ミニ図書館のある家で、女二人まったりと。
休日の午後、素敵な本棚のある友人宅を訪問した。大々的なリフォームで生まれ変わった、女性編集者宅の見学だ。
玄関ドアを開けた途端、壁一面の本棚に目を奪われた。
リビングへ続く廊下の両壁が、造り付けの本棚になっている。リーディングライトと椅子も設置され、私設ミニ図書館といったところ。
ご満悦の友人、『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』のキャリーの部屋をお手本にしたと言う。
「NYのアパートメントってわけにはいかないけど、家の中に図書館みたいなコーナーが欲しかったんだよね」
お洒落な海外ドラマを参考にするとは、お目が高い。やられたなと思いながらも、『SATC』のDVDを見返す楽しみが出てきた。
部屋のリフォームは、空間を広く見せる工夫が随所に施されていた。見どころはいっぱいだったが、私たちが落ち着いた場所はやっぱりミニ図書館前。
並んだ本は雑然としていたが、手に取りたくなるレイアウト。面陳列の美術本が一層目を引いた。
本と一緒に使い込んだノートがあった。読書メモ、読書日記の類いである。聞けば小学生時代からの感想ノートだとか。捨てずにきちんと残しているとは驚いた。
ページをめくると『南総里見八犬伝』『武器よさらば』『車輪の下』と続いている。背伸び女子小学生の登竜門だ。
私も読んだ、よくわからなかったと、お互いの肩をはたき合いながら大笑い。
「手書き、いいでしょ。当時の気分まで蘇るから」。達筆、丸文字、ただの落書き。
このミニ図書館には、彼女の興味と汗と執念が詰まっている。
私は他人と自分を比べない質なので、人を羨むことはほとんどない。でも此処だけは、心底、羨ましかった。
こんな空間、私も欲しい。愛があるよ。家に帰るのが楽しみになる。何度「いいな」と呟いただろう。
「ねえ、今度うちの本棚も見においでよ」と私。
「楽しそうだね。さては古本市でも行ってきたな」
古本市は行ってないけど、倉庫部屋で発掘した本の話しをしたくなった。
素敵なミニ図書館ハウスから帰還して、ぼんやり自分の本棚を見回した。これはこれで、まずまずだ。本が「おかえり」と言っている。
こんなに好きな本棚なのに、普段は誰にも見せないエリア。今日の彼女のように、本の話しができる相手はまれなのだ。
本棚は趣味嗜好だけでなく、教養の幅までさらけ出すようでどこか恐い。
されど自分にとっての小宇宙。
そっと守りたいと思う反面、見せて話して、楽しみたい。
内なる知の楽しみは、もっともっと外に出たがっている。
SATCは吹替版がオススメ!
<サムネ画像の使用>
Michael Schwarzenberger(Pixabay)
<文中写真の使用>
Photo by Samuel Regan-Asante on Unsplash
イラストACよりクニコ925さんのイラスト