”を伝えるのに、最適なところ(人・場所)って、どこがあるんだっけ?」と質問を続けていくと、彼から「実は、うちの保育園を長年務めて定年になった後、短大の保育科で手伝いをしている人を思い出した。その人を通じて”こんな理念でやっている園もあるよ”と紹介してもらうのもあるかもしれない!」というアイディアが出てくるなど、園長先生の顔がどんどん晴れやかになっていくのを感じました。

この後、保育園への採用を増やしていくためにはまだまだすることがありますし、本当に成功するかはやってみないとわかりません。ただ「どうしたらよいかわからない」という状況から「まずは何を試してみるべきか」という出発点に立てたのは、大きな違いがあると思います。

万能薬であるとは思いませんが、苦境にあるマーケターの方ほど「売れない理由」をなくすことだけに執着するのでなく「よいお客様が、自分の商品の何を魅力と感じてくれたのか」「その認識は、どんな状況・流れで生まれたのか」というポイントから再出発してみてはと思うのです。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

8
消費者行動アナリスト。株式会社インテグレートの執行役員。https://www.itgr.co.jp/ 2児の父。ランニング中毒者(月間走行距離は200km超)。「日本のマーケティングのここが変」「生活者に買いたいと思ってもらえるルール・コツ」についての気づきを発信していきます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。