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業界地図に載っていない非営利分野に就職したい学生さんへ(環境・国際・地域活性・まちづくり等)

業界地図で自分のやりたいことが見つからない人へ

今日は上記のテーマについて書いてみようと思います。環境・国際・地域活性・まちづくり等々、比較的非営利に属する分野で仕事をしたいと思っている学生さんに向けて私なりの意見を伝えられたらとPCに向かっています。この記事だけが独り歩きしてもいい、むしろ独り歩してほしいと思いながら。

ひょんなことから人材業界(就活エージェント)に関わることになった私ですが、昨年複業でキャリアアドバイザーになるまでの17年間はこの業界とは縁もゆかりもない人間でした。これまで何をしていたかというと、環境系非営利団体(3年)→教育サービス業(3年)→環境系非営利団体(6年)→まちづくり&NPO支援会社(6年)という経歴があります。教育サービス業は一般企業枠でいいと思いますが、それ以外は明確に非営利団体もしくはそれに相当近しいものです。

さて、タイトルに「環境・国際・地域活性・まちづくり」と書きましたが、別にこれだけだとは思っていません。人権もあればジェンダー平等、貧困問題、障がい者支援などテーマはたくさんあります。なので、今回の記事は業界地図にはどうしても自分のやりたいことが見つからない人向けと思っていただければ幸いです。

記事を書こうと思った理由は2つ。私自身が20年前にそういう学生だったから、そして現在就活相談に乗る中でこういった学生さんにちらほら出会うようになったから。ちなみに、こういったテーマを仕事にしたいなら公務員になればいいのでは?という意見もいただきますが、今回は一旦それを脇に置いておきます。

環境問題に関心があっても環境系の仕事がなかった

私の話をすると、小学生にして森林に興味を持ち、将来は植物について学ぼうと心に決め、大学受験では理系科目が苦手にも関わらず克服しながら森林系、農学系、環境系を受験し、一浪を経て念願の環境を学べる学科に入学。環境問題に関わりたいという気持ちは変わらないまま、いざ就活の場面になって愕然としました。環境に関われる仕事がない!2000年当時はせいぜい仕事として出来るのが環境アセスメント関連で、実際にはロスジェネ最終期ということもあり、学部の同期50名は1/3くらいが大学院へ、それ以外は一般企業への就職もしくは放浪など。私は就職ではなく、10か月インターンという形で、かつてより縁のあった山梨県の公益財団法人で環境教育に関わることになりました。その時点で同期の中で環境系の仕事に進めたのは私だけだったはずです。

それならさぞかし満足だろうと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。インターンなのでその後の保証はない(実際はその後臨時職員として2年勤務)。学生時代の友人たちは名のある大手企業に勤め、給与の格差も甚だしいし、将来も不安定。もちろん自分で選んだ道といえばそうだし、むしろこだわりが強くて自分の意志と異なる方に進むことがどうしてもできなかった人間です。それでも、一般企業に就職すれば得られたはずの肩書きや給与、福利厚生などを享受せず我が道を進んだことを、23歳の私はけっしてこれでよかったのだと心底納得してはいませんでした。

結局、八ヶ岳の麓で3年間、環境教育・自然体験活動に従事。インターン・非正規職員として働いた当時の学びやスキル、なによりマインドは今でも確実に私の核となっています。後悔は1ミリもありません。ありがたいことに当時ご縁のあった上司や同僚、関係者などはいまでも繋がりがあり、やはり同じ志を持つ者同士、たまに会ってもすぐに打ち解けます。根っこの部分で共通した経験や思いを持っているから絶対的な心理的安全性があります。

その後、3年間教育サービス業(学習塾)に従事しますが、どうしてもビジネスの考え方がしっくりきませんでした。教育に値段を持ち込むこと、数値目標を持ち込むこと、どうしてもモヤモヤしてしまう自分。ただひたすら目の前の子どもたちのために全力を尽くしたいけれど、それだけやればいいという環境ではありませんでした。とはいえ、まだまだ自身が未熟だったことも否めません。なぜなら今の私にはそれがたぶん出来るから。数字が苦手というのはわがまま、自分の給料はどこから出てるんだ!という意見もごもっとも。そこから数年経った今の私は、目の前の顧客に全力で向き合いつつも数字を意識することくらいは出来るようになりました。キャパが大きくなったのでしょう。非営利分野を志す学生さんにはビジネス的な考え方がしっくりこないケースも多々あると思います。その気持ちに共感するとともに、やはりそれはまだキャパ不足や視野の狭さがあるのだとも思います。何を偉そうにって感じですけどね(笑)社会問題への関心はそのままに、月日や経験が今の私を作りました。

その後、再度環境系団体、まちづくり&NPO支援というキャリアを進みます。ビジネス色は少なめで、かなり気楽に仕事をできています。やはりビジネス色は控えめ、誰かのため、社会のために仕事をすることが性に合っていることは間違いないようです。

ちなみに、こんなボヤキも正直あります…。

新卒採用市場は例えるなら「競技場」

この20年でビジネスとソーシャルの溝は随分埋まりつつあります。SDGsをはじめ、環境、人権などにも取り組まなければ将来がない、企業活動だけしていればいい訳ではない、ということが企業の表向きの姿勢だけではなくなってきていると感じます。かといって、環境や人権は企業活動を行うにあたって配慮しなくてはいけないテーマであっても、環境や人権そのものを解決する事業を行おうとするものではないということも分かっておく必要があります。ここはかなり重要!社会問題に取り組んでいますといったメッセージを掲げている企業に興味をもって説明会に参加してみたら、何か違ったという学生さんの声も聞きます。やはり第一義は顧客のためであり、社会問題を解決するためではないというところに起因するからでしょう。

私が普段NPO支援を行う中でひしひしと感じることは、NPOの主目的は社会課題の解決であり、利益を上げることではないし(利益は出していいんですよ!)、拡大することがすべてではない(課題解決後は解散を目的にすることだってある)ということ。だから多くの団体は、将来的に新卒採用ができるようにしようといったプランも持っていないというのが現状。この分野を志す学生さんには申し訳ないし、常に人手不足のNPO業界と志のある新卒の皆さんがマッチングされたらなんて幸せなんだろうと思うものの、やはり新卒育成の体力はない、ほかにリソースを投入したい、即戦力(中途採用)がほしいというのが本音というのも私は大いに理解します。

そもそもたとえ営利企業でもすべての会社が新卒採用している訳ではないですしね。学生さんにこの話をすると時々びっくりされます。就職活動が始まると、世の中のすべての会社の中から将来を選択できるように錯覚してしまうのかもしれないけれど、そんなことはない。やりたいことが明確な学生さんほど自分で調べているから、その実態をよくわかっている気もします。中途採用しか見つからないんです、と言われることもままあります。

つまり、新卒の就職活動の範囲は至極限られているという認識を持った方がいいということ。私は時に新卒採用市場を「競技場」に例えます。競技場の中には走り幅跳びや砲丸投げ、400メートルリレーなどいくつかの競技が用意されていて、その中で自分がどの競技をやってみたいのか、向いてそうなのか、いろいろ検討することになる。けれど一歩競技場の外に出れば、ほかにもスカイダイビングだとかボルダリングとか水泳とか全く違う競技がたくさんある。どちらの競技のほうが簡単とか楽とか比較できない。ただ、新卒採用市場の外にはかなりたくさんの仕事があるということなんです。

やりたいことを仕事にするにはどうしたらいいのか

最初から競技場の外(新卒採用の枠外)を目指すというのも一つの考え方だと思います。ただそうすると中途採用しか行っていない、または全く採用をしていないなんて団体があるわけです。そこに新卒で飛び込むのは、決して成功率は高くない。中途がほしいのは即戦力がほしいから。だったら、まずは新卒採用市場を通じて社会に出て、ゼロから社会人としての基礎、なにかしらのスキル、実績を育ててもらうというのが得策だと考えます。新卒カードを行使するということです。なんせ、○○さんなら我が社できっと活躍してくれるだろうという今後の可能性にかけて採用してもらえるのはこのタイミングだけなのですから。こんなことをいうと腰掛けのように聞こえるかもしれませんが、腰掛け気分で内定が出るほど甘くないです。まずは本気で新卒採用企業に挑戦する選考プロセスも入社後もすべて本気で。そうしているうちに、その企業が本当に自分に合った企業だと思えるかもしれませんし、その企業で得た経験やスキルを糧に元々志していた分野に転職する、どちらだって正解だと思います。今のご時世、副業という選択肢も大いにあり得ます。企業に勤めながらNPOの理事をやったり、プロボノとして関わるという働き方も全然ありです。というかむしろその方が現実的かもしれません。ビジネスマインドを持った人材はNPO分野には必要ですし。とにかくどれが正解かなんて無いです。“選んだ方が正解”というのが私の座右の銘。

ちなみに、この期間は何年がいいという決まりはないですが、仮に3年とします。20代前半の3年間がいかに長いものかは想像に難くありません。一旦ほかで力をつけてから希望の分野で活躍すればいい!と提案すると、大抵の学生さんの顔はパッと明るくなります。けれど、修行期間が数年だと伝えると一転顔が曇ったりします。気持ちはよく分かる。だからこの修行期間の終わりは人それぞれでいいと思います。自分なりのゴール設定をしてそこに到達したらでもいいし、自分の直感に沿って「いまだ!」と思ったときでもいい。常にチャンスを伺っていて「いまだ!」と思ったときにNPOの中途採用に応募するでもいい。とにかく基準は何でもいいと思います。すべてはあなた次第。

本当なら新卒で環境・国際・地域活性・まちづくりなど志す学生さんに来てもらえるのがベストです。特にそういったことに関心を持っている学生さんは、高校生のころから関心を持っていたりして、その分野を学びたくて大学や教授、ゼミを選んでいたりもします。なのに、そういう学生が報われないのが本当に口惜しい。大学は学問の場なのに、体育会で頑張っていたことや長期インターン経験があることの方が優遇されることもあります。でもやっぱり想いをもって学んでいる学生こそ報われてほしい。私自身大学時代に最も力を入れたことの一つは卒業研究でした。先輩や教授に修論レベルだと褒められるほどでした(自慢)。でもそれって、就活の時期より後なんですよね。多くの学生さんが、新卒採用の場面でなくても、いつか真っ当に大学での学びが評価されてほしい、私の想いです。

まずは一般企業で鍛えてもらい、先々非営利分野を目指せばいい。なんだか対処療法でしかないかもしれません。でも、やはり私は非営利サイドにいる人間かつ少しビジネス分野をかじった人間として、学生の皆さんには期待を込めてこのようなアドバイスをさせていただきたいと思います。志を持ち、そして力をつけた皆さんが、この分野にいつぞややってきてくれることを楽しみに待っています!

人生100年時代、今の学生さんなら70歳もしくはもっとその先まで働く可能性が高くなっている中で、新卒で入った1社だけで人生終えられる方が不思議なくらいです。ということで、少し肩の力を抜いて、未来の自分のありたい姿から逆算して、新卒採用の機会を活かしていってほしいと切に願っています。

※追記①:新卒採用しているNPOも少ないながらもあります。ちなみにNPOとはNPO法人のみならず、非営利組織全般を指しているため株式会社なども含まれます。

※追記②:以下のような記事も大いに参考になるはずです。

※追記③:新卒採用を明示しているNPOも僅かながらあります。ただし、その場合はその分野での経験を問われたり、それまでにその団体の活動に関わっていることを条件にしていたり(縁故系)、何かしらそういった傾向にあることは知っておくとよいです。
・NPO法人放課後NPOアフタースクール
・NPO法人フローレンス
・株式会社リタリコ


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