ビートルズ "Yesterday"、私が感じ取った曲の印象
ビートルズの楽曲ひとつひとつについて、私が感じたことをベースに、8項目の音楽的視点からポイント評価したコンテンツを公開しています。最後のアルバム LET IT BE から順に過去へさかのぼって、1曲づつ投稿しています。
第 128回目、今日の楽曲は...
アルバム HELP! B面 6曲目 "Yesterday"
サウンド:★★★
メロディ:★★☆
リズム :★☆
アレンジ:★★☆
第一印象:★★★
スルメ度:★★☆
独創性 :★★★
演奏性 :★★★★
<★ ... 1点 ☆ ... 0.5点、5点満点、各項目の解説は最後にあり>
ポールの代表作。言わずと知れた、超スタンダード・ナンバー。アコースティック・ギターの弾き語りスタイルは、本邦初公開である。しかも、Aメロの 2回目 "Suddenly I'm not half the man..." からは、弦楽四重奏も入り今までの楽曲スタイルとは、完全に異なる方向性を持った曲である。
ポール以外の3人のメンバーは、レコーディングには参加しておらず、外部ミュージシャンの 4人(バイオリン 2人、ビオラ、チェロ)が参加している。弦楽器を入れるアイディアは、もともとポールのアイディアだったということだが、その意図を巧みにくみ取って華麗なストリングス・アレンジを組み立てたのは、ジョージ・マーティンである。
キーは Fメジャー。ただし、アコギ弾き語りで演奏する場合、アコギの弦をすべて 1音下げて、Gメジャーのフォームで弾いている。ここでは Fメジャーで話を進める。Aメロ "Yesterday all my troubles seemed... " からは、F→Em→A7→Dm7→Bb→C→F→Dm7→G7→Bb→F という進行となっている。
このコード自体はありふれているが、コード進行が2拍で変わったり、最後の Fコードの直前が C ではなく Bb になっているというところ(いわゆるアーメン進行)など、なかなか緻密に計算されたコードかと思う。ちなみに Aメロ部分は 7小節という中途半端な長さではあるが、そんなことはまず気が付かないほど、きわめて自然な流れとなっていると思う。
サビ "Why she had to go..." からは、Asus4→A7→Dm→C→Bb→Dm→Gm6→C7→F... という進行で、最初の Asus4コードの響きが切ない。そして A7 に行くのだが、これは次の Dm のドミナントとして捉えるころができ、Dmからは 1拍ごとにコード・チェンジするという、ボーカル・ラインと相まってサビとしての高揚感が存分に表現されているアレンジかと思う。
ポールのソロ・ナンバーに加え、斬新な弦楽四重奏アレンジ。どれをとってもロック・バンドのビートルズにとって新しい試みだったであろう。そして、初めてこの曲を聞いた当時の人たちは、それまでビートルズに対して抱いていた印象と、かなり変わった印象を持ったに違いない。そういう意味で、この曲はビートルズにとって大きな転換点となった曲であったことは間違いないだろう。