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溜息の材料

先の大戦、先の大戦と
決り文句のように言うけれど
自分の記憶に新しいだけ
後から来た者にとっては
溜息の材料になるばかり

当事者は早晩いなくなる
そのことばが意味するものも
新たな諍いに受け継がれる
古より繰り返されてきた
人間社会の基本的な構造

命を賭してまで護ったものが
見るも無残な姿になっても
"先の大戦"ということばが
上手く覆い隠してくれる

何とも陳腐な表現
記憶に新しいというだけで
悼みも伝わらなければ
戒めにすらなってない

この世界にかつて
戦場でなかった場所など
ひとつも無いというのに
いくら聞かされても
溜息の材料になるばかり




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