マガジンのカバー画像

【レオニード貴海】【掌編】under 3000

15
3000字程度までの短めの拙作を集めました。どうぞよろしく。
運営しているクリエイター

#掌編

【掌編】雨上がりのカメレオン

 幻覚を見ているのかと思った。  車窓には呆けた顔をした自分の姿が写っている。  『俺』は…

【掌編】Over the head

「ときには背伸びをしてみることだ。そして気に食わない誰かに、その情けない姿を見られて笑わ…

【掌編】Lost Friday under the rain

 雨に濡れた飛べない鳥みたいにして、マミはじっとこちらを見ていた。惨めな風采。  見てい…

【掌編】羊の群れ

 実に羊的な羊だった。あるいは概念そのもの、という気がした。この非現実的な光景がそうした…

【掌編】ナイト・カフェ

 静かな雨の降る夜だった。僕は道端にうずくまっていた少女に傘を差し出し、昔なじみのマスタ…

【掌編】凡人の流儀

 ひっきりなしに連絡がある。  俺、こんなに友達居たんだあ、なんて、嘘、嘘。  有名になる…

【掌編】ネクサス

「やりたいことがあったんです、たくさんね」  彼は生気のない目を横にして、ベッドの隅と壁の間の、何でもない空間を見やりながら言った。窓から差す陽光が、漂うほこりや糸くずをきらきらと照らした。 「でもそれらは、本当に僕がやりたいことだったのかどうか、今となってはよくわからないんです」  僕は静かに何度か頷いた。彼は音なく、わずかに首を回して僕の手の指のあたりを見た。 「終わってみなければわからない。それはその通りかもしれないけど、終わったときには、僕はもうここにはいない。僕には

【掌編】コンストラクション

 どこからか聞こえてくるチャイムの音で、正午の訪れを知る。 「休憩」  残響が消えてから少…

【掌編】帰省

 実家に戻るのは二年ぶりだ。パンデミック渦中というのもあり、妻と娘は名古屋の家に残してき…

【掌編】scapegoat

 午前七時五十分、独房のドアが開く。 「今日はいい天気だね」  男は言った。外では梅雨の雨…

【掌編】精神科医

 心配なんですよ、と男は言った。 「エレベーターが故障しているかも知れないでしょう」  隣…

【掌編】美しき腐敗

   ライオネル長官は冷凍された551の豚まんが上から覗き込まれたときのような顔を作って…

【掌編】シャット・アウト

「別れよう」  僕がそう言ったときのシズルの反応はおおよそ期待通りのものだった。何を言わ…

【掌編】電車に乗って

 ガタンゴトン、ガタンゴトン。  車両がかすかに傾き、揺れている。車輪がレールの継目を渡るたび、ガタンゴトンと音がする。ガタンゴトン、ガタンゴトン。  向かいのシートに座っている人たちはみな一様にうつむき、スマートフォンの画面を眺めている。ただでさえ無表情なところにマスクをしているので、何を考えているのかはわからない。その光景はどこか異様な感じがするが、自分もまた、その異様を構成している要素の一つでもある。無表情&マスク。ガタンゴトン、ガタンゴトン。 ――この人たちはなにを