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臥す母に朝餉の匙を運びつつ知らず左の手を重ねをり/ふにふにヤンマー

2022年6月3日(金)のうたの日11時部屋の題「左」でバラを取った短歌。

何らかの理由で臥している、作中主体の母。その母は自分で食べ物を口に運ぶのもままならない状態である。一時的な臥床というよりは、長期的な要介護状態などが想定される。

そのため、作中主体が母にスプーンで朝食を食べさせている。その時間、いつの間にか知らず知らず、作中主体の左手は、母の手の上に重ねられている。「左の手を重ね」たということは、作中主体は右利きということになるから、母の左側にいるか。そうすると、母の右手に作中主体の左手が重なっているということになる。

第四句の「知らず」に作中主体の優しさや慈しみの念の自然な発露が見て取れる。すると、結句「重ねをり」は、どことなく詠嘆のニュアンスを帯びてくる。

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