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読了『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2』

「2on2」とはなんだろうと興味を持ち購入しました!

この本では、組織における行き詰まった状況を「組織の慢性疾患」、そん状況値自身の関わりに気づき、慢性疾患に一歩ずつ取り組み続けるプロセスを「セルフケア(自分自身をケアすること)」と捉え、膠着した状況を動かすヒントを掴む「2on2」と言う対話の方法を初めて紹介します。

本書P9L4

この本は、企業で働く「ミドル・マネージャー」を
主なターゲットとして書かれています。

  • 新規事業の立ち上げがうまくいかず、既存事業のジリ貧で継続している

  • 苦しい状況なのに現場からはアイディアがほとんど上がってこない

  • 業務のIT化を進めると言っているが、何ひとつ進んでいない

  • 職場にいかっ気がなく、部署や階層間の連携も今ひとつ悪く、仕事を押し付け合っている

  • つまらないミスが連発し、契約をキャンセルされるなどトラブルが相次いでいる

  • 退職者が毎月のように出ている

  • 職場では部下が育たず、上司がプレイングマネージャーかしているが、一向に数字が上がってこない

  • 経営者、人事、経営菊花卯部門が改善に尽力するうものの、各部門は本社のせいにして、誰も自主的に動いてくれない

上から組織の問題解決を迫られる一方で、
下から意見が上がってこない、提案がない、下が動かない、
結局自分がプレイング・マネージャーになるしかない、
そんな一人で抱え込んでしまっている方に読んでもらいたい一冊です!


組織の慢性疾患を改善する方法論=「対話」

組織の慢性疾患を改善するのに有効な方法論として挙げられているのが「対話」です。
本書における対話では、「ただ単に問題可決することを目指すのではなく、さまざまな視点・角度から眺めることを通じて、より良い組織の状態を作る道筋を見つける」ことを目指します。

そのため、問題解決を試みたり、安直に解決策を出すことは本書ではNGとしています。

対話を通して、それぞれの枠組み(ナラティブ)で捉えていた問題を、
新しい、共通の枠組みで捉えられるようになります。

ナラティブの変容こそが問題に対する新たなアプローチを生み出すのです。

ナラティブの変容なしには、慢性疾患は寛解しません。

1on1ではダメなのか

筆者自身は必ずしも1on1が悪いと言う表現はしてないが、
1on1を導入するにあたっての問題点を指摘している。

 多くの組織では、上司と部下が話す「1on1」を全社的に導入しようとすると、現場からは「そんな無駄なことに時間を使う余裕はない」と強い拒否反応を受けるようです。
 一体、何が問題なのでしょうか?
 それは、対話の取り組み位自体が形式的で現実問題から遊離していたり、対話を上から強制したりするからではないでしょうか。結果、仕事の役にはまったく立っていないのです。

本書P113L6

 1on1自体が悪いと言うわけではなく、何のためにそれをやるのかと言う目的が互いに共有されていないのが原因です。

本書P114L1

また、「わかり合うことを目的とした対話は雑談に過ぎない」としており、これでは慢性疾患には効果がありません。

1on1を導入している組織は今一度、どんな目的で1on1をしているか確認してみてください。

大事だと言われている「対話」は、
「他者の存在を通じてより良い現実を作っていこうとする対話」です。

感想

「2on2とはなんだろう」というところから興味を持ち読み始めた本書だったが、2on2はあくまで方法論であって、重要なのは「対話」を通して他者の視点を取り入れること、ナラティブに変容を起こすことだと言うのが伝わってきました。

2on2の具体的な方法は本書に記されているので、ぜひ気になる人は読んみてください。

2on2は画期的な対話の方法だと思う一方で、カウンセリング技術が多少なりとも必要なのではと感じました。というのも、2on2は臨床心理家トム・アンデルセンの「リフレクティング・プロセス」と、浦河べてるの家で実践されている「当事者研究」というものがベースにあるためです。

特に前者は、カウンセリング手法の1つなのでなおさらです。

 リフレクティング・プロセスとは、リフレクティング(反射する、振り返ること)を利用したカウンセリング手法で、非常にシンプルです。
 基本的には、2つのグループに分け、最初のグループが話をしている間、もうひいとつのグループは話を聞き、適宜、最初のグループともう一つのグループが話す役割を交代。今度は最初に聞いていたグループが、最初に話していたグループの会話について会話をします。

本書P249L5

著者が目指す「対話」には、カウンセリング技術としての聞く力やマイクロカウンセリング技法が必要で、それなしではたとえ2on2だとしても「雑談」になってしまいかねないと感じました。

一方で、浦河べてるの家の「当事者研究」は興味深いと思いました。
「精神障害を持って生きるう人たちが自分たちの病気について、病気の当事者として研究するもの」のようで、自身の病気に名前をつけるそうです。

 名前をつけることで、人と問題を切り離すことができます。
 統合失調などの場合、幻聴や幻覚、妄想などが特徴的ですが、自分の抱えている幻聴について、「幻聴さん」と名前をつけることで、問題と自分との間に少し距離をとって眺めることができます。
 すると、幻聴さんが「どんなことを言ってくるのか」「どんな時に落ち着いてくれるのか」「どんな形をしているか、それはどんな時に変わるか」など、疾患症状としての幻聴より遥かに彩豊かな観察ができるようになるわけです。

本書P25L5

では、なぜ名前をつけることが有効なのかと言うと、名前をつけることで、問題が外在化され、犯人探しのような特定の人が問題として捉えにくくなるためです。

これはカウンセリング手法の家族療法にも通じるものです。

家族療法では、症状や問題をかかえている人を「IP(Identified Patient)」と呼びます。そして、IPの抱える問題は、個人の問題ではなく、その家族の問題がIPに現れたと考えます。

心理学用語の学習 https://psychologist.x0.com/terms/261.html

そうすると一周して、やはり2on2にはカウンセリング技術(せめて知識だけでも)があると著者の目指す対話を実現できるのではと思いました。


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