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千羽鶴千へと至るはじまりの一羽の深き谷折りの線/文月郁葉

2022年6月17日(金)うたの日3000日記念の題「『せん』を三回詠み込んで」で首席(薔薇)を取った短歌。

作中主体は、千羽鶴を一人で折るのだろうか。それとも何人かで折るのだろうか。その千羽鶴は、平和を祈るものか、病気などの快復を祈るものか。

折る人は、目の前の一羽に全神経を集中させる。特に一羽目であれば、なおさらだろう。「深き谷折りの線」は、どのあたりのことだろうか。鶴の首や頭のところだろうか。深いということは、しっかりと折り目が付けられているということだ。

ただの折り目ではなく、「谷折り」としたところに作者の細やかさが出ている。「谷」であることで、これから登っていこうとする山というのが見えてくる。千羽鶴を折るという山か。

「千」を詠み込んだ歌は多くあったが、「一」に思いを致す歌は少なかったように思う。うたの日自体にも一日目があり、積み重ねで三千日となった。一日目の一首目や運営者の努力に思いを馳せる歌にも読める。一日目という「谷」があって、三千日という山道に至っているわけだ。

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