❨232❩1972.4.20 木 晴 400kmの砂漠を乗り切る／アタカマ砂漠(チリ)

ちょっとツユがおりたな。寝袋がぬれていた。

5km下って、5km上って、という今日の道、かなりきつかった。 しかしやっと一つ、400kmの砂漠を乗り切った。夢中だった。

4日間砂漠の中、2ヶ所に貧弱なポサダ(休憩所) があっただけである。

今日3時、町に入った。

よく走ったぜ、今日の3時までに400kmだから、一日平均130kmの計算になる。

食った食った。肉と野菜に飢えていた。
ビールもウマかった。

サンチアゴへあと約1000km。
長い砂漠が二、三あるが、もうへっちゃら。

どこかで体を洗いたい。もう大分、アカがたまった。

日本へ帰りたいなあ。先生や皆んなに会いたい。
でもまだまだ頑張らねば。

だって、もうこんなチャンスは二度と来ないかも知れないんだからナ。

夢が実現してしまうと、すぐまた次の夢が始まる。
そして、せっかく作った夢を、途中で捨ててしまう。
そんな浮気心が俺には少しある。

この夢だけは一生に一度の夢だから、最後まで、終わるまで大切に、慎重にもって行きたい。

全く、こんな苦しみは、日本では絶対味わえないものだ。

南米・アメリカ、俺の、この俺の、
一番大きな希望の地、そこに今俺は生きてい る事を、もう一度よ～く考えてみよう。