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「ISは受注できないセールスに文句を言えるぐらい質の高いアポを獲得しよう」という話

【この記事を読んでほしい方】
前提:BtoBの事業に関わっている方
・the model型の組織においてアポ獲得部署(IS等)でアポ取りを行っている方、もしくはマネージャー
・ひたすらアポ数を追う目標に違和感を感じている方
・セールス組織全体をマネジメントしている方

《冒頭》

※先にお伝えしますと、インサイドセールスの意味として「営業効率化(マーケティング~営業~CSプロセスの一貫)」という意味と「主にアポ獲得をする部署(役割)」を指す場合がありますが、今回は後者を指す意味で、この言葉を使います。

 前回の記事で「LTBを意識した各部署(IS、FS、CS)の考え方」について記載しました(まだ読んでない方は、こちらを先にご覧いただけると嬉しいです)。

「売るだけのKPI設計はやめてLTV(顧客生涯価値)を意識した目標設計をしよう」という話 https://note.com/takataka_/n/ndc6afe8b32c1

 今回は、その中でアポ獲得を担うインサイドセールス(IS)部署について深堀りしていきたいと思います。

1.インサイドセールス(以下、IS)とは?

 IS組織は、主にアポを獲得する役目を担ってます。電話やメール、手紙など、あらゆる手段を使って顧客候補となる企業との接点を作ってくれる営業効率化を行う上でも、かなり重要な部署と言えます。
※個人的には、営業効率化の肝となる部署だと思ってます。

 それにも関わらず、一部の企業においてIS組織が「成果がでていない営業の異動先」等になっている企業があり、とても残念に思ってます。

※このことは、ビズリーチ 茂野 明彦さんの著書「インサイドセールス」にも書いてありますので、皆さんぜひ読んでみてください。

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 お世辞を言うわけではないですが、今までSaas営業を経験してきた立場からすると、アポを取ってくれるIS組織の方々には感謝しかなく、営業効率化が進んでいる企業において、ISに所属する方々は非常に能力の高いビジネスパーソンがいる印象を持ってます。


2.ひたすらアポ数を追うIS組織は正しいのか?

 今まで複数の企業の話を聞いてきましたが、その中には自社プロダクトのターゲットではない(以下、非ターゲット)アポでも、とりあえずアポを獲得しようとしている企業が結構いました。

 「自社のターゲットではない企業とのアポを取るわけがない」「ターゲット選定はマーケティング段階(リスト作成時点)で精査できている」という方もいるかと思いますが、マーケティングの段階で完全にターゲット企業だけ抽出するのは、大半の企業、プロダクトでは難しいかと思ってます。

 このようなIS組織で設定されている目標指標は「アポ獲得数」や、そこに紐づく「架電数」「コンタクト率(≒受付突破率)」等です。

 売上の源泉となるアポ数を追うのは間違いとは思いませんが、それだけを目標にしていいのかは疑問に思っています。

※なお、企業やプロダクトによっては、ターゲティングが定まっておらず「まずは企業に会い、プロダクトが受け入れられるか確認したい」という段階がありますので、その場合、一定の期間(1ヶ月~6ヶ月)はアポ数にコミットするという選択肢はありだと思ってます。

3.アポ数を追うKPIから生じる3つのデメリット

 アポ数を追うだけの業務を行っていると、IS組織だけでなく、様々な所で悪影響がでると思っています。

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1.アポ獲得する従業員の思考力やモチベーションが低下する

 「架電数」「コンタクト率」といった指標で従業員の行動管理をしていると、実際にアポ獲得を行う従業員は「行動量」や「受付突破するテクニック」等を意識します。
 そのような組織で日々指示されている内容は、まずはアポを取るテクニックです。

◆アポ数だけを追う組織で使われているトークやテクニック
・「30分だけでいいので時間ください」「お得なキャンペーンやってます」といった、こっち都合のトーク作成
・声のトーンや会話スピードなどのテクニック論
・とりあえず行動量を追わせるための時間管理(定期的な架電量チェック)  
                                等々

これらのテクニックが不要とは思いませんが、前提として「先方(企業や目の前の担当者)に自社プロダクトが役に立てるのか?」という視点が必要だと思っています。

 その思考を持たず、アポ数だけを追っていると、思考しない行動量だけを追う従業員を量産することになり、更に毎日のように行動量だけでマネジメントされると従業員のモチベーションの低下にもつながると思っています。


2.相手のためにならないアポは、将来の顧客候補を潰している

 当たり前の話ですが、商談は自社セールスと先方、双方の時間を使って行われます。相手の貴重な時間を使って、相手のためにならない商談を行った場合、どう思われるでしょうか?

 おそらく、次の商談獲得は、今回より一層困難になるほか、場合によっては、自社やプロダクトのイメージも悪くなると思われます。特にSaasは、日々プロダクトがアップデートされます。今はお役に立てなくても、将来的に役に立てる可能性があります。
 そのような、将来の顧客候補に対して「とりあえずアポください」という言葉で強引に時間を頂戴し、双方無断な時間を行う理由が、私には分からないです。


3.顧客分析やプロダクト開発にも悪影響を与えかねない

 少し飛んだ話かもしれませんが、非ターゲットアポが多いと、その商談データをもとにした情報分析やプロダクト開発にも影響がでると思ってます。

 個人的な意見ですが、昨今salesforceなどのCRMを導入している企業は多いかと思いますが、そこに失注理由などを正確に記載できている組織は、そこまで多くないと感じてます。

 例えば、商談した企業の失注理由を「既に導入している競合ツールと価格的に見合わなかった」と記載していたが、詳細を聞いたら「相手の担当領域が違っていた(例:営業部署向けのプロダクトなのに、相手が総務担当者だった)」なんてことも、過去ありました

 もちろん、このような失注理由を正確に把握し、除外している企業もいるかとは思いますが、非ターゲット企業とのアポが間違った情報に誘導してしまうリスクは一定あるかと思います。

3.ターゲット企業のアポを獲得する方法

 では、どうやったらターゲット企業とのアポを獲得できるのか。を記載していければと思います。

 答えはシンプルなのですが、相手への連絡前の「情報収集と仮説立て」を行い、コンタクト時は「徹底したヒアリング」を行う事です。

 事前準備は、フィールドセールスでは、よく聞く言葉ですが、ISで行っている組織は少ないのではないでしょうか?私はむしろISにこそ、やってほしいです(もちろんFSもやるべきですが…)。
 
 事前準備をすることで、相手に対して「どうやったら自社プロダクトが役に立つのか」を考え、事例など情報提供の準備も行います。そうすれば、相手が「自分にとって有益な情報かもしれない」と感じてくれる確率は高くなると思います。

※全員がそうだとは言いませんが、普通のビジネスパーソンであれば、そのプロダクトを導入するかどうかは別として、自分に有益な情報を提供してくれそう。と感じれば、多少自分の時間を使ってでも聞きたいと思ってくれるのではないでしょうか?

 ただ、いくら仮説で「役に立てそう」と思っても、その仮説が正しくなければ意味がなく、また仮説が正しくとも、連絡した相手の役割(部署や役職)に対して、自社プロダクトが役に立てなければ、意味がありません。そのためにも、この段階でのヒアリングが必要だと思ってます。

 ヒアリング内容は、プロダクトによって異なるかとは思いますが、以下のようなものが案としてあります(ご参照ください)。

① 電話相手の役割(部署や役職)
 ※決済権有無や社内稟議をあげられる方なのかどうか

 既述のように、相手の業務に関係ないプロダクト説明や情報提供を行っても興味関心は薄いと思います。もちろん、その方からターゲット部署を紹介してもらう可能性はなくはないですが、その場合は、その部署を紹介してもらう(もしくは同席してもらう)ところまでISにて行うべきと思っています。

※理由として、プロダクトと関連性の低い部署のアポをFSにパスしても、現場の本当の課題を聞くことはできず、結局、担当部署を紹介してもらう方法しかない(お互い2度手間になる)ためです。

② 組織の規模

これを聞くことによって、その組織における重要度や影響度が分かるほか、売上見込も立てやすくなります。

③ 自社プロダクトの提供価値と先方課題のすり合わせ

 同業他社の事例や仮説をもとに、相手の課題を聞いてみてください。
 例えば「最近コロナの影響で、問合せが減っているという同業界企業が複数おりますが、御社ではいかがでしょうか?御社であれば、新規の顧客獲得において、このような価値提供ができるかと思っているのですが、いかがでしょうか?」という風に、ありきたりなマニュアルトークではなく「あなたに言ってます」感が大事です

④ (③の先方課題があれば)
その課題に対して、何か手を打とうとしているのか?

 相手が課題に感じていることがあった場合、そこに対して、何をやろうとしているのか(もしくは何をすべきか分からない状況なのか)を確認することで、こちらから提供すべき情報も異なってきます

⑤(ここまで聞けたらGOOD)
予算有無、社内稟議フロー、導入時期

 正直、この内容まで聞けたらいいのですが、最初のコンタクト、かつ電話でここまで聞くのは、よほど話が弾まないと難しいかとは思いますが、ここまで聞ければ、そのアポを行うFSは相当やりやすくなります。

⑥(最後に…)
上司や決済権者の同席をお願いましょう

 これは、その後の受注率に影響するだけでなく、相手企業の課題をマネジメントや組織全体の課題としてもヒアリングできるので非常に重要です。

 営業をしていて、担当者が問題として感じている課題が、実は経営層から見ると、大したことではないと思っている(そのため予算も割いてもらえない)という事象はよくあります。相手の本質的な課題を把握するためにもより役職の高い人に同席してもらうのは非常に有効です。

 なお「相手に上司を同席させろというのは気が引ける」という方もいるかと思いますので、その場合のトーク例として…

「今回、〇〇さんが現場で感じている課題だけでなく、組織全体として(もしくはマネージャーの観点で)、どのような課題や要望があるのかもお聞きしながら、御社の課題解決に向けて提案したいと思っているのですが、恐れ入りますが、〇〇さんの上司もご同席いただけませんでしょうか?」

という風に、理由や相手のメリットと一緒に提案してみてください

4.ヒアリング内容を考慮した目標設定

 やり方は企業によって、いくつか方法はあるかと思いますが、以下のような目標が設定がおススメです。

必須項目、又は一定のヒアリングができていないアポはカウントしない
 書いてある通りですが、ヒアリング内容を決め、その内容が不十分なアポを個人の成績としてカウントしなければ、自ずとヒアリングしようという意識が芽生えるかと思います。
 ※必須項目制や、ポイント制(各ヒアリング項目ごとにポイントをつける方法)など、企業によってやり方はあるかと思います。

◆獲得したアポの受注率や案件化率も成績に加味する
 
そのISが受注した企業が受注につながっているのかは、ターゲット顧客を獲得しているか視覚化する一つの指標になると思います。

上記を踏まえた上で、アポ数を目標に組み込むのが良いと思います。

5.架電時間が長くなり、アポ率低下を懸念する方へ

 上記ヒアリング内容を見た方で「いきなりの電話に、ここまで付き合ってくれる人は少ない」「途中でガチャ切りされるのでは」という懸念が出てくる方もいるかと思います。

 その懸念を極力回避する方法としてオススメなのがアポ獲得後に「ヒアリングする時間を別途もらう」もしくは「メールでヒアリング内容を返信してもらう」です。

 トーク例として「アポイントをいただけること、ありがとうございます!1点お願いがございまして…〇〇さんの貴重なお時間をもらう話ですので、可能な限り〇〇さんのお役に立てる情報を準備してお打ち合わせをしたいと思ってます。そのため、どこかで5分~10分ほど、貴社ご状況についてヒアリングさせていただけませんでしょうか?(もしくは商談日の2営業前までにメールで返信いただけませんでしょうか?)」というように、相手のメリットのある形で提案してみてください。

※私が、以前Saas営業(FS)をしていたとき、同じような内容を(アポ買う特後)メールで送信していたのですが、返答率は80%ぐらいでした。

 相手も有益な情報を得られるのであれば、協力いただける見込みは高いと思ってます。ぜひぜひ試してみてください。

6.最後に…

 どうでしょうか?ここまでやって、自分が「この企業には役に立てる」と思ってパスした案件に対して、FSがろくな事前準備をせずに商談して失注してきたら腹立ちませんか?

 お世辞ではなく、IS組織の方々は、初めてコミュニケーションを取る相手から「時間」という貴重な財産を頂戴するという難易度の高く、かつセールス組織において新規売上創出の肝になることを行っていて、日々尊敬してます。

 次回は「LTVを意識したFS」について書きたいと思います。

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