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コーヒーの黒い鏡に現れる疲れた顔にミルクを垂らす/みよおぶ

2022年4月4日(月)のうたの日9時部屋の題「現」でバラを取った短歌。

コーヒーは、インスタントだろうか、コーヒーミルで豆を挽いただろうか。それとも店で出されたものか。

「コーヒー=黒い鏡」という比喩は、お題による「現れる」という語により生きてくる。

現れるのは、作中主体の「疲れた顔」だ。立って覗いたのだろうか、それとも座ったまま覗きこんだだろうか。作中主体はコーヒーの入ったカップを真上から覗く。そこに自身の「疲れた顔」を見てしまう。普段の仕事のせいか、家事のせいか、家族の問題のせいか、明らかな「疲れた顔」をしてしまっている。

コーヒーに含まれるカフェインには、疲れていてもシャキッとさせてくれる目を覚ます作用がある。

そのコーヒーを飲もうとしているわけだが、そこに苦味をやわらげてくれるミルクを垂らす。「垂らす」であるから、ミルクだとしてもコーヒーフレッシュ程度の量かもしれない。もしくはコーヒーフレッシュのことを指しているかもしれない。

ミルクを垂らすと「黒い鏡」ではなくなるので現れる顔は不鮮明になる。それと同時に疲れた顔も吹っ飛んでいってしまう憩いのひとときを過ごそうとしているということか。作中主体にとってのコーヒーという飲み物の役割を想像させてくれる歌だ。

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