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【ハワイのスタートアップ】強くて、優しいスタートアップが持続可能な社会に必要な理由。

ESGフォーカスの商品 Kiki Milk 

みなさんお久しぶりです。また間が空いてしまいすいません。涙
今回は久しぶりにハワイのスタートアップでESGの観点から創立され、かつCPGのスタートアップをご紹介したいと思います。
‥‥。
さっそくアルファベットの横文字にやられてしまい、もう読むのが嫌になってしまったそこのあなた。諦めないでください。このブログはスタートアップ初心者にもわかりやすいブログを目指しています。ESGとはEnvironemtal, Social and Governanceの省略語です。日本でも最近SDGやサステイナビリティ(持続可能性)がよくメディアなどで、とりあげられますが、少しそれと似たコンセプトで、環境問題(水質汚染や、気候変動)や社会問題(人種差別や貧困)の解決に特化したアイディアやビジネス、スタートアップのことを「ESGフォーカスの」という風によく表現します。GのGovernanceのほうは「企業統治・管理」という意味があって、少し複雑な意味があるので、もしご興味あるかたは野村アセットマネージメントさんの簡単解説のページをよかったら読んでみたください。

CPGとはConsumer Packaged Productsの省略で、日本語の直訳は「一般消費財」になります。消費される財産。つまり日用品や食料品などのみなさんが日常で「消費」するほぼすべてのもの、例えば、牛乳やお菓子などの加工食品や、コップやお皿、お掃除道具から、旅行にいった際に買うおみやげなんかもこのカテゴリーに入ります。
今回は、ESG問題、特に「環境問題」の解決に特化して、且つ、たくさんの人が消費する「ミルク」業界に革命を起こすKiki Milkの生産・販売を行う、ハワイ発のスタートアップ PlantBabyのご紹介をしたいと思います。

PlantBabyとは

PlantBaby社は、2020年に設立されたとても若いスタートアップです。前述のとおり、ミルク、つまり「牛乳」を作って販売しています。でも他の牛乳屋さんとの違いは、乳は乳でも、牛の乳ではなく、植物ベースのミルクを生産・販売しているスタートアップです。
そして、各年齢ごとにターゲットを分けて、乳幼児期から成人まで、その年齢に必要なタンパク質、その他の栄養素を含んだミルクを幅広く、提供するというのも彼らの独特のミッションです。今は、まだ子供向けのミルクしか出しておりませんが、将来的には、植物性の赤ちゃん用のミルクを開発・販売予定で動いているスタートアップでもあります。 さらっと書いたけど、「子供用ミルク」というのも、アメリカではなかなかなく、子供が必要な栄養を豊富に含んだミルクというだけで、かなりユニークな商品でもあります。実は、このスタートアップ、アメリカ本土からハワイのカウアイ島に引っ越した、ファウンダーのアレックスとローレンさんのお子さんが赤ちゃんのときに、牛乳のアレルギーがあり、動物性の粉ミルクを飲ますのに抵抗のあったおふたりが、植物性の粉ミルクを探したところ、なかなか信用のある商品が見つからず、このスタートアップ創設のきっかけになったというストーリもあります。
もうひとつのユニークな点は、オーガニックでアレルギーフリーであるということです。日本でもナッツや牛乳など、結構アレルギーに苦しんでいる大人も子供も多くいます。アメリカでもそれは例外ではなく、逆に人種のるつぼで多種多様な背景をもつアメリカに住む、アレルギーもちのひとは食料品の取捨選択がかなりシビアになります。そんなアレルギー持ちのひとにも、ミルクをおいしく、楽しく飲んで欲しい。そんなミッションを基につくられたスタートアップ。それがPlantBabyなのです。

Kikiミルクのパッケージ。左がオリジナル、右がチョコレート

なんで環境に優しいミルクなのか?

さて、「子供に優しい」はここまでの説明でわかっていただけたと思いますが、なぜこの植物性のミルクをつくるPlantBabyが、環境にも優しいのでしょうか?
それは、本来、「普通」に飲まれている牛乳が牛の乳であるポイントになります。
そう。もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、牛のゲップで気候変動に大きく影響する要因のひとつだと考えられているのです。

温暖化の原因としてもうひとつ疑う余地がないとされているのが牛のげっぷです。世界には15億頭の牛がいて、1分に1回げっぷ。吐き出されるメタンは強力で、世界で排出される温室効果ガスの4%を占めます。

日刊スポーツ:世界に15億頭…牛のげっぷは地球温暖化の促進要因、世界が行う対策とは
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202111080000142.html

牛って人間の生活に欠かせないものになってきていたんです。日本人が100歳以上生きるようになったのは、戦後に日本人が牛肉などの動物性タンパク質をたくさん摂るようになったからだそうです。動物性のタンパク質の中で牛肉はとってもおいしいし、牛乳も、タンパク質の他にカルシウムなどの栄養要素がバランスよく含まれる各種栄養素がバランス良く含まれた準完全栄養食品です。そんな人間の健康に大貢献している牛様ですが、残念ながら、わたしたちの母なる地球にはその「ゲップ」が車の排気ガスに次いで、悪影響ということがわかってきたらしいのです。
最近では、環境問題の活動家の方々で、ビーガンやペスカトリアン(海鮮物や野菜しか食べない人)が多くなったのはこの牛のゲップ問題を懸念した人たちが自ら、肉などを動物性たんぱく質の摂取をやめていることもひとつの起因として影響しています。
また、こういった消費者行動の変化から、 "Alternative Protein"、日本語だと「代替タンパク質」の加工食品をつくるImpossible Burgerや、PlantBabyと同じく、1990年代にスウェーデンの大学発でできた植物性のオーツミルクを生産・販売しているOatlyがなどの企業が大きく成長・上場などもしているのも事実です。世界中のひとたちが環境問題・気候変動にとても敏感になり、ただ「安くて・おいしい」だけではなく、「いかに地球に影響があるか」という新たなる指標で、商品やサービスを取捨・選択しており、その商品を生産する企業や生産者にも、「地球に優しい」ビジネスをする責任があると思われているのです。

Nasdaqのこちらのリソースによると、"ミレニアル世代(1980年から2000年生まれた世代)の75%は環境に配慮した製品を好むように購買習慣を変えるほど環境に配慮している。” や "ミレニアル世代とZ世代(1995-2010年に生まれた世代)は、気候変動問題への関与の高さが際立っている” などの調査報告があります。こういったデータから、若い世代ほど気候変動や環境問題を重要視していることがみられます。
ちなみに余談ですが、前述のOatlyは、2021年にあまり環境に良くないことをしているといわれているBlackStoneグループやアマゾンに株を売り、相当な批判を買い、非売運動などでダメージ大を受けております‥。

How Millennials and Gen Z Are Driving Growth Behind ESG
https://www.nasdaq.com/articles/how-millennials-and-gen-z-are-driving-growth-behind-esg

PlantBabyは、米国の人たちの栄養やアレルギーの観点からではなく、メタンガスを出す牛のミルクを使用しないことや、実は、たくさんの水を使うため、育てるのがあまり環境的によくないと言われているアーモンドミルクなども使用せず、地球にやさしい植物性ミルクを作っていることも、彼らをESGスタートアップとして重要なポジションに置いている起因であると言えます。

スタートアップとしての可能性

さて、ここまでPlantBabyがなぜ「子供と地球に優しい」スタートアップなのか?という説明を取り巻く環境と一緒に説明してきましたが、ここからは、スタートアップビジネスとしての彼らの可能性に関して、私なりの見解をお話ししていきたいと思います。
①成長市場産業である
スタートアップの査定をするときに、よく見られるポイントが"Growth"です。直訳で成長。要するにいかに今後成長する見込みがあるか?というのが大事なポイントになります。そこで大事なのが”市場の動向”です。どんなにユニークなサービスやプロダクトがあっても、それを求める消費者が少なかったり、減っているのではそのスタートアップの成長は見込めません。その点、前述の気候変動などに敏感若い世代や、アレルギーのあるひとたちに、この植物性乳製品や、植物性タンパク質のニーズは米国を含め、EUなどでもうなぎのぼりに成長中であり、今後も伸びることが予測されています。

【引用】Food Business News 
2022年の444億ドルから,2030年までに1619億ドルまで伸びる予想がされている。

また「栄養バランスに特化したアレルギーフリーの乳製品」というポイントも大事なポイントです。実はアメリカでは、子供の栄養バランスが悪く、過体重の自動が41.86%もいるという深刻な問題を抱えています。そんな中で牛乳は少量でもほぼ、すべての栄養がとれる準完全栄養食であり、安価で、子供にとっては理想の栄養摂取方法であります。が、先にも述べた通り、アレルギーの問題が深刻です。実際アメリカでは牛乳アレルギーの人が人口の約1.8%を占めており、Lactose intolerance (乳糖不耐症)といわれる、乳糖を消化できず、腹痛になってしまう20歳までの人口が約3000万人以上いるそうです。そんな、子供の栄養バランスやアレルギーを気にする親が増えるアメリカでは、PlantBabyのような植物性ミルクの市場はもっとのびると言われています。
②ファウンダーのバックグランド
スタートアップの評価で、もっとも大事なこと。それは創業者を含めたチームがどんな人たちで形成されているかです。その点このPlantBabyの共同創業者であるアレックスさんは過去にもスタートアップをイグジットさせた経験のある連続起業家です。
※イグジットについて知りたい方はしたのブログの中の「スタートアップのゴールとは?」を見てみてください。

なぜ、過去にスタートアップを成功させた連続起業家が強いかというと、どうやってスタートアップを資金調達をして、成長させて、ゴールであるイグジットまでもっていくかビジョンを描くことを経験しているからです。アレックスさんは以前、ネットワーク関係のスタートアップをたちあげ、あの通信キャリアのコングロマリットであるVerizonに売却しています。業界は違いますが、その経験を活かし、シードというスタートアップの初期ステージにおいて400万ドルの資金調達を行い、創立たった2年で、9人のエキスパートを雇用しています。

PlantBabyの現在のチーム。アレックスさんの他にもCPG系で経験の深いR&Dやマーケッティング担当がいる。

③長期的な戦略
スタートアップはよく陥りがちな失敗例として、「目の前の事業運営にとらわれすぎて、成長が止まってしまう」ということがあります。成長がとまってしまった事業はもはやスタートアップではなく、中小企業です。中小企業が悪いわけではありませんが、投資家はスタートアップに爆発的な成長を期待して投資します。なので成長をしてイグジット(IPOや売却)をして、大きなリターンをもらわないと投資する意味がないのです。例えていうならば、スタートアップは水道管建設であり、中小企業はバケツリレーです。「水を運ぶ」という事業だけであれば、人を使って、少しづづ水を運べば目的を達成でいます。それに対して、スタートアップとは、「水道管を通せば、簡単に人員も少なく、広い範囲で水が供給できて、そこに大きな利益も生まれる」というアイディアや成長戦略があり、そこに先行投資をつのります。投資家は、そこにハイリスクだけども、莫大なリターンを期待して資金を投資します。なのに、いつまでもバケツで水を運んで、成長を感じられなければ投資の意味がないわけです。
そういった意味で、PlantBabyは真のスタートアップです。成長をつねに意識した長期戦略で、たった2年で爆発的な成長をとげています。CPG商品というのは、立ち上げ自体は簡単ですが、大企業が流通を抑えていたりして、競争も激しいのに、市場拡大が非常に難しいビジネスです。そこをPlantBabyは、CPGの一番の壁である、流通をスキップするために、冷蔵の必要のないプロダクトを開発し、自社のウェブサイトでD2C(消費者にそのまま商品をとどけるオンラインショッピング)でローンチしました。その後、Amazonやオーガニック専門の日用品オンラインサイトThrive marketなどで販売数を増やし、オンラインでの販売を確保したあとに、無理のない範囲で店舗販売も展開。現在はカリフォルニアで9店舗のお店で商品を展開をして、いまでは約100万ドルのセールスを上げています。また、前述で「将来的には粉ミルクの製造・販売も予定している」と書きましたが、こちらも長期戦略で、まずはFDA(アメリカの食料品規定)が通りやすい、子供向け(一般向け)に商品からローンチ。そこでサイズやフレーバーの展開で事業拡大したのちに、その資金とブランド力でFDA承認が難しい新生児向けの粉ミルク開発などに拡大する計画です。
こういった成長を意識した、ステージごとの戦略も、アレックスさんのような経験ある連続起業家や、知見のあるチームがいる賜物だとも言えます。

今後のKiki Milkの展開予定の商品たち。右上の32ozはすでにローンチ済み。戦略を決めれば実行も早いのがPlantBabyの強みである。

これからのPlantBaby

PlantBabyに、これからのビジョンを聞いてみました。まずは既存のプロダクトであるKiki Milkのフレーバーに、マカデミアンナッツ、無糖などの新しいフレーバーを増やしていくようです。アレルギーフリーということで、ナッツはいままで使ってこなかったそうですが、ハワイのブランドということでたくさんの要望があり、増やすことを決めたそうです。また子供の延長線上で、大人のファンもたくさん増え、大人向けのフレーバーということで無糖とファミリーサイズの32ozも発売したそうです。
また今後は、オンラインだけでなく、収集した資金も活用して、流通にのせて店舗展開を行っていくそうです。こうした現行の売れ筋商品は、流通に関してもオンラインで一定のファンを獲得してからの展開ということで、かなり戦略的にスタートアップを運営していることがわかると思います。

さいごに

正直に言います。筆者は、お肉大好きですし、アレルギーもないので、牛乳もコーヒーにいれてたっぷり飲みます。環境保護に関しても、エコバックを使う、できるだけプラスティッは買わず、自分の水筒を持ち歩くなどのできる努力はしますが、食生活をガラッと変えたり、廃棄ガスを出す車にも残念ながら乗っています。
また、気候変動に関しては、牛のゲップ説の否定や、そもそも気候変動などないといういう人たちがいるのも知っています。

ただ確実にわかっているのは、いま世界ではたくさんの人たちが、気候変動や環境問題に敏感になり、できるだけ、従来の動物性たんぱく質に頼らずに、他のオプションを模索していて、その市場が大きくなってきているという事実です。
大きくなる市場にはスタートアップにチャンスがあります。消費者行動の機微を理解し、迅速にそのニーズにビジネスに応用していく強みがあります。
PlantBabyには、そのポテンシャルが感じられる要素がたくさんあると思います。

ぜひ、このまま成長を続けていって、ハワイ発のESG・CPGスタートアップとして成功してほしい筆者であります。


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