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【レオニード貴海】【掌編】under 3000

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3000字程度までの短めの拙作を集めました。どうぞよろしく。
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#短編小説

【掌編】Over the head

「ときには背伸びをしてみることだ。そして気に食わない誰かに、その情けない姿を見られて笑わ…

【掌編】Lost Friday under the rain

 雨に濡れた飛べない鳥みたいにして、マミはじっとこちらを見ていた。惨めな風采。  見てい…

【掌編】羊の群れ

 実に羊的な羊だった。あるいは概念そのもの、という気がした。この非現実的な光景がそうした…

【掌編】ナイト・カフェ

 静かな雨の降る夜だった。僕は道端にうずくまっていた少女に傘を差し出し、昔なじみのマスタ…

【掌編】凡人の流儀

 ひっきりなしに連絡がある。  俺、こんなに友達居たんだあ、なんて、嘘、嘘。  有名になる…

【掌編】ネクサス

「やりたいことがあったんです、たくさんね」  彼は生気のない目を横にして、ベッドの隅と壁…

【掌編】コンストラクション

 どこからか聞こえてくるチャイムの音で、正午の訪れを知る。 「休憩」  残響が消えてから少しして、ボソリと声が聞こえる。首に巻いたタオルをほどいて、岸部は顔の汗を拭った。俺と北田はういっす、とやや力を込めた声で返事をする。岸部に手で促され先に足場を降りる。かんかんと鳴る金属の振動が昼間の静かな街に響く。俺たちは下まで降りてヘルメットを脱ぎ、ツールサックを外してむき出しのコンクリートに腰を下ろす。紺色のニッカポッカには乾いた木くずと石膏ボードの白い粉がこびりついている。俺はコン

【掌編】帰省

 実家に戻るのは二年ぶりだ。パンデミック渦中というのもあり、妻と娘は名古屋の家に残してき…

【掌編】scapegoat

 午前七時五十分、独房のドアが開く。 「今日はいい天気だね」  男は言った。外では梅雨の雨…

【掌編】精神科医

 心配なんですよ、と男は言った。 「エレベーターが故障しているかも知れないでしょう」  隣…

【掌編】美しき腐敗

   ライオネル長官は冷凍された551の豚まんが上から覗き込まれたときのような顔を作って…

【掌編】その通りでしょ?

 母の家は落ちつく。  父が購入したのだから父の家、と言うべきなのかも知れないが、もうこ…

【掌編】シャット・アウト

「別れよう」  僕がそう言ったときのシズルの反応はおおよそ期待通りのものだった。何を言わ…

【掌編】電車に乗って

 ガタンゴトン、ガタンゴトン。  車両がかすかに傾き、揺れている。車輪がレールの継目を渡るたび、ガタンゴトンと音がする。ガタンゴトン、ガタンゴトン。  向かいのシートに座っている人たちはみな一様にうつむき、スマートフォンの画面を眺めている。ただでさえ無表情なところにマスクをしているので、何を考えているのかはわからない。その光景はどこか異様な感じがするが、自分もまた、その異様を構成している要素の一つでもある。無表情&マスク。ガタンゴトン、ガタンゴトン。 ――この人たちはなにを