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❨251❩1972.5.9 火 雨→曇 南米南端へ行く為のプランを練る/プエルトモント:チリ(Puerto Montt:Chile)

寒いこと寒いこと、殆ど眠れず。
それに、夜中三度も変な野郎が自転車を狙ってきて起こされた。
全くここの町は、油断もスキもないぜ。

昨日と今日の二日間、南米の南端へ行く為のプランを練った。
計画は二つあり、このプエルト・モンから真横にアルゼンチンへ向かって走るか、又は、船か空で、南端へ行くかである。

船のエージェンシーを回れるだけ回って聞いた。
昼前、港に行き船を探したが、今日はなく、明日入るということ。
しかし三、四日停泊するというからなァ (パサへ、約250ぐらいという事)。

飛行機のエージェントへ行って聞いた所、人515エスクド、荷は15キロまで無料という事。
約600エスクドで、プンタ·レーナへ行ける。

海と空とでは、金は倍違うが、滞在日数や到着までの日数などを考えると、日数は短くなるし、金額も変わらなくなって来る。
結論は、故に、明日飛行機で発つ事にした。

駅で荷物を整理し、出来るだけ安く上げる工夫をする。
こんな事も、旅の楽しさの一つでもある。

ーーーまたもや、拒絶反応が始まった。
せっかく治りかけていたのに、昨夜あんな事があったばっかしに、全くここの人間は、何んというか、総じてスキというものを見せることが出来ない。すぐつけ込むから・・・

慎重に付き合うには張り合いに欠けるし、又、いい加減に接しようとすると、奴等もやはり見下げられているという事が多少分かるらしく、難しい。
「程々」と言葉があるが、難しい言葉ネ。

寒い。昼でも、はく息がはっきりと白く見える。
アルゼンチンの南部はどんな気候なのだろう?

南米ここまで来て、最も強く感じた事。

・いかに教育が人間にとって必要であるか
それは、環境を変え、風習を変え、生活態度を大きく作用するものである。

・人間のつながり方の違い
彼等は、日本人に比べて、より多くの者が全くの他人に接して行く場合に、恐れず、はにかまずに、自然といつも話している者かのように、素直に入っていく。

そうだ。俺は、この旅で考えておかなければならない事を、一つ忘れかけていた。

「人生の底にあるものは、理屈ではない。」

俺は、その理屈では出来ない何ものかを、ここで体を通して得て行く必要がある。
理屈なら、日本でも家の机の上でフトンの中で考えられる。
しかし、日本では得られない、ここだけにしかないものが、必ず一つはある筈だ。
もしなかったとすれば、それは恐らく俺の見落としという事だろう。

もはや南米、半分の行程を終えようとしている。
ボサッと走ることばかりにとらわれていては、ホントの自転車キチガイとも言われかねない。

走る事第一、が最初目的だったが、それは手段であり、目的はその裏にある事を、考え直さなければならない。

毎日、何の為に好んで寒い板やセメントの上に寝ているのか、そして何故に、節約に節約を重ねた生活をしているのか。

ケチケチ旅行とは結局、そうする事が一番自分にとって多くのものが得られ、そして、普段にはない新しいものが出来上がる事を目的にした、俺の手だてなのだ。

夜は、駅の倉庫の軒下。全くコジキ同然だナ。

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