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伸びすぎて危険だという街路樹が伐り倒される前日は雨/小倉るい

2022年5月30日(月)のうたの日15時部屋の題「危険」でバラを取った短歌。

街路樹が伸びすぎて危険な場合というのは、電線に掛かっているとか交通標識や信号を隠しているとかいったことが考えられる。自治会や行政の判断で街路樹が伐り倒されることが決まる。周辺の住民には、回覧などで伐り倒される日が知らされる。

その前日は雨だったという。「前日は」ということは、当日は晴れかくもりで雨は降らなかったのだろう。

雨は、植物にとって天からの恵みである。葉や枝や幹、そして土に雨が当たり、生長を促す。伐られる前に、恵みの雨を受けている街路樹。街路樹が伐られる前に、恵みをもたらす雨。街路樹が伐られることへの自然の抵抗かと思わせる。もしくは、無駄に生長が促されるとも解釈できる。

伐り倒されるのは、街路樹という人の手によって植えられたものの宿命でもある。ありのままの自然とは違う。それでも、伐られることを憐れむ心は人に湧いてくる。神が天にいるとすれば、その神も憐れんだのだろう。

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