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男性に知ってほしい『女性の人生の目次』

こんにちは、産婦人科医の高尾美穂です。

今日もいただいたレターにお答えし、お話を進めたいと思います。
 

高尾先生いつも前向きで愛のあるメッセージの雨を降らせていただき、ありがとうございます。
私は45歳。めでたく更年期の仲間入りです。

エクオール検査のあと、信頼性のあるエクオール含有サプリメントも飲み始め、先生の著書も読んでいますので、自分なりに準備万端、前向きになるべくなら大きな変化を感じずに過ごせたらいいなと思っているところです。

先生にお願いです。
先日の番組でおっしゃっていた、男性にも女性の体に起こる変化の目次だけでも知っていてほしいという考えに激しく同意です。

なので、同じ年のパートナーにも伝わりやすい男性向けのメッセージの回を是非お願いしたいです。


女性の人生に起こる出来事の目次


男性の皆さんに、女性の人生に起こる出来事の目次を知っていてほしいという表現を私はよく使っています。
 
この目次の意味は、内容までは詳しく知っていなくても、女性の体に起こる出来事をざっと知っていてくださるだけでとてもありがたいという想いで発信しています。
 
ですので、今日は男性の皆さんに、女性の人生にはどんなことが順番に起こっていくのかをざっと、目次程度にお話できればと思っています。
 
思いがこもると長くなりがちなので、そこはちょっと注意しながらお話しできればと思っています。
 

第二次性徴期


まず、女性と男性の体つきがはっきりと変わってくる、第二次性徴と呼ばれる時期について。

これは、小学校4年生や5年生ぐらいの多感な時期にやってきます。
 
成長期、思春期、第二次性徴を迎えると、女の子はだんだん丸みを帯び、ふくよかに、男の子はガシッとした体つきになります。
 
これを医学的に表現すると、女の子は脂肪質に、男の子は筋肉質へと変化をしていくわけですが、ここで男性の皆さんに知っておいていただきたいことは、女の子の体は男の子の体とは違う変化をしていくということです。
 
つまり、女の子がだんだん丸みを帯びた体つきをしていくのは、女の子特有のごく普通の変化であり、そのことについて例えば、「ちょっと太ったんじゃない?」とかそういう一言が、その子やその子のその後の人生にものすごく大きな影響を及ぼす可能性があるということを一つ知っておいていただきたいと思います。
 
女の子らしい体つきに変わっていく時期には、女性側も自分の体の変化に追い付いていけないということがあり得ます。

これが例えば、太りたくない摂食障害や、痩せなどの一つ課題になったりもします。
 
体つきだけではなく、運動能力や骨格も当然違いが出てきます。

力の強さ、背の高さ、持久力など色々な体力的な部分に関しては男性の方が優位に立つということを知ると、例えば、女性に対して引っ張ったりするなどということは避けようという気持ちが自然と生まれるのではないかと思います。
 
そしてこれらを乗り越えて、生理が来ます。


生理、生理に伴う不調

 
初めての生理は『初潮』と呼ばれますが、これは女性の体が妊娠できる準備を始めたといってもいい時期だと理解していただくといいでしょう。
 
この生理は、妊娠できるチャンスを迎えたけれど、妊娠しなかった時にやってきます。
 
妊娠できる準備というのが、『排卵』という言葉にあたります。
 
排卵を迎えたけれども、妊娠成立しなかった時に迎えるのが生理というイメージを頭の中で持っておいていただくといいと思います。
 
そしてこの生理というものが女性にとっては厄介なもので、生理が順調に来る年代においては『生理痛』や、『生理前の不調』で悩んだりするケースが見受けられます。
 
以前、生理は一日で終わると思っていたという男性に遭遇したことがありました。
 
生理の正常な持続期間は3~7日といわれており、出血している状態が一週間ほど続くのが女性の一般的な状態だといえます。
 
血液を失うということは、タンパクや鉄など色々なものを体から失っている、それが一週間も続いていると想像すると、確かにその時期はしんどい、そんなイメージ持っていただくだけでもありがたいと思います。
 
そしてこの生理がつらいという状態に対しては、もちろんできることはあるので女性の皆さんは自分なりに対策方法手に入れることが大事だということも忘れないでいただきたいです。
 
そして生理前の不調に関しては、特に何らかの問題がなかったとしても、きちんとホルモンが変動しているからこそ起こる不調の時期という捉え方をすると、一般的に誰でも起こり得る不調ともいえます。
 
生理前の不調は4人に3人の女性が抱えているとされており、体の不調だけではなくメンタルの不調もやってきます。
 
そして、あのとき生理前だったからセンチメンタルな気分になったんだと後から気づくようなことも含めると、9割以上の女性が生理前の不調を感じているというデータもあったりするぐらいなので、女性は生理前は調子が悪いと思っておいていただいてもいいぐらいだと思います。
 
パートナーであれば、会話や、ナプキンの存在などから生理前もしくは生理中だということがある程度把握できたりするかもしれませんが、多くの場合は知る機会がありません。
 
となると女性が調子が悪そうと思った時には、もしかすると生理中なのかな、生理前なのかな、そんな思いを頭の中でちょっとだけ思い浮かべていただくとよいのかもしれません。
 
これはもちろん距離感によって変わっても全然構いませんが、体調が悪いんだから、とりあえず何か自分が変わってできることないか、とりあえずそっとしておこうなどと思っていただけたらありがたいと思います。
 

避妊・妊娠


それ以外ですと、例えば妊娠してしまうかもしれないという不安を抱えながら過ごす女性も少なくありません。
 
特に今、日本においては女性側が積極的に避妊のための手段を取っているという割合が欧米と比べるとはるかに少なく、男性の皆さんのコンドームに頼ってしまっているというような状況が少なからずあります。
 
生理がなかなか来ないとなった時、生理が来るまでの数日は本当に不安な思いをしながら過ごしているということも知っていただきたく思います。
これはもちろんただの生理不順ということもあり得るわけですが、その前の生理周期の中で性交渉を持っている場合には、女性は絶対と言っていいほど、もしかしたら妊娠しちゃったんじゃないかという思いになるものです。
 
この不安な数日間は、無くすことができるはずだと思いますので、パートナーがいらっしゃる方に関しては是非一緒に考えていただければと思います。
 
また、これは男性女性共通かもしれませんが、いざ妊娠したいと思ってもなかなか妊娠できない場合、これもまた不安材料になったりします。
 
女性においては、なかなか自分自身が妊娠できないということが女性として駄目なんじゃないかという気持ちになることもあったり、周りの同級生やお友達が妊娠した、子供を産んだ、2人目だというような話を聞く度に落ち込むということも、多少目次の中に入れておいていただければと思います。
 
そして妊娠したとしたら、妊娠中も色々なことが不安になります。
 
胎動が始まると、お腹の中で赤ちゃんが動いていることがある程度は分かるようになるかもしれませんが、元気かどうかは、妊婦検診に行かないと分からないため、それまでは本当に心配が続きます。
 
そしてお腹の中で動いてくれるようになったとしても、ちゃんと成長しているのか、異常がないのかなど、おそらく不安が尽きないのが妊娠中だと思います。
 
そして妊娠中の浮気というものが、社会的によく聞く実際のところで、やはり身重の奥さんを思う旦那さんでいてほしいなという気持ちもあったりします。
 
もちろんご結婚なさらずにパートナーシップで妊娠や出産を迎えるというケースもありますが、いずれにしてもお互いのコミュニケーションがいつの時代もいつの時期も必要だということ、産後はメンタルが落ちやすい時期だということを是非知っておいていただければと思います。


産後、子育て、社会復帰


 産後にメンタルが落ちやすい理由が分からないという方がまだまだたくさんいらっしゃいます。

妊娠中から産後にかけては、ホルモンにとても大きな変動があり、産後は女性ホルモンと呼ばれるホルモンが体に(ほとんど)無い時期です。

体が大きく変化するだけではなく、メンタルも大きく変化する、そして3~4時間おきに授乳をするということが少なくとも半年ほど続くのが一般的で、その間お母さんはまとまった睡眠時間が確保できず、睡眠不足の状態になり、これも更にメンタルダウンに大きく関わります。
 
しかしそれどころではなく、例えばパートナーが育児を手伝ってくれない、実家や義理の実家にはヘルプを求めにくい、経済的な不安、このようなことがメンタル的にも大きな悪影響になるということも知られています。
 
ですから、産後お母さんを一人きりにしないことが本当に大切で、ヘルプを求めたい時にはそのヘルプをいつでもどこかに届けられるような仕組みを、社会でもっともっと準備していかなくてはいけないというのも実際のところです。
 
そしてどうやって子育てをしながら社会に復帰していくのか。
 
社会の復帰の中には仕事に戻るということもあると思います。
 
お仕事に戻りながら子育てをする。例えば保育園に預かってもらえるかどうか、こういったこともくじ引きだったり、色々な条件によって落とされたりということもあるでしょう。
 
更にはせっかく預かってもらえたとしても、ちょっと熱が出ただけですぐにお迎えが必要になったりすることもよくあることで、これが男性の皆さんにも一部お任せできるのであれば、こんなにありがたいことはないと感じます。


20代から癌の心配が


こうして子育てをしながらの中で、会社の健康診断を受けたら、子宮頚癌や異常を指摘される、乳癌の検査で異常いわれるなど、20代、30代、40代で癌という心配が有り得るのも女性の人生です。
 
男性の人生においては、癌という病気の心配が出てくるのは、多くが50~60歳過ぎといわれています。
 
そう考えると、恋をして結婚して妊娠して出産してなどと本当にライフイベントがたくさんあるような20代、30代、40代で命を脅かされるような病気にかかり得ること自体が男性とは違う経験といえると思います。
 
これ以外に例えば甲状腺の病気だったり、女性に起こりやすいような病気というものが男性との違いとして挙げられます。
 
これを性差と言いますが、もちろん男性は男性で気にしければならない病気があるので、それぞれが体を良い状態に維持する努力はこの時期から必要だということもいえます。
 

更年期

そしていよいよ大きな嵐がやってくるのが『更年期』です。
 
この更年期と呼ぶ時期には、汗やほてりというような外から見ても非常に分かり易いような体の変化以外に、落ち込みやすくなる、怒りっぽくなるなどメンタルの不調である心の変化、よく眠れないなど様々な悩みが出てきます。
 
この不調の種類は80種類とも言われ、色々な不調、不定愁訴とも言われてしまうような状況になり得るのがこの更年期という時期だったりします。
 
しかもこの更年期の始まりは、閉経を迎えない限り知ることができません。
 
そのため40代に入ったら、更年期に差し掛かっているのかもと思うことはまんざら間違いではないことも、是非パートナーの男性の皆さんには知っておいていただければと思います。
 
もちろん男性の皆さんにも更年期がやってくるということは最近知られるようになったかと思いますが、ただ女性のように女性ホルモンと呼んでいるエストロゲン、プロゲステロンの大きな変動というものは男性にはありません。
 
男性にも、緩やかに分泌量が減少していくという変化があるけれど、女性の場合はものすごく大きく変動するため、しんどい時期を迎える方が多くいらっしゃいます。
 
特に今メンタル的な鬱は、30年40年あるその後の人生を前向きに生きられるかどうかは、更年期という人生の曲がり角をうまく曲がれるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
 
この更年期を困っているパートナーの女性と二人三脚で乗り越える、やり過ごしていくでもいいと思います。
 
ちょっと大変そうだなと思ったら労わる言葉や何かできることを具体的に探す、こういったことが女性の立場からするとありがたいのかなと思う次第です。
 

閉経後


そして更年期以降は、今まで体にエストロゲン(女性ホルモン)があった40年間から、エストロゲンが無い状態で過ごす40年間になります。
 
生理がある年数と閉経後以降の生理が無く生きていく年数がほぼ同じとなった現代。
 
閉経後が意外と長いという捉え方もできると思います。
 
エストロゲンがなくなることによって目立つ変化としては、例えば、性交渉がつらいなどがあり得ます。
 
これは、パートナーの中でぜひお話をしていただきたいことでもあります。
 
性交渉というものが、妊娠出産のための生殖の行為から、コミュニケーションに変わっていくと思います。
 
となれば、例えば挿入自体をゴールとするのではなく、女性と男性がお互い前向きに楽しく取り組めるような性交渉に形を変えていくということも全然ありだと考えていただければなんて思う次第です。
 
その後、女性は生活習慣病と呼ばれる脂質異常症や血圧などの状態がだんだん目立ってくるようになり、更に骨がもろく折れやすくなります。
 
この骨がもろいという状態は、衝撃を受けなければ骨が折れることはないわけですが、転んだり衝撃を受けることで骨が折れてしまい、自分の足で歩けないなど生活の質を大きく下げる原因になり得ます。
 
こういったことがあり得ると思っておくと、自分の骨密度は今どれぐらいなのか興味が湧いたり、この先の人生を考える際の参考になるといった点でも、女性の体について知っておくということが一つおすすめとして皆さんの頭の隅に置いていただければと思っている次第です。
 
ということで、今日は男性の皆さんに知っておいてほしい女性の人生の目次というテーマでお話をしてみました。
 
更年期以降を随分省略した形にはなりますが、ざっとお話をしてみました。
 
いずれにしても男性の皆さんが女性について一緒に考えてくださる、女性側が男性のこれからについて一緒に考える。
 
これはお互いをいたわるというよりは、一緒に時間を過ごしていくどなたかに対して前向きな理解をする、非常に大切な取り組みだと思っています。
 
皆さんの近くにおられるどなたかに対して前向きな理解をする、それは女性同士でもしかりだと思います。
 
自分自身が経験しなかった不調について前向きに想像してみる必要もあるということも最後にお伝えできればと思います。


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