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ロックダウンへの不安や学生寮から離れられないことへの不満:ケンブリッジ留学 番外編02

前回の記事では、2021年1月4日からイングランド全土を対象にした3度目のロックダウンについて簡単に紹介しました。

今回は、ロックダウンに対する心理的な不安について簡単に紹介します。

1. 「ロックダウンなら実家に戻りたい」学生の不安

前回は、ロックダウンに対する極端な行動の例としてアンチ・ロックダウン派による集会やそれに伴う逮捕劇を紹介しました。そういった行動をとる人は滅多にいないにしても、多くの人が心理的にストレス・不安を感じていることは事実です。

例えば、学生の出身国がイギリスなのか海外なのかを問わず、「しばらくロックダウンされて授業も全部オンラインになるなら、学生寮から離れて一旦実家/母国に旦戻りたい」と感じている人もいます。

しかし、戻りたくても気軽に戻れないという、少し特殊な事情があります。

2. 大学周辺に住むことが義務付けられている

背景に、冬休みや春休みを除いてケンブリッジ大学で授業が行われている期間は、市の中心に位置する大学教会(下記画像)から一定の距離内への居住が義務付けてられています。

画像1

Church of St Mary the Great
グレート・セント・メアリー教会
Photo by Jean-Christophe BENOIST)

例えば、学部生なら教会から半径3マイル(約5キロ)、大学院生なら半径6マイル(約9.5キロ)という具合です; 以下は公式サイトの記述。

よって、仮に電車で1時間ぐらいの場所(例:ロンドン)に住んでいたとしても、ケンブリッジの学生になったら引っ越して学生寮や大学近くのシェアハウスで生活をすることとなります。

もちろん、冬休みなど1ヶ月ほど大学の授業がない時はどこにいてもいいので、通常であれば国内の実家や母国に戻る学生も多くいます。

3. 大学からのアナウンスと学生の対応

さて、上記のようなルールがある中で1月6日に大学から次のような発表がありました。

「1月から3月までの授業は、すべてオンラインで提供されることになった。学生は今いる場所から移動せず、そのまま残っているように
'...we have taken the difficult decision to move all teaching and learning for undergraduate and postgraduate taught students online for the entirety of the Lent term...students should remain where they are currently staying.'

つまり、ロックダウン前の12月から始まった冬休みに合わせてに実家に戻っている学生はそのまま実家、実家等に移動せず学生寮に滞在している学生はそのまま学生寮でオンラインの授業を受ける、ということです。

そして、ややこしいのが寮費の扱いです。具体的には2パターンにわかれます。

1) 実家にいる学生:いつものように授業開始に合わせて寮に戻る必要が今回はなく、寮費の支払いが不要。授業はすべてオンライン

2) 既に寮に戻っている学生:引き続き残って寮費を払う必要がある。1-3月はオンライン講義。

当然ながら、2) の学生が「なぜすべてオンラインなのに、学生寮に住み続けて家賃を払わなければいけないのか?」と思うケースも出てきます。寮費はどのカレッジに所属するかで異なってきますが、ざっくり月10万ほどです。

4. 「実家に戻りたい」「違法では?」「大学に聞いてみよう」

上記のような背景を踏まえ、学生だけのグループチャット上では次のようなやりとりが行われています。

A学生:「今、実家に戻ると法律に違反するんだっけ?」

B学生:「政府のアナウンス見たけど、そこまでの強制力はないんじゃない?」

C学生:「いや、移動する理由がよっぽど明確じゃないと厳しいと思うよ。単に『戻りたい』だけだと難しいんじゃない?」

D学生:「うーん、まずは大学に相談してみた方がいんじゃないかな」

ロックダウンのストレスと不安を考えれば、一旦実家にもどって家族と一緒に過ごしたいという気持ちはとても自然なものだと思います。また、寮費を払わなくてよくなるというのは経済的にもメリットがあります。

ただ、前回の記事に書いたように1日5-6万人が感染している真っ只中で、さらに移動が制限されているロックダウン中です。学生に対して「一時的に戻ってもいいよ」とは大学側も言えない状況です。

仮に法的にOKだったとしても、数千人以上の学生がケンブリッジから一斉にイギリス各地に移動し始めると、ロックダウンの意味がなくなってしまいます。

5. まとめ

3度目のロックダウンということもあり、どうやって生活していけばいいかはそれぞれが十分把握できている状態です。また、大学に限って言えば授業が停止になるわけではなく、オンラインで継続提供されるので完全な休校に比べれば好ましいのは明らかです。

ただ、オンラインで授業が学べることもあり「ロックダウン中だからこそ、せめて家族と一緒に暮らしたい」と感じる学生もいます。

彼らに対して、どのようにストレスや不安解消のサポートをできるのかは、対応すべき大事な課題であると感じています。

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出版のお知らせ
3月5日に初の著書がSBクリエイティブより出版されます。タイトルも表紙もまだ仮のものですが単行本/Kindleバージョンともに予約受付中です。

執筆者:柏野尊徳
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