話題作「オッペンハイマー」を見て
この作品は、私にとって、難解であった。
しかし、様々なことを考える機会になったのは
言うまでもない。
■難解の要因
まず、時代が時系列ではない。
白黒とカラーが入り混じっている。
(これは視点の違いで
オッペンハイマーの視点はカラー)
会話中心のストーリー展開で
字幕で追いかけるのに必死になってしまう。
登場人物が多く理解が追い付かない。
主題はあくまで「オッペンハイマー」で
「戦争」ではない。
■主題は何だろうか?
あくまで、オッペンハイマーという人物の
半生を描いたものに違いない。
作者の意図は、「反戦」であることは
なんとなくわかるが
そのメッセージ性は薄いと感じた。
作中のほとんどは公聴会とされる戦後、
米国の原子力委員から核開発推進を反対する
オッペンハイマーを公職追放される
やり取りが多い。
後にその名誉が回復されるという
展開である。
確かに、天才物理学者が
「大量破壊兵器は悪」だというメッセージもある。
ただ、「赤狩り」と呼ばれる反共産主義の
思考が極めて強かった冷戦時の米国の政治体制に
目が行きがちになった。
だから、赤狩りにあって失脚した天才科学者との
印象の方が強く映った。
■マンハッタン計画時点では?
マンハッタン計画とは、まさに原爆を
開発する計画である。
その中心人物に抜擢されたのが
オッペンハイマー。
元々は、ナチスドイツとの原爆開発競争に
勝つのが目的だった。
彼自身は、ユダヤ系ドイツ人であり
ユダヤ人の大虐殺については
思うところがあったのではないだろうか?
ヒットラーが自殺しドイツが降伏した
時点から彼の思考は徐々に変わりつつ
あったようだ。
■政治と科学のはざまで
原爆の実験に成功し、
2つの原爆が運び出される場面。
また、トルーマン大統領に
招待される場面。
大統領は、贖罪を感じている
オッペンハイマーに対し
「恨まれるのは開発者でなく政治家である私だ」
と慰めている場面が印象的。
彼は、科学者であり政治家ではない。
彼が、反核の立場に移行していったのは
原爆よりさらに破壊力を伴う水爆の開発。
これは、人類消滅の可能性があると
ホンキでかんじたのだろう。
また、物理学者でない政治家にはホントの怖さが
理解されていなかったのだろう。
■最先端技術と戦争
オッペンハイマーが科学者として
活躍したのは約80年前のこと。
当時の最先端技術、頭脳を駆使して
原爆が開発された。
これは今の世も変わらない。
大量破壊兵器だけではない。
無人爆撃機であったり
レーダーやソナーに探知されない
潜水艦の技術だったり。
ただ、そんな兵器の技術も
日常生活を利便にさせる
平和利用もなされている。
ドローンであったり、GPSを乗せた
ロケットだあったり、
インターネットの技術、
コンピューターの技術も
その基礎研究は戦争のため
だったものが多い。
日本に原爆が落とされ一般市民が
大虐殺されたという事実は変わらない。
そして、その原爆の開発に大きく
関わったオッペンハイマー。
一方で、世界の科学技術の進展に
関わったことも紛れもない事実。
この映画を見ていろいろ感じたが、
先端科学技術が平和的に活用されることを願う。
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