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1億円の低カロリー

 オークション会場はいつもにも増して賑わいを見せていた。さまざまな銀河からやってきたいろんな姿の異星人たちが、そこそこ広い会場をひしめき合いながら埋め尽くしていた。
「やあ、今日は珍しいものがたくさん出たな」
「地球人か、変わった連中だ」
 いわば遺品整理であった。環境汚染と感染症の凶悪化、格差と分断の拡大、結局止めることのできなかった核戦争によって、地球人たちはほとんどいなくなってしまったのだ。
「お次は私の故郷、日本です。列島はいまや三分の一を残して消滅していますが、いくつか灰の底から見つかっております」
 8枚目のスライドに映し出されたのは低カロリーを謳ったヘルシー食品のパッケージであった。
「ほんとに、よくわからん連中だ。分け与えるのではなく、奪い合い、次には集め過ぎたからと、競って捨て始める。ごく簡単な計算が、できないのだろうな」
 この星の悲劇の負の遺産に、と、そのくたびれたビニール袋には1億円の値がついた。

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