経済ジャーナリスト 財部誠一 HARVEYROAD JAPAN

慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、出版社勤務を経て現職。経済政策シ…

経済ジャーナリスト 財部誠一 HARVEYROAD JAPAN

慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、出版社勤務を経て現職。経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」主宰。国内外の企業取材に定評があり、大企業だけでなく、中小企業も積極的に取材している。

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毎月1,500社以上に及ぶスタートアップ支援への思い。アフターコロナを見据える経営戦略

岩崎弥太郎を創始者とする三菱財閥は昭和の日本を象徴する存在だった。だがここにきて三菱グループが崩壊の危機に瀕している。かつて総合商社トップだった三菱商事は伊藤忠にその座を奪われたばかりか、今年の3月決算では4位に転落。三菱重工 は1兆円もの巨費を投じた国産初の小型ジェット機スペースジェット(旧MRJ)の開発で完敗。三菱自動車は不祥事から倒産寸前にまで追い込まれ商事のお荷物になった。そして今回検査不正問題で社長辞任の三菱電機。名門三菱グループの総崩れである。三井グループの東芝の瓦解も見るに耐えない。 世紀をまたいで存在し続けること自体が不可能になってきているのだろう。不祥事が起こるたびに社長が引責辞任して順当にトップがいれかわっていく。もう民間企業というよりお役所だ。平成の30年間を挟んでも昭和な会社は昭和のままということだろう。 世界の企業番付「フォーチュン グローバル500企業」の40%が今後10年で姿を消すという予測もある。 大企業であるというだけでダメだということだろう。急速か変化についていけず、働かない中高年の巣窟となってしまったのだからやむをえまい。 一方、小回りのきくスタートアップは時代の変化を楽しむかのように新基軸を次々と打ち出している。見てていて小気味よく、頼もしい限りである。ビジョンの佐野健一さんの話を聞いていると、日本の活路はスタートアップ経済への移行しかないことを痛感する。 *ビジョン佐野健一氏との対談後編 下記URLからご覧ください。 https://youtu.be/IueHZkVQ9kU

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      「コロナ禍を生き抜く、串カツ田中の経営戦略」株式会社串カツ田中ホールディングス 代表取締役社長 貫 啓二氏 経営者の輪 財部誠一

      「軽い奴だな」 約束の時間に遅刻してきて「すみません」もなく、派手なメガネを地味なものに取り替え、高級腕時計外して黙って広報担当者に渡した。その様子がいつものルーティンであることをうかがわせる。 絵に描いたような成り上がりのチンピラ。 それが串カツ田中の貫啓二社長の第一印象だった。 だがカメラが回り、対談が始まるとガラリと態度が変わる。さすがコロナ禍でも経常黒字(20年10月決算)を達成した経営者である。アルコールを提供する外食チェーンとしては異例の好決算となった理由はどこにあるのか? じつは第一印象のチンピライメージとは対象的に経営はステディだ。コロナで多くの経営者が学んだ教訓は「キャッシュ・イズ・キング」。貫社長は度重なる外食事業の失敗から「事業の難しさ」を熟知しているという。串カツ田中は実質無借金で上場までたどりついた。 松下幸之助のダム式経営を彷彿とさせる。 「経営のあらゆる面にダムを持つことによって、外部の諸情勢の変化があっても大きな影響を受けることなく、常に安定的な発展を遂げていけるようにするというのがダム式経営の考え方である」

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        「成長する上場企業の組織論、独自の人事評価」株式会社ビジョン 代表取締役兼CEO 佐野健一氏 前編 経営者の輪 財部誠一

        海外旅行に行った時に“グローバルWiFi”のお世話になった日本人は少なくないだろう。インバウンドの外国人も“グローバルWIFi”にどれだけ助けられたかわからない。 このサービスを提供してきたのが(株)ビジョンだ。 言うまでもなくコロナ禍でグローバルWiFi事業は瞬殺。年率22%平均で成長してきたスタートアップが危機に直面した。だがビジョンの佐野健一社長は意気軒高だ。理由のひとつはビジョン独自の営業管理にある。部署ごとに競い合う昭和的な競争原理は一切捨てた。部署間が連携して協力しあう協調原理でビジョンは動いている。 「一人の営業マンが商材を販売して終わりなら、プロセスコストが高い。しかし他部署の営業マンが別の商材を同じお客様に提供できれば契約コストは圧倒的に下ります。結果、お客様へ価格をおさえて提供できる」と佐野さんは言う。営業マン一人あたりの生産性アップに直結するが、そこで問われるのは人事評価だ。理屈だけでは本当の協調など生まれるわけがない。 「そこがポイント。ビジョンは他部署に顧客を紹介して成約となった時には、紹介した側された側、双方に50%ずつ評価がつく」 自律・分散・協調型の組織運営がシステムとして定着しているのだ。まだ苦戦が続くグローバルWiFi事業を全社でカバーしようという大きなムーブメントが生まれている。 なにかロールモデルがあったのか、佐野さんに尋ねた。 「何もなかった。すべて社員と話し合いながら創ってきた。いまは競争ではなく協調の時代。それが体現している」 迷いなき経営に惚れ惚れする。

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          PART3 株式会社TDK「M&Aを成功させ続ける手腕」

          M&Aで「変化し続ける」ことは日本企業がもっとも不得意とするところ。日本一のM&A巧者はカリスマ経営者、永守重信氏ひきいる日本電産だろう。コロナ禍にもかかわらず21年3月期決算は増収増益になるというのだからおそれいる。 日本電産とまではいかないが、TDKも日本企業には珍しいM&Aで変化し続けてきた企業である。 成功の秘訣はどこにあるのか? 「買収先は長年のパートナーであったり、同じ業界にあって補完関係にあったりなど、土地勘のあるところばかり。飛び地のM&Aはやってはいけない」 石黒成直社長の言葉だが、TDKの凄いところは買うばかりではなく「事業の切り離し」も頻繁に繰り返していることだ。 目をひかれるのは「事業切り離し」基準である。 「相手が幸せになれるかどうかです」 まさに共感経営!

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          PART2 株式会社TDK「受け継がれるイノベーティブなDNA」

          カセットテープで世界を席巻したTDKは、需要が蒸発していくなかHDD(ハードディスクドライブ)ビジネスで再生したが、そのピーク時に次世代の主力ビジネス創出にむけ動き出した。 販売好調時に新規ビジネスを創出することは至難の業だ。 この難しいミッションを与えられたのは当時、長野県にある浅間テクノ工場長だった石黒成直社長である。 「HDDの読み取り技術はセンサーとして有望であることは薄々わかっていました」  それをどうカタチにするのか、どの市場を狙うのか。たった4人で進めていたプロジェクトメンバーには、ひとつ決め事があったという。 「どうせやるなら最難関の扉を叩こう」 TDKは車載センサーに狙いを定めた。そして世界最高の自動車部品メーカーであるデンソーとドイツのBOSHの扉を叩いた。苦労もしたが学び多き相手でもあったという。 イノベーションを起こし続けるTDKの秘密の一端が見えてくる対談だった。

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          PART1 株式会社TDK「カセットテープの時代を超え、確かな技術とM&Aで成長するTDK」

          ダイフク 下代博社長からのご紹介いただき、TDK株式会社 代表取締役社長 石黒成直氏にご出演いただきました。 リレー対談「経営者の輪」は予定調和一切なし、対談頂いた経営者の方が自由に次の対談相手を指定(紹介)する予測不能ループです。見知らぬ経営者との偶然の出会い。それはまさに“邂逅”です。これほど面白いことはありません。 今回公開したのはTDKの石黒成直(いしぐろ しげなお)社長との対談(PART1)です。 中高年世代にとってTDKと言えばカセットテープの代名詞。若い頃の音楽シーンにTDKはなくてはならない存在でした。石黒社長はその真っただ中、1983年に入社しました。その石黒社長が苦笑していました。 「最近はTDKさんは何を作っているんですか?」 「TDKは最近は電子部品を作っているんですって?」 なんてこと言われることが多いそうです。しかしTDKは今も昔も電子部品メーカなのです。たまたまTDKの持つフェライトという素材を粉末状にしてテープに塗布することで録音媒体として売り出したところ、それが全世界的なビックヒットになった。 とはいえ電子部品メーカーはB2Bビジネスで、一般消費者相手のB2Cビジネスに対する知見はなし。ド素人のTDKが莫大な予算を費やし、世界で生産して世界で販売する思い切ったブランド戦略でまきおこした昭和のイノベーションでした。 そのブランド戦略の一環として東京電気化学工業(株)をTDK㈱ へと社名変更し、1961年に日本初のローマ字社名の会社として東証に上場したのでした。 SONYではなかったのですね。 ハーベイロードジャパンウェブサイト https://www.takarabe-hrj.co.jp

          PART1 株式会社TDK「カセットテープの時代を超え、確かな技術とM&Aで成長するTDK」

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