夏休4_無事に財布をスられました

 アテネの中心地、パルテノン神殿を望む広場において、財布をスられた。

 広場には出店が出ていて、観光や夕食のための観光客でごった返していた。私たちはさらっと観光した後、夕食を食べるお店を探して、観光客で一杯の路地を歩いていた。そんなとき、前から8歳か9歳くらいの少年が花束を片手に歩いてきて、私に対しピンク色の花束を押しつけながら、何事かを話しだした。その後ろには姉と思われる10歳くらいの少女がおり、やはり1輪か2輪の花を持ち、私に対して何事かを言い始めた。押し売りであると判断した私は、彼らの言うことは聞かず、やんわりと方向を変えた。

 すると、意外とあっけなく彼らはいなくなり、そして「その路地からも消えていった」。数瞬後、なぜか身につけていたボディバッグの口が開いていることに気がつく。はっとして中身を確認したときには何もかも終わっていて、財布がなくなっていた。

 財布自体は今回の旅行用に買った300円のもの。中身は現金約18,000円分のユーロとクレジットカード1枚。ホテルに戻り、急いでカードは止めたものの、現金が戻ることはないだろう。

 正直なところ、完全に油断していた。観光がうまくいき、気がゆるんだところで、しかも相手は子ども。物乞いと言うと表現は悪いが、相手の同情心を買ってお金を集めているのだと思った。しかし実態はそんな生易しいものではなく、明確な意図を持って相手の財産を不当に得ようとしていた。そして、そのような行動に対し、私の心身はまったく対応できなかった。
 
 また、相手もプロだった。弟が体をバッグに近づけた段階で、後ろの姉が声を発し、注意を引く。そのうちに弟がバッグから財布をとる。それはルーティンとしてあり、おそらくそれで生計を立てているのだろう。

 ギリシャの経済状況など、思うところはある。しかし、一旅行者の身からすれば、ギリシャに旅行する日本人に対するアドバイスはこうなってしまった。

 「相手が子どもでも油断するな。彼ら彼女らは、盗人かもしれない。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?