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教#008|才能のない人間が大学に行く~「漫画:二月の勝者」を読んで③~(たかやんnote)

 カリスマ校長の黒木蔵人は、サッカー少年、三浦佑星の両親に
「佑星さんは、平凡な子ですね」と、言い切ります。そのあと
「凡人こそ、中学受験をすべきなんです」と、powerfulにpushします。
 かつてRCサクセションの忌野清志郎さんが、都立日野高校在学中に
「才能のない人間が大学に行く」と、言い放った名言を思い出しました。才能があれば、もちろん、中学受験をする必要はないし、大学の4年間も、時間とお金の無駄遣いだと、一応は、言えます。

 三浦佑星くんに、将来、Jリーグに所属して、活躍できるだけのサッカーの才能があれば、中学受験は不要だし、地元の公立中学校に入って、卒業後は、クラブチームに所属して、プロを目指せばいいんです。

 黒木校長は、ビルの屋上で、佑星くんと、リフティング対決をします。リフティングを長く続けられた方が勝ちです。カリスマ校長は、どうやらサッカー経験者らしく、楽々と勝利します。佑星パパは、「サッカーの実力って、リフティングだけじゃ決まらないものなんで」と、自分の息子をフォローしようとします。が、見る人が見れば、リフティングの様子だけで、プロになれる素材かどうか、見抜けます。私だって、そこらの廊下や教室で、ほんの鼻歌程度に、JKが、Jポップを口ずさんでいるのを、小耳に挟むだけで、プロになれる素材かどうか、瞬時に判別できます。ほとんどの子が、99.99%以上の確率で、プロにはなれません。

 黒木校長は、具体的な数値を持ち出します。全国の高校・大学・Jユース所属の最高学年のサッカー競技人口は、約5万8千人。日本で毎年、プロサッカー選手になるのは、約120人。よって、プロサッカー選手になれる確率は、約0.21%。一方、中学受験は、首都圏の一都三県の受験者数は、およそ5万2千人。最難関東京男女御三家の募集定員は、1340人。よって、御三家に受かる可能性は、2.58%。憧れの難関校くらいまで入れると、10%弱。スポーツや芸術、音楽等、才能が物を言う分野は、本当に厳しい。まだ、勉強の方が、努力のリターンを得やすい(以上は、二月の勝者からの引用)と、「凡人こそは、中学受験をすべきだ」と、再度、説得します。

 「二月の勝者」は、マンガですが(つまりサブカルチャー)非常にリアルです。新聞や総合雑誌(それなんや?、と首を傾げる方も多いと思いますが、「世界」や「中央公論」「文藝春秋」と云った雑誌のことです。週刊文春や週刊新潮は、総合雑誌とは言いません)は、ハイカルチャーなのかもしれませんが、今やサブカルチャーの方が、断然、リアルで面白いと私は思っています。

 黒木校長は「普通に学校の部活で、活躍できる実力は充分、ありますし、そちらで思い切りやらせたらいかがですか」と、フォローします。すると、父親は高校受験で、都立の強豪校(久留米総合だと思いますが)を目指すみたいなことを言います。と
「小6で、中断したくないのに、中3で中断するのは、OKなんですか」と、切り返します。「二月の勝者」を勧めてくれた知り合いが
「小学校受験をして受かれば、習いごとを中断させず、ずっと続けられる」と、小学校受験のメリットを語っていました。習い事と云うのは、ピアノ、バイオリン、バレエなどのことだと推定できます。確かに、これらの習い事を、小6 or 中3 or高3で中断するのは、もしプロを目指すとすれば、致命的なintervalになってしまいそうです。小6、中3、高3のどこの中断が、一番、被害が少ないのかの三択でしたら、それは、やっぱり小6かなと云う気はします。

 私は、高校生のバンドの指導者です。バンド音楽とは、長年、関わって来ました。原宿にある東京児童館で、毎年、中3以下のジュニアのバンド大会が、開催されていました(今はどうなのか解りませんが)。ヤマハ音楽教室とか、宮地楽器さんなどの営業努力で、小2あたりから、バンド活動を始める生徒がいます。小5、6あたりですと、技術的には、相当高いバンドが、存在しています。メンバーの誰かが、中学受験をすると、バンド活動は、中断せざるを得ないってことに、なりそうです。が、私の個人的な意見ですと、小6、中3、高3のどこで中断してもらっても、no problemです。ピアノやバイオリンのような、クラシック系は、非常に高い技術力を必要とします。バンド系は、そこまで、技術的な高さを必要としません。バンド系にとって、一番、大切なのは、中1、2です。これは、私の自論ですが、まず間違いないと思っています。中1、2くらいの年齢の頃、本当にいい音楽を聞く、これで、その後の音楽ライフが、決定されると確信しています。

 ただ、音楽の才能のある生徒は、中学受験とかはしないだろうと私は考えています。長年、高校生バンドを見て来て、音楽の才能と、勉強の才能は、連動してないと感じます。まったく、無関係と言い切ってもいいです。もっと踏み込んで言うと、勉強できる生徒は、音楽的には、正直、イマイチかなと云う気がします。これは、私の経験からの感想です。成績優秀者にリストアップされている生徒が、音楽的にすぐれているケースは、私が知る限り、ほとんどありません。もっと云うと、本当に音楽才能のある超ド級の生徒は、人間的にヤバいとこがあります。天は二物を与えずってことなのかもしれません。

 小学校時代に、熱いバンド活動をしていた人たちが、その後、すごいことになるかと云うと、正直、そうでもない感じがします。一応、上手いっちゃ、上手いんですが、何か足りない気がします。
「もしかしてだけど、燃え尽きちゃってる?」と、思ったりしたこともあります。若者のバンドと、今後も関わって行くかどうかは、正直、解りませんが(まあですが、結局、何らかの形で、関わってしまいそうです)小学生くらい頃は、やっぱりスポーツをやってもらいたいです。バンドに限りませんが、やっぱり体力勝負なんです。体力があってこそ、自分が自分に課す、厳しいトレーニングのメニューを、こなすことができます。あと、教養も必要です。漢字とかきちんと書けないと、ダメです。本も、ラノベでもいいから、読んでもらいたいです。勉強と云うより、小学校、中学校で身につけるべき、最低限の知識はやっぱりないと、正直、歌詞すら書けません。

 小学校に、英語とプログラミングのカリキュラムが、本格的に導入されます。私の考えだと、どちらも不要です。英語より、まず国語力です。本も読めない、文章も書けない状態で、外国語を学ぶ、うーん、何か違う気がします。プログラミングより、スポーツ、キャンプ、自然体験と云ったアナログのリアルを、もっと重視すべきです。日本のインターネットの父の村井先生は、大学5年で、コンピューターと出会いました。スティーブ・ジョブズやビルゲイツが、コンピューターを始めたのも、おそらく大学時代です。

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