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うたの日の短歌

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うたの日で注目した短歌について書いた評を載せていきます。(※ 歌の作者の許可を頂いています。)
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#バラの短歌

しなやかな生命線を背に添えて水筒は子の旅を見守る/ナイコ

2022年11月10日(木)のうたの日13時部屋の「自由詠」で首席(薔薇)を取った短歌。 「しなや…

久方の朝日を受くる海鳥のかな文字のごと空へひらけり/ぷくぷく

2022年11月3日(木)のうたの日19時部屋の題「題『文』を文語で」で首席(薔薇)を取った短歌…

遺されし小さき文机 母の日に我の描きし花の絵のあり/安原健一郎

※ 小=ち、描=えが 2022年11月3日(木)のうたの日15時部屋の題「題『文』を文語で」で首…

千羽鶴千へと至るはじまりの一羽の深き谷折りの線/文月郁葉

2022年6月17日(金)うたの日3000日記念の題「『せん』を三回詠み込んで」で首席(薔薇)を取…

夏服の子らアナベルの群生のやうに屯す梅雨晴れの駅/ともえ夕夏

2022年6月3日(金)のうたの日17時部屋の題「屯」でバラを取った短歌。 地域にもよるだろうが…

臥す母に朝餉の匙を運びつつ知らず左の手を重ねをり/ふにふにヤンマー

2022年6月3日(金)のうたの日11時部屋の題「左」でバラを取った短歌。 何らかの理由で臥して…

伸びすぎて危険だという街路樹が伐り倒される前日は雨/小倉るい

2022年5月30日(月)のうたの日15時部屋の題「危険」でバラを取った短歌。 街路樹が伸びすぎて危険な場合というのは、電線に掛かっているとか交通標識や信号を隠しているとかいったことが考えられる。自治会や行政の判断で街路樹が伐り倒されることが決まる。周辺の住民には、回覧などで伐り倒される日が知らされる。 その前日は雨だったという。「前日は」ということは、当日は晴れかくもりで雨は降らなかったのだろう。 雨は、植物にとって天からの恵みである。葉や枝や幹、そして土に雨が当たり

これもまた方言だろう故郷とはちがう響きの波音を聴く/小泉キオ

2022年5月24日(火)のうたの日15時部屋の題「方」でバラを取った短歌。 二通りの読みができ…

白地図で国を覚えて境界の脆さは知らずにいた地理の時間/飛和

2022年5月23日(月)のうたの日15時部屋の題「理」でバラを取った短歌。 高校で履修した地理…

まっさらな足袋のあしうら輝けり新入部員の跪坐の一列/山口綴り

2022年5月7日(土)のうたの日19時部屋の題「昨日の題からどれでも」(「袋」)でバラを取った…

幼いに扌がついた字のごとく、拗ねるぼくには撫でる手がいる/三冬つくし

2022年4月7日(木)のうたの日15時部屋の題「拗」でバラを取った短歌。 「拗」という漢字を分…

タラの芽をさっと揚げればほろほろと冬の苦さが淡くほどける/小川萌

2022年4月6日(水)のうたの日9時部屋の題「芽」でバラを取った短歌。 たらの芽は春の季語で…

コーヒーの黒い鏡に現れる疲れた顔にミルクを垂らす/みよおぶ

2022年4月4日(月)のうたの日9時部屋の題「現」でバラを取った短歌。 コーヒーは、インスタ…

それぞれの発車のベルとして響く廃校前の最後のチャイム/柿本なごみ

2022年4月1日(金)の15時部屋の題「発」でバラを取った短歌。 この歌に人を明示する言葉はない。「それぞれの」がそれに代わる言葉だ。 廃校になる学校の児童もしくは生徒、教職員、保護者、OBOG、地域住民などが「それぞれ」にあたる。 「最後のチャイム」は、閉校の式典の終了を告げるものだろうか。 廃校になった場合、在校生は転校となる。卒業生はその学校の卒業生としての誇りを胸に一歩踏み出す。 廃校になると、その校舎は利活用される例もある。「それぞれ」には校舎自体も含ま