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【その③】教員だった私がITエンジニアへジョブチェンジしたけど、やっぱり教育業界へ戻ってきた話③「教員とITエンジニアとのギャップ、或いは自分の適性について悩む」

今回は、昨年の転職した時の話の第3回。

前回の話は以下から。

大学卒業からずっと教員をしてきた私が、ITエンジニアにジョブチェンジした。そうしたら、心身が疲弊しなくなり、余暇も増え、給与も未経験転職なのに教員の頃よりも実質上がった。(基本給は同じだが、残業代が100%支払われるため、実質、収入が増えた)

何もかもがうまくいって、めでたしめでたし

…と言いたいところだが、そんなスムーズにいかないのが人生。

ITの仕事に慣れ始めてくると、この仕事に対して次の3つの違和感を抱くようになった。

まず1つめは、ほとんど人と会話をしないこと。

1日の大半はPCに向かって黙々と作業する。「おはようございます」と「お疲れさまでした」の2語しか喋らなかった日もある。

ただ、こうなることは転職前から想定していた。むしろ、そういう仕事の方が私に向いているのだと思った。私は人と会話をするのがあまり得意ではない。だから本当は教員という仕事は私には向いていない。PCに向かって黙々と作業する仕事の方が性に合っているのだと考えていた。

しかし、実際に仕事をして、私はそういう性分ではないらしいことを知った。私は、人と会話するのは得意ではないけれど、嫌いではなかったようだ。むしろ、人と会話しないとフラストレーションが溜まる。

教員の頃も、テスト採点日などは誰とも喋らずに作業をしていた。職員室にこもってひたすら採点するのだが、段々と気持ちが沈んでいくのを感じた。そういう時は、校舎内をウロウロし、部活などで登校している生徒とお喋りをして、気持ちをリフレッシュさせていた。仕事のストレスを生徒との触れ合いで発散させていた。(今思えば、生徒たちは鬱陶しかったに違いない。私の相手をしてくれて感謝)

ITの仕事には、そういう発散の仕方はない。誰とも口を利かず、黙々と作業をする。

会話はチャットで行われたり、対面でも数分で終わるし、雑談なんてほとんどしない。人同士のコミュニケーションが教員の頃に比べて格段に減ってしまった。

次第にプライベートでも、スムーズな会話ができなくなった。家族との会話でさえ「あれ、自分の喋りのせいで会話が成り立たなかったぞ」と不安感や自己嫌悪に陥るようになった。

そのうち、なんだか人とコミュニケーションをとることが億劫に感じるようになってきてしまった。

それに加えて、空気を読んだり、相手の理解に合わせて喋ることも出来なくなった気がする。まるで自分の心が機械のようになっていく感覚。

2つめは、仕事に全くやりがいを感じなかったこと。

就職した会社はSESで客先常駐が主だった。エンジニアを必要としている企業へ派遣され、そこで仕事をする。お手伝い的なポジション。だから、自分が携わっているシステムへの愛着は薄い。常駐している会社の人にお礼を言われたりするけれど、それがやりがいに繋がるかというとそんなことはなかった。

教員の時は目の前の生徒のために仕事をしていて、反応がダイレクトに返ってくるのでその分やりがいがあった。

もちろん、うまくいかなくて生徒から反発されたり、生徒を傷つけてしまったり、保護者からお叱りを受けたりすることはたくさんあった。そういうのを乗り越え、卒業式に「先生が担任でよかったです」と言われたとき、苦しかったことなんて一気に吹っ飛ぶ。

しかし今の仕事は、誰のために仕事をしているのか分からない。実際にそのシステムを使っている顧客の顔は見えない。一緒に常駐していた上司からは「(常駐先の)お客さんに使って頂けるように頑張るんだぞ!」と言われたが、なんだか奴隷っぽい感じがして嫌だった。

3つめは、仕事の内容が全く頭に入ってこなかったこと。

システム開発の仕事は、プログラミングだけをやっていればいい訳ではない。プログラミング(コーディング)をする開発の工程はほんの僅かに過ぎない。あとは設計書をつくったり、テスト仕様書をつくったり、実際にテストをしたり、リリースに向けての資材を揃えたり…とたくさんの工程がある。

そして、それらの作業をするためには、システムの動きを把握していなければならない。どこそこの処理は、どこのクラスで行われていて、何の値を必要として、その結果が後続の処理にどのような影響を与えるのか…などなど。

細かいシステムの各所の動きを知りたかったら、その部分に関連する設計書や仕様書を探し出し、仕様を確認する必要がある。

私はそれが非常に苦手だった。作業の指示をされても、その作業をするためにはどこの資料を見て、具体的に何をしなければいけないのかが全くイメージできない。

最初は慣れの問題だと思っていた。しかし、数年経っても、いくつかの現場を渡ってきても「どうしよう、何をしたらいいのか全然わからない…」と手が止まってしまうことが多かった。

技術的な話なら「休みの日に本読んだりネットで調べたりして勉強しよう!」ということになるのだけど、そうではなく、私が分からないのは開発しているシステムの内部のこと。勉強したいからと社内の仕様書や設計書などを家に持って帰るのは厳禁である。それをやってしまうと、会社が潰れるレベルの大事故になる。

作業について他の人に質問するのだけれど、何が分からないか分からない状態である為、一から聞かなくてはいけない。当然、質問する相手を疲弊させてしまう。そして言われたことも専門用語が多いので、頭に留められず、ポロポロと取りこぼす。次第に相手に苛立ちの表情が浮かべてくるので、分かっていないのに分かったふりをしてしまう。

また、今回の作業の部分は分かっても、全体が理解できていないので、新しい作業を振られるとまたワケが分からなくなり、質問をするっていう。

これは授業が全く分からない生徒のような状態だった。どんなに丁寧な説明をされても、頭の中に入ってこず、スルッと滑っていく。だけど相手をこれ以上困らせたくないから、分かっていなくても分かったフリをする。

そしてまた少しでも違うことを説明されると、途端に頭が真っ白になって、一からの説明を求めてしまう。相手から「何回説明すれば分かるのか?」と溜息をつかれたことは数知れず。

だから、テレワークは地獄だった。家から出ずに仕事ができるぜ♪と最初は思ったけれど、とんでもなかった。

出社での仕事ならば、すぐに質問しに行けるが、在宅だとそれができない。

分からなければ、チャットで質問をするのだが、何が分からないのか分からない状態の為、文章もまとまりのないものになってしまう。出社勤務していた頃なら「何が分からないのか分かりません、ごめんなさい教えてください」と潔く言えた。しかし、文章だとそれはさすがに躊躇う。

そんなわけで、仕事が全く楽しくなく、むしろ苦痛ですらあった。

仕事がつまらない以外は何も問題なかった。

給与は悪くないし、定時あがりの日があるし、残業代は100%支給されるし、土日祝日は仕事のこと考えずに遊べるし、有給も簡単にとれる。

さらにみんないい人ばかりで、人間関係のストレスはゼロ。

職場環境としては何一つ不自由はない。教員の頃に比べたら、何百倍もホワイトな働き方ができている。

だけど、自分が何の為に仕事をしているのか分からない。ただ週末を楽しみに、働く毎日。

「将来はどうなりたいの?」という質問に何も答えられない。未来の自分の理想像が何も見えてこない。

仕事にプライドも持てない。

「お仕事は何をされているのですか?」

と聞かれたときに、

「IT関連の仕事しています。その前は教員やっていました」

と前の職業の話をしている自分がいる。

やはり私は教員が合っていたのか。教員に戻るべきか?

しかし、またあの心身をする減らしていた日々に戻るというのか?

実際、教員を辞めて転職した後も、教員時代の失敗体験や上司に浴びせられた叱責の言葉がフラッシュバックして苦しんだ。

それくらい辛かった頃に、私は戻りたいと思うのだろうか。

あるいは、別のIT企業へ転職すればいいのか?

今の仕事が楽しくない理由の1つが、携わっているシステムに魅力を感じないからだ。客先常駐で他社のシステム開発のお手伝いみたいなことをしているから、やりがいは感じられない。

だから、自社開発企業(Yahoo!やメルカリなど、自分たちの会社でサービスをつくっている企業)へ転職すればいいのではないか。何か面白そうなことを自社でつくっているような企業へ行ってみてもいいかもしれない。実務経験は積んだから、望みはありそう。

だが「黙々とPCに向かって作業することが苦痛」と感じることも合わない理由だ。それならば、どこの企業へいっても状況は変わらないのではないか。

それでは、教育でもITでもない、別の新しい道に進むのはどうだろう。

教員でなければITエンジニアになっていた。そして実際、ITエンジニアに転職したけれど、自分には合っていなかった。

それ以外になりたかった職業があっただろうか。

私が子供の頃になりたかったものを思い返してみる。

警察官、医者、作家、声優…

とてもじゃないけれど、現実的ではない。

だけど頑張って今から目指すか?w

私は一体、何がしたいのだろうか?

そもそも私は一体、何者なのだろうか?

これがアイデンティティの危機。

これが第2の思春期。

占い師のところへ行き、1時間1万円払って自分が進むべき方法を聞いたりもした。

「あなたはとても我が強く、リーダーの素質がある。むしろリーダーシップの塊だ。上に立てば周りを引っ張る優秀なリーダーになりえるが、下の立場であれば我の強さから周りから弾かれる。リーダータイプである一方、社会から外されるホームレスタイプでもある。とても極端な性格だ」

生年月日と姓名と手相を見せたところ、そんなことを言われた。しかもこの占い師だけではなく、別の場所の別の占い師からも同じ事を言われた。

そして去年の1月、ある占い師からこんなことを言われたのだ。

「今はバイオリズムの頂点にいる。去年まで悩んでいたことの総決算ができるようになる。今年のうちに過去の問題も解決する。そして不安に飛び込んだ方がいいと出ている」

つまり、やるなら今年しかないということか。

とにかく言えるのは、私の居場所は今の会社ではない。だから遅かれ早かれ転職はするだろうと思っていた。

そんな思いを巡らせていた頃、あることがきっかけで、私の転職への気持ちは確固たるものへと変化していく。

それはまた、次回に話そうと思う。

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