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虐待通告。命を守ることの大切さと引き換えに失ってはいけないもの

8月25日の東京新聞「こちら特報部」で、児童相談所の一時保護による親子分離で傷つく家族についての特集があった。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/349498?rct=tokuhou

8月中旬に児童相談所にかつて措置された親子の集会があり、家族側の気持ちを訴える会があったとのことだ。集会の企画は全国の地方議員約80人が名を連ねる「児童相談所の在り方を考える地方議員懇談会」という団体だそう。


私自身、2009年から児童虐待などで児童養護施設等に措置された子どもたちへの支援活動をしてきたが、恥ずかしながらこういった団体があることは知らなかった。また、このように親子分離を経験した家族が集会を開くというのも、とても珍しいと思った。SNS等では、児童相談所が虐待から守るというために、親子分離をしたことを「拉致だ」と言い、異議を訴える投稿を見かけることは実は少なくない。「児相 拉致」等で検索すると何件も見つかる。

私のNPOで作っている10代向けの「Mex(ミークス)」(リンクは紹介ページに飛びます)というサイトにも、たくさんの子どもたちから、今の家にはいたくないけど、もし自分がジソー(児童相談所)に相談したら、家が壊れることや、兄弟たちも親と暮らせなくなること等を懸念して、相談を躊躇する声がたくさん寄せられている。ジソー慣れしている子どもたちは、相談するとどういうことが起きるのか、直感的に理解しているんだと思って複雑な気持ちになる。そして、子どもたちは本当は相談したいけど、自分さえ我慢すれば、家族が壊れずに済むという思いで、必死で虐待の事実をなかったことにしようとする。

都内ではこれまで東京都管轄で児童相談所が約10か所あったのが、特別区(23区)にも自治体主導の児童相談所が開設しようとしている。東京都で広域的に虐待通告に対応しようとしても限界があり、もっと地域ベースで子どもたちや家族に寄り添った対応ができるようにという趣旨だ。仕事で関わっている特別区の児童相談所の職員のみなさんは、これまでは虐待の案件は関わりたくても、東京都の児童相談所に権限移譲するまでしかできずもどかしい思いをしていたことから、これまでの苦しい思い、経験を活かして、なんとか地域で虐待家庭を支えられないか、一生懸命考えているところが多いように感じる。

一方で、限られた児童福祉予算に、どこもかしこも足りない人材の中で、どの自治体も職員不足、予算不足で、虐待通告があってから48時間以内にかけつけないといけないといったルール(通称: 48時間ルール)を守るに精一杯な実態もある。48時間以内にかけつけることや、安全のために子どもたちを親から分離して一時保護することはとても大切な考えだ。一方で、少ない予算、少ない人員で実施すると、家族から見て、「拉致」「家族を壊すこと」になってしまうことは当然だ。もう二度と児童相談所に頼らないという、大きな溝というかトラウマにもなりかねない。実際に、児童相談所や警察が家にきたことがある子どもたちの、行政や支援への警戒心はとても高く、一度その警戒心ができた子どもたちに、相談や支援を促すことはとてもハードルが高い。少しでも強制しようもんなら、二度と近づいてこない。

安全や命を守ることはとても大事だが、とても大事な分、丁寧なプロセスが必要だ。そのためには時間も人もスキルも必要。それを忘れてはいけない。

もっと詳しく虐待通告の流れを知りたい方は、以下の記事も是非!専門家の方と色々確認して書いた記事です

#児童相談所 #児童虐待 ♯措置 #NPO  

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