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同人誌の感想を送る目的と喜ばれる要素、気を付けるべき表現【二次創作・同人活動】

筆者は感想を書き、作家へ送る行為が苦ではない。むしろ好きである。
大抵の場合返信をいただき、その文面を見るに、喜んでいただいているように思う。
感想を送ったり、いただいたりを繰り返す中で、感想の書き方も徐々に体系化できてきた。
この記事では、感想を書いて作家へ送る上で何を目的とし、どのようなことに気を付けているのかをまとめてみた。

はじめに

同人歴と前提

活動歴は十数年ほど。主にアニメ・漫画・ゲームにおける二次創作BLカップリングを愛好し、同人誌を発行・頒布してきた。
いわゆる腐女子と呼ばれるカテゴリのオタクであり、女性向けジャンル界隈に属している。
よって、女性向けジャンルに身を置いた結果、培った所感であることは前提としていただきたい。


感想を書き、作家に送る目的

次の本を読ませてもらうため

感想によって執筆モチベーションを上げてもらうことこそが目的である。
ほとんど下心だ。
筆者が作家へ感想を書き、伝えたいと思う1番の理由がこれだ。
読んだ同人誌がとてもすばらしい内容であったなら、次の本も読みたいと思うのが同人女の心だろう。
「またあなたの本が読みたいです」と主張し、その理由や根拠にあたる部分が感想なのである。
そして、モチベーションを上げてもらうためには喜ばれる感想を書く必要がある。


喜ばれる要素とは

喜ばれやすい要素を大まかに5項目挙げる。

①適切な距離感
②作家のスタイルやこだわりに沿った言葉選び
③具体的な箇所の提示
④長文
⑤物語を広げる

①適切な距離感

まずこれは必須事項である。
その作家に面と向かって読み上げても失礼でない言葉遣いを想定するとよい。
だいたいは敬語混じりのですます調になる。苦手であればこれから勉強して身につけよう。日本語で生活する限り、一生モノのスキルだ。
絵文字についてはなくても通じる文章を心掛け、過剰な使用は控えたほうが好印象だろう。


②作家のスタイルやこだわりに沿った言葉選び

これが一番喜ばれるように感じる。
筆者もこういった部分を拾ってもらえるととても嬉しい。
つまりは、作家が欲しがっているのはどのような感想なのかを予想し、それに応える、ということだ。
「この部分を頑張った」「こういう解釈で描いている」などの作家が発信している情報を収集し、感想の文面に含める。「このように仰ってましたね」と引用するのも手だ。
具体的には、原稿中の進捗報告、新刊サンプルでの抜粋箇所、あとがきの文章、ツイートなどでの作品語り等を参考にするのがよい。

※感想を欲しがらない作家もいるにはいるので、そのあたりも見極める必要がある。


③具体的な箇所の提示

「全部」も当然嬉しい感想ではあるが、特に好きなフレーズ・台詞・コマ等について「このページのココ」と具体的に指定すると、さらによい。
あまり多過ぎても収拾がつかないので、単純な列挙なら5~6か所程度が無難だが、良いと思った理由を併せて記載出来るのなら、何箇所挙げてもよいと考える。
作家のこだわりを調査し知っていれば、そこを挙げることも可能となる。


④長文

全文で1000~1600字、感想部分だけで8割程度あれば、かなり読みごたえのある文章となる。
冒頭・結びの挨拶や台詞引用なども含め、原稿用紙では3.4枚、約12ツイート程度の長さだ。
ただ長いほどよいというわけでもない。読むのにも時間を取らせてしまうため、文字数は目安である。
2000字程度まで思うままに書いた後、校正で整理し、無駄を削り、言い回しを変えるなどで1600字に削るくらいがよい。

※「!」や「…」等の記号や絵文字で文字数をかさ増しするのはあまり推奨しないが、日頃の自身の振る舞いと照らし合わせて不自然にならない程度なら使ってよいと考える。


⑤物語を広げる

二次創作を嗜む者であれば、本を読むことで内容の続きや幕間が「見えて」くることもあるだろう。
そしてそれを、「そのくらいに妄想が搔き立てられるすばらしい内容でした」という主旨に落とし込むことで、立派な感想となる。
しかし、この要素はうっかりすると後述する「自分語り」に該当してしまうので、「見えた」ものについては端的にまとめるのが無難である。
読み手が自分の作品を読み、どのように感じたかを知りたいタイプの作家にはとても響く要素である。


気を付けるべき表現

ひととおり書き出すことが出来たら、何度も読み返して校正する。
読み手である作家にとって不快な表現を極力排除することで、喜ばれる感想により近付ける。
以下、心のままに文章を綴った場合に陥りやすい5項目を挙げる。

①自分語りや他の話題に偏る
②作家を神格化してしまう
③決めつけ表現
④質問などで答えを求めてしまう
⑤過度な誇張や嘘表現


①自分語りや他の話題に偏る

筆者もたまに、前置きでは「感想を送ります!」と表記しながら、これらの要素を多分に含むメッセージを受けることがある。
例としては、以下の通りである。

  • 感想を送ろうと思った経緯が長々と書かれ、本の感想については一言

  • カップリング解釈について、本と関係ない話が長々と書かれる

  • 本の感想に一言、以降共通の話題に終始

程度の問題ではあるが、自分語り等は全文の1割以下の文字数に要約して収めるのが無難。
感想を送る、と前置きするならば感想のみを主文とすべきである。
下手すると嫌われる。


②作家を神格化してしまう

神格化していてもよいが、本人には隠しておくべきだ。
何より、本の感想を送らんとする場において、作家本人の人格に言及する必要は全くないからだ。
インターネット上だけの関係、一方的にフォローしているだけの関係では、作家の人格の一面すら満足に知れていないといっても過言ではない。
そんな状態から「○○さんのことが大好きです」と伝えても、片想いからの迷惑な告白のようなもので、警戒されてしまう。
本やその作風についてはいくらでも褒めちぎってよいので、「○○さんのこのカップリングの作品が大好きです」と言い回しを変えて伝えよう。


③決めつけ表現

「○○の描写は××の意味ですね」等と書いてしまうと、作家の演出意図と異なった場合に角が立つ。
作家のスタイルやこだわりに沿う、の部分と少しばかり矛盾するが、明確に「○○の描写は××の意図」と発表されていない限りは、上記のような決定的な言い回しは避けたほうがよい。
「自分は○○の描写で××のように感じ、そこに感動した」等、あくまで「自分はこのように受け取った」の体裁にしておくのが無難である。


④質問などで答えを求めてしまう

返信の文章を考えるのにも時間と手間を要することを理解しておく必要がある。
作家の執筆時間を奪うことは目的に反する行為である。
質問したとしても1つまで、さらにYES/NOで答えられる程度の簡単なものにした方がよい。


⑤過度な誇張や嘘表現

誇張表現の「クソ」「えぐい」「無理」「やばい」等の使用を避ける。
文章の校正時に、特に目を光らせるべき部分である。
ネガティブな意味も持つ単語はなるべく避け、「すごく」「とても」等になるべく置き換える。
例えば、「クソ可愛い」を「とても可愛い」の意味で使っているとしても、クソとはうんこのことである。
「とても可愛い」で十分に意図は伝わるのだ。

「キャラの最低な一面の描写」がすばらしかったことについて触れたいのであれば、「最低」を使うことに問題はない。
その単語が文章のどの部分を修飾しているのか、注意を払って文章を作成・校正しよう。

また、「嘘表現をしない」とは、実際は泣いていないのに「感動して泣いた」と書いてはいけない、という意味だ。
素直に「感動した」とだけ書こう。本当に涙したのであれば、理由を添えて書いてもよい。
盛りすぎた表現はふとした拍子にボロが出て、過言や嘘だと悟られてしまう。
嘘をつく人の感想を素直に信じられるだろうか?
過度な誇張や嘘表現を使わずとも、丁寧で地道な文章で、感想を伝えることは可能である。


おわりに

冒頭で、読んだ本の感想を書き、作家へ送る行為がむしろ好きだと書いたが、次の本が読みたいという欲求と並行して、自らの感情を言語化しておきたい欲求があるからだと考えている。

すばらしい本を読みきったとき、「良かった」「最高」「泣けた」「萌えた」「何も言えねえ…」などなど、自然と口を突いて出る、熱い感情がある。
これらの一言だけでも、本来は十分に素敵な感想である。

しかし、ここからもう一歩踏み込んで、何故そう思ったのかを考えるようにしている。上記で言えば、「良かった」と「萌えた」の浮かぶ単語の違いは、一体自らの何に起因しているのか。
そういった部分を自分に問いかけ、考えることが楽しいと感じている。
だからこそ、感想を書くことが苦ではないのだろう。
それに、そのような「快感」の微妙な差異を言語化しておくことは、自身の執筆活動にも生きると考えている。筆者の制作する漫画原稿の第一段階はプロットだが、このプロットは、文章で考えるものだからだ。

思いのままに感想を書き連ねることは罪ではない。書けばよい。
必要なのは、それを他人に送るための、失礼のない文章に整える作業だ。
具体的な構成や作例については、追々、記事を作成していこうと思う。

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