【本】【小説】化物語を書いている作家は化物なんだよ(おまけ)
西尾維新は作品の中で多くの天才キャラを書いてきた。
これは私の推測であるが、創造した当の本人は「自分が天才だ」と奢ったことはないだろう。
何故、私がそんなことを考えたのか。
それは西尾維新がまだデビューする以前のある記録を読んだからである。
今は大ベテランである西尾維新にも、新人時代があった。
彼が小説を投稿し始めたのは1999年頃。応募した新人賞はメフィスト賞だ。日本には小説の新人賞が数多く存在する。その中でもメフィスト賞は特殊な賞だった。
一般の小説の新人賞には、「下読み」と呼ばれる応募した作品を読む者がいる。その下読みに認められた作品が一次選考、二次選考を通過していき、最終選考で編集者やベテラン作家に読んでもらえるのだ。
一方、メフィスト賞は下読みを通さず編集者が直接読んでくれる。
編集者たちを「面白い」と唸らせれば、即デビュー。無論、受賞するには相当ハードルが高い。
受賞した代表的な作家は、京極夏彦、森博嗣、舞城王太郎、辻村深月など。ちなみにメフィスト賞の作品は良くも悪くも、作風が一癖も二癖もあることでも有名だ。
西尾維新はこの一風変わった新人賞に投稿した。
そしてすぐに華々しくデビューを飾った……わけではない。
彼の小説は、最初から編集者たちに認められたわけではなかった。
西尾維新はこのメフィスト賞に最低10回は投稿している。
メフィスト賞に投稿された作品の批評は『座談会』であれやこれやと語られる。面白い作品を創る熱意のある編集者たちが読んでいるので、作品の評価は容赦がない。
面白い作品は、面白いと言ってくれる。
けれど面白くない作品は、面白くないとはっきりと言う。
そして西尾維新が投稿した作品も批評の的だった。
※↓こちらが西尾維新の投稿時代の総評がまとめられた記録である↓
300枚以上の長編小説を書いて、その作品を編集者に「つまらない」と言われても、すぐに新しい作品を書いて投稿する。これを1年8カ月も継続した。
本当に天才ならば、このような苦労はしない。
もしかしたら彼はメフィスト賞を受賞した京極夏彦と森博嗣などのデビューの逸話を引き合いにして、「あの人たちこそ本当の天才です」と言うかもしれない。
この記録を読んで私が感じたのは、西尾維新の強い精神力である。
編集者の評価を真摯に受け止め、一度も筆を折らないで書き続けるその姿勢はとても素晴らしい。
彼の創作に対する執念を手に入れたい。気づけばそう感じていた。
↓西尾維新についての記事↓
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