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TOEFL/IELTSでは測れない、大学院レベルの英語力:ケンブリッジ留学 開始前01

2020年10月からケンブリッジ大学へ留学することになりました。書類審査や面接、入学に必要な財務証明や語学力証明(IELTS)は完了しており、残すは学生ビザの取得のみです。

コロナのこともあるため、10月からイギリスで研究をスタートできるという100%の保証はないのですが、将来留学したい人や今まさに留学を考えている人に向けて、情報共有のために留学関連のエピソードを記録しておこうと思います。以下のマガジン上で集約していく予定です。

もし、何か知りたいことなどがあれば気軽にリクエストして下さい。例えば、エッセイなどの出願書類の準備や面接対応、研究計画の立て方や英語の勉強などなど。今日の記事では、留学先で受講するプログラムの概要とそのプログラムをケンブリッジ大学が提供している背景にについて簡単に紹介します。

イギリスやアメリカのトップ大学で修士号を取得したい人が対象のプログラム

この秋から履修するのは1年間のInternational Pre-Master's Programmeで、「英語圏の世界トップ大学で修士号を取得したい人が、進学先で必要とされる語学/研究スキルを磨くプログラム」となっています。

ここで言う英語圏のトップ大学とは、例えばイギリスならOxford / Cambridge / Imperial / UCL / LSE、アメリカならMIT / Stanford / Harvard / Caltech / UChicagoなどをイメージしてもらえればと思います。

コラム:世界大学ランキング THE, ARWU, QS
何をもってトップ大学とするのか一概には言えませんが、世界の様子を簡単に知るなら大学ランキングが参考になります。以下はメジャーな3つのリストです。
 Times Higher Education World University RankingsAcademic Ranking of World UniversitiesQS World University Rankings

留学生特有の課題を解決するために、2020年になって新しく提供をスタート

実はこのプログラム、2020年から提供が開始されることになった、ケンブリッジ大学として全く新しい取り組みになります。今年用意されているのは、ビジネス・マネジメント専攻エンジニアリング専攻の2種類で、僕はビジネス・マネジメント専攻です(以下詳細ページ)。

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このようなプログラムが新しく始まることになった背景には「英語圏の学生(ネイティブ)」と「そうでない地域から来る留学生(非ネイティブ)」の間にある2つのギャップが関係しています。

それは留学生特有の課題とも言えるもので、1つが大学院レベルの英語力と、もう1つが学習スタイルの違いです。今回の記事では1つ目のギャップについて取り上げます。

大学院レベルの英語力 vs 英語テストに必要な英語力

英語を母国語としない留学生の英語力測定はTOEFLやIELTSで行われます。ただ、それらのテストで高得点をとって無事に大学院に合格したはずの学生が、実際のコースでかなり苦労するケースもあります。

その理由を考える入口として、TOEFL/IELTSでのライティング・テストと、現地の大学で要求されるレポート課題を比較したいと思います。例えば、TOEFL/IELTSでは、約1時間の間に約500単語(日本語:約1,000字)の文章を書くセクションがあります。慣れないと難しい問題である一方、一定の型を覚えれば高得点が取れることもわかっています。

一方、1年を3つの学期に分けているケンブリッジ大学では、コースによりますが少なくとも最初と2つ目の学期末に3,000単語(日本語:約6,000字)のレポート提出、最後の学期では10,000単語(日本語:約2万字)の論文提出が必要なケースがあります。それなりの文章構造を想定して書く必要があり「TOEFL/IELTSにおける500単語の6倍の量だから、500単語に1時間かかることを考えれば、6倍の6時間あれば書ける」という類いのものではありません。

仮に日本語でアウトプットとしての文章想定すると、TOEFL/IELTSはフォントサイズ11ptでA4サイズの用紙半分を文章で埋めるイメージです(もしくはTwitterでのツイート7回分)。一方、大学院で提出が必要な期末レポートは、A4サイズの用紙3枚分になります。コース終了時の論文だと10枚は必要です(ツイートなら142回分!笑)。

これは単に文字数だけの比較だけですが、TOEFL/IELTSのように短い文章を書いて良い点をとることと、大学院でのレポートや論文のように長い文章を書いてそこで良い評価を得ることの間には、大きな隔たりがあると言えます。

なお、これはTOEFL/IELTSといった英語テストが機能してないというわけではなく、単にそれらのテストは「あまりに英語ができない学生を不合格にするための足切りツール」として利用されているということです。

修士レベルで要求されるアカデミックな語学スキル

上記の話はライティングの単語数のみに焦点を当てた例ですが、実際にはクラスでのディスカッションや研究発表など、英語でのスピーキングやプレゼンテーションといったスキルも含む高い語学力が求められます。

今回の僕の留学において度々お世話になったケンブリッジ大学のコース運営担当者は、多くの留学生を目の当たりにした上で次のように発言しています(意訳:原文)。

「英語のテストに合格しても、ついていくのが難しいと感じる留学生もいます。彼らは、修士レベルで要求されるアカデミックな語学スキルに驚いているのです」
- Shamiso Barnett, Head of Academic Centre Administration for International Pre-Masters, ケンブリッジ大学

もちろん、英語を母国語とするネイティブ・スピーカーにとっても難しい場面はあるでしょう。しかし、「大学院に入るまで、ずっと英語で勉強や研究をしてきたネイティブ」と「大学院に入ってから、初めて英語で本格的に学ぶノン・ネイティブ」を比較した場合、どうしても言語の運用/活用力において差が出てきます。

このように、大学院レベルに必要な英語力が身についていないことが、留学生ギャップとして存在します。英語が日常言語として使われていない国に住みながら、留学後に必要な最低限の英語力を身につけることは容易ではありません。

そして、英語力以外にも留学生特有の大きなギャップとして学習スタイルの違いが存在します。次回の記事では、2つ目の留学生ギャップを取り上げながら、これらの課題を解決しようとするケンブリッジ大学の新しいプログラムを改めて紹介します。

柏野尊徳
https://twitter.com/takanorikashino


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