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006:トイレ掃除こそ ビジョンの体現|クレイジーで行こう!第2章

東京オフィスのメンバーへ送った1300字を超える苦言

僕は、会社とは別で渋谷のメンローパーク・コーヒーというコーヒーショップを経営している。カリフォルニア州シリコンバレーの「自由な空気」を日本に届けたいというコンセプトで、2019年1月にオープンした。

フラクタの東京オフィスは、このお店の3階を拠点としていて、最近4~5人のスタッフが増えたところだった。

ある日、コーヒーショップのスタッフから、僕の所に連絡が届いた。

「フラクタの皆さんと共同で使っているトイレが、最近汚れていることが増えてきました。加藤さんに言うのも何なのですが、一応お伝えしておきます」

僕はこの連絡を聞いて、フラクタ従業員のふがいなさに激怒した。そのまま、東京オフィスへメッセージを送った。今になって読み返すと、1300文字もの長い文。すべてを引用することはしないが、一部抜粋させてもらう。

「今のフラクタ従業員は全員が全員、トイレの掃除まで気持ちが追いついているだろうか。『俺様は仕事が忙しい、バタバタしている』と思っていないだろうか。じゃあ、メンローパーク・コーヒーのスタッフに掃除を押し付ければ良いのか? それは何でだろうか? 彼女たちが掃除をしなければ、客商売である彼女たちが困るからか? なんなら、俺たちが男性で、彼女たちが女性だからか? 俺たちの学歴がご立派だからか? 俺様たちが高級取りで、労働者階級じゃないからか? そういうクソ野郎は今日にでも会社を辞めなさい」

長いメッセージの中で最も強い部分を引用したため、言葉が強すぎると感じる人もいるかもしれない。また、多様な価値観が大事だと言われる時代に、僕のやり方は前時代的かもしれない。

ただ僕は、駅のホームでタバコを吸っている見ず知らずの若者を見つけたら、その場で説教するようなタイプの人間なのだ。古臭いかもしれないが、相手のことを考えると懐に踏み込んでいくしかない。ましてや、メッセージを送ったのは一緒に働いているメンバーだ。トイレ掃除は僕にとって、決して譲れない一線だった。

メッセージを送ったとたん、メンバーからは深い反省の色を見せた返信が次々に届いた。とてもショックを受けた様子がうかがえる。今後はきっと、東京オフィスのメンバーは毎日トイレ掃除をするようになるだろう。でも、トイレ掃除をすればそれで済む、という問題なのだろうか。

僕が憤慨したのは、トイレ掃除の一件で露呈したと思える「ものごとのとらえ方」だ。いわゆる市場に出回る起業家のストーリーや、ビジネスのテクニックでは語られない本質が、今回の出来事に隠れていると思う。

コンピューターが使えるから偉いのか?

東大やスタンフォードといった有名大学を出て、偉そうにコンピューターをカタカタ叩いて「世界を変えてやろう」と息巻く。それはもちろん、会社としてありがたい側面もある。ところが、すぐ隣にあるトイレは、自分が使っても掃除ひとつしない。もし「自分は会社のトイレ掃除をするような立場ではない」なんて考えているとしたら、メールに書いた通り、そんな奴は「クソ野郎」だと思う。

自分のことを言うのは何だが、オフィスのトイレ掃除は、ずっとCEOの僕がやってきた。現在は他社との共用トイレなので全部はできないが、トイレを出るときには、便器や床の汚れをきちんと拭き、汚れやゴミがない状態にしておく。自分が使った回数分だけやれば1日に2~3回は見回れるし、それ以上汚れることもない。誰の汚れやゴミであっても、自分の会社なのだから自分の責任だと思い、何の疑問もなくこれまでやってきた。それをあえて誰かに言ったことはないから、スタッフはみな知らなかったと思う。

トイレ掃除のような日々の仕事をきちんと尊重できることと、社会に貢献する製品を作ることは、すべて地続きなのだ。トイレ掃除をするかしないかという単純な話ではない。

僕たちが売っているのは、モノやソフトウェアといったわかりやすいものではなく、社会益だ。水道会社に導入してもらえれば効率が上がり、各家庭での水道料金が安くなる可能性がある。いま、日本では二人以上の世帯で平均5140円の水道料金がかかっている。僕たちの製品が普及すれば、そのうちの数十円や数百円が減らせるかもしれない。さらなる努力により、もっと高い効果を発揮する可能性もある。いわゆる“エリート”からすれば小さな金額かもしれないが、所得が低い人から見れば、とても重大なことなのだ。

地続きである足元に思いが至らないような人に、水道産業を救う製品は作れないし、売ることもできないと僕は思う。もしできるとしたら、空っぽの箱を売りつけているようなものだ。

言葉は嘘をつく。信じられるのは行動だけ

言葉はとても大事だけれど、行動が伴わなければ何の意味もない。例えば「恵まれない人を救いたい」と言うのは簡単だし、実際に少しは思っているのだろう。でも、本当にそのために行動していないのであれば、本質的には何の意味もないのだ。

特にベンチャーの世界では、「やろうと思っている」「やったほうがいい」などという言葉は、最も意味がないように感じる。「やります」ですら弱い。行動の結果「やりました」と言うくらいでなければ、本当の価値は生まれない。

「神は細部に宿る」という言葉について、最近よく考えている。ほんの少しの出来上がりの差を埋めるのは、とても長い時間や労力をかけた膨大な行動なのだ。1000mの見えにくい行動が、目に見える1mmの差を生む。一見するとほんの小さな差だが、そういった細部でしか本当の差別化はできないし、人を動かすことだってできやしない。

トイレ掃除をしても、今月の売上が変わるわけではないだろう。ビジネスの世界では「世の中のためを思うなら、トイレ掃除は誰かに任せて、自分は少しでも効率的に仕事をした方がいい」と考える人が多いように思う。ただそれでは、「世の中のためを思う」という言葉と行動が伴っていないのではないだろうか。

少なくとも僕は、そういう人と一緒に働きたいとは思わないし、そんな考え方で1mmの差を作れるとは到底思えない。「水道料金を数十円でも安くしたい」という強烈な執着心を持って製品を作り、水道会社の人たちと渡り合う。そういう信念こそが、最終的に世界を変える力になるのだ。

(記事終わり)

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前編20分:

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