BlenderのためのCG制作環境と各PCパーツ解説
BlenderでCG制作をはじめて3年が経った。どんなスペックのPCを使っているのか、 制作環境を度々聞かれるのでまとめてみた。
せっかくなので、CG制作目線で各パーツを選んだ理由や注意点、PC構築の考え方もコラムとして掲載。
僕自身、CG制作をはじめてMac→Winになったことでパソコン周りにかなり詳しくなった。これからPCを新調しようと思ってる方の参考になれば幸いです。
■PC構築編
まず前提として、BlenderでCG制作をするならMacよりWindowsの方が優れている点が多い(2022年現在)。
MacだとNvidia製のGPUが使えないことをはじめ、未対応機能が多く、コスパも悪い。クリエイティブ系ならMacという印象があるが、CGの世界だけはWin基軸というのが実情だ。開発周りでもそうだし、実作業としてもWinが有利なケースが多い。
僕自身もMacを10年以上使ってきたが、CG制作を始めて泣く泣く卒業した。Macはその美しさや統一性に惹かれてきたが、Winの良さは高いコスパとカスタマイズ性にある。どうせWinを使うなら、自分に合った愛着の湧くオリジナルPCを構築していこう。
CPU:AMD Ryzen 9 5950X
CPUはパソコンの頭脳。CG制作問わずいろんな作業の要なので、なるべく最新で良いものを選んだ方がいい。
後述するGPU(グラボ)はレンダリング速度に大きく影響するが、Blenderの全般的な作業に影響するのはCPUだ。またGPUは買い替えても交換作業はとても簡単だが、CPUの交換はハードルが高く一度つけたら滅多に取り替えない。
だから「迷ったら良い方を買う」でいい。
Intel vs AMD でどっちが良いのかという点においては、Blenderでの作業に関しては特に優劣はないと思う。
CINEBENCHのスコアではAMD製が優勢だったり、公式のBlender BenchmarkでもTop CPUはAMD製ばかり、というのがあるせいか、身の回りではAMDを使ってる人が多い印象はあるが。
マルチコア性能が優れたイメージのAMDなので、CG用途ではシングルコアよりマルチコアが重要視されるのかもしれない。ただ実際のレンダリングはGPUの方が遥かに影響が大きいので、CPUレンダリングはそんなに意識しなくていい(少なくとも僕はCPUでレンダリングは回さない)
メモリ:Kingston HyperX FURY Memory DDR4 64GB(32GB×2)
メモリは作業机の広さと思ったら良い。複数の作業をする場合、広い机の方が作業がしやすい=動作が軽い。メモリを多く搭載するメリットは、Blender単独というよりも、他のソフトをいくつも同時に立ち上げても重くならない、ということの方が大きい。
僕は64GB搭載してるけど、32GBあれば大抵は大丈夫だと思う。Blenderにおいては、32GB→64GBにしたからといって2倍の恩恵を感じるようなことは全然ない。
メモリはあとから増設するのも簡単なので、最低限を揃えて必要に応じて買い足すのもアリ。作業によっては16GBで十分なこともある。ちなみにBlender公式がおすすめしてるのは32GBだ。
GPU(グラフィックボード)①:MSI GeForce RTX 3090 GAMING X TRIO 24GB
GPUは画像演算処理に特化した装置。つまり「画をつくる」CG制作において最も影響力のあるパーツである。レンダリング速度やビューポートの操作性に直結する。
Blenderは近年AMD製GPUも対応し始めたが、開発はNvidia製を基軸に進められているはずなので、AMDに特別な思い入れがない限りNvidiaを買っておけば間違いない。
またBlenderにおいては、GPUの世代によっては使えない機能があるので、最新のRTX30シリーズか、少なくともRTX20シリーズを選びたい。(レンダリングでCUDAより高速なOptixが選択できる、など新しいGPUの方が恩恵は大きい)
僕が使ってるハイエンドのRTX3090は性能は申し分なく、とてもパワフルだ。VRAM(ビデオメモリ)も24GBもある。価格が高すぎることだけが難点。コスパより圧倒的性能が欲しい人向け。3080や3070はコスパが良く現実的、より安価で気軽なのは下記の3060だ。
GPU(グラフィックボード)②:ASUS ROG-STRIX-RTX3060 12GB
僕は3090の前は一時的に3060を使っていた。現在はサブとして利用。
3060は安価なミドルレンジモデルだけどVRAMが12GBも搭載している珍しい仕様だ。このクラスだと通常は6~8GBくらい。あまり注目されないが気軽なCG制作向けとして悪くない選択だと感じる。(もちろん予算があれば3060Tiや3070~3080系列を選んだ方が良い)
Blenderでの作業においてはVRAMは結構重要だ。VRAMはGPU専用メモリで、メインメモリに比べ桁違いに高速。この容量が多いと、ハイポリゴンや高解像度テクスチャが扱いやすくなったり(= 重たいシーンに耐えやすくなったり)、実作業でのストレスが減る。
なのでGPUを選ぶときはVRAM容量も意識すると良い。レンダリング速度が遅いのは我慢できるが、実作業がままならないというのはストレスがかなり大きい。
Blender公式では8GB以上をおすすめしている。そのためRTX2060 Super以上を選びたいところだ。ちなみにGPU比較はこのブログが参考になる。
ストレージ(システム用):M.2 SSD Crucial P5 1TB
こちらはシステム用ストレージ。M.2 SSDは小型軽量で超高速、しかも値段もどんどん安くなっているので主要ストレージでM.2以外の選択肢はないと思う。
同じSSDでも、従来のSATA SSDだと最高速度が500MB/sなのに対して、M.2 SSDだと3,000MB/sとか5,000MB/sとか普通に出る。
ただし、M.2の落とし穴は「キャッシュ外」の書き込み速度だ。QLCというタイプは安いが、キャッシュ切れした後めちゃくちゃ速度が落ちるので要注意。というか買わないほうがいい。TLC以上のタイプで、キャッシュ外でも納得する速度のものを選ぼう。その辺の詳しい解説はこのブログがとても参考になる。
ストレージ速度はBlenderの作業への影響はあまりないが、快適なPC環境という意味では最低でも2,000MB/s以上は目指したい。
ストレージ(作業用):M.2 SSD Samsung 970 EVO Plus 2TB
こちらは作業用(プロジェクトデータや素材専用)として。ストレージはこのようにシステム用と作業用で使い分けるとデータ上の管理がしやすい。
マザーボード:ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI)
マザボに強いこだわりはないが、将来的にいろいろ増設するなら拡張性はちゃんと確認しておきたい。PCI-EやM.2スロットの数など。僕は次買うならASUSのProArtを狙っている。かっこよ。。
電源:ASUS ROG-THOR-1200P
意外と大事な電源。将来的にグラボ2枚刺しする可能性も考えて大容量で高品質のものを選んだ。大容量なので安心感がハンパないが、通常利用なら800Wくらいでも十分だと思う。ハイエンドGPUは電力を大きく消費するのでその点だけ気にしておこう。
CPUクーラー:ASUS TUF Gaming LC 240 ARGB
CPUクーラーは。「空冷」「簡易水冷」「本格水冷」という選択肢があるが、「本格水冷」はかなり敷居が高いので一般的には「空冷」か「簡易水冷」が多いだろう。僕は「簡易水冷」を取り付けている。「空冷」より冷えて、「本格水冷」より手軽、とそんなイメージ。
ケース:ASUS TUF Gaming GT501
ケースは基本的には好きなものを選べばいいと思う。ちなみに僕はM.2 SSDとクラウドストレージがメインなので、SATA SSDやHDDを収納しておらず、内部は結構スカスカ状態だ。なのでもう少し小さめで良かったなと思っている。
ただグラフィックボードは近年巨大化傾向にあるので、そのサイズ感だけ要注意。
■周辺機器編
ここからはおまけとして周辺機器も紹介。
キーボード:Logicool ワイヤレスキーボードCRAFT
2台以上のPCの行き来を楽にしたいなら、LogicoolのFlowという機能が便利だ。マウスも対応製品である必要があるが、一つのキーボードと一つのマウスだけで、別々のPCをスムーズに行き来できる。違うPC同士なのにコピペもできる神機能。Win⇄Macも可能。
ただこのCRAFT、キーボードにしては重たく、しかも上部のコロコロは全然使わないので、下記のMX KEYSというモデルで良かったなとやや後悔。
ちなみに個人的におすすめはUS配列キーボードだ。世界のあらゆるソフトのキーボードショートカットはUS配列を基準に考えられているため合理的な操作感になる。あと単純におしゃれ。Enterキーが小さいのはすぐに慣れる。
マウス:Logicool ワイヤレスマウス M720
マウスは4つくらい試してこれに落ち着いた。Logicoolの高級マウスMX Masterも試したけど、デカすぎて手に馴染まなかった(僕は手が小さいので)。高いものより、手に馴染むものを選ぶべし。
自分のマウスの条件は、「小型・軽量」「カスタムボタン設定」「無段階スクロール」「複数デバイス登録」そして前述のFlow対応という点でこのM720に落ち着いた。
ペンタブ:Wacom Intuos Pro Sサイズ
ペンタブといえばWacom。CG制作のメインでは使わず、絵コンテやスカルプト用。CG制作ではマウスの方がやりやすい作業が多いと思う。
カラーマネジメントモニター:CS2420-Z
適切な色管理をするためのカラーマネジメントモニター。CG制作において必須とまでは言えないが、普通の液晶モニターだと色のズレが大きいため正確な色再現をしたいならこういった専用モニターが必要になってくる。
この手のモニターならEIZO製で間違いない。カラーマネジメントではない普通の液晶モニターFlexScanシリーズでも比較的色がちゃんとしているので、予算的に厳しいならそちらもアリ。目にも優しい印象。
その他、作業用モニターとして台湾メーカーAOC製の27インチも利用(理由は特になく、台湾在住で安かったから。。)
ディスプレイキャリブレーター:Datacolor Spyderシリーズ
各モニターを計測して、色を補正してくれる装置。カラーマネジメントモニターだけではなく、普通の液晶モニターでも補正してくれるので一つ持っておくと便利。これを使うと、デフォルト設定がいかにズレた色と明るさになってるのかわかる。僕はSpyder 4 Eliteというかなり前のモデルだが、未だに重宝している。
モニターヘッドフォン:SONY MDR-CD900ST
昔から定番と呼ばれているモデル。映像編集用のヘッドフォンとして。普通のヘッドフォンやイヤフォンは、低音を強調したり聞く音楽を華やかに演出するため味付けがされているので、正確な音の表現にはなっていない。正確な音を聞くにはこういったモニターヘッドフォンが必要になる。
モニタースピーカー:FOSTEX PM0.3H
ヘッドフォンと同じく、スピーカーも製品によってそれぞれ独自の味付けがされている。なので正確な音を表現してくれるモニタースピーカーというのがある。僕はそこまで強いこだわりがあるだけではないので、安価で小型なこれを使っている。
椅子:Herman Miller アーロンチェア
オフィスチェアといえば、アーロンチェア。かなり高価だが買って損はない椅子。座り心地が全然違う。保証も12年と長い。椅子は仕事道具の中でも一番長く使うものなので、ここに投資するのは理にかなっている、というリアルな説。ちなみに僕は現在台湾在住だが、アーロンチェアだけは持ってこれず日本でお留守番中。再会が待ち遠しい。
電動デスク:STANDWAY
これだけ台湾でしか売ってない製品で紹介するのも微妙だが、最後に伝えたいのが、電動デスクもかなりおすすめってこと。全然このメーカーじゃなくても良い。良い椅子を買うのも大切なんだけど、座りっぱなし自体良くないことだなと思う。
電動デスクだと立ったり、座ったり、作業の体勢をすぐに変えられる。リフレッシュにもなるし、眠気防止にも。別にずっと立ちっぱなしである必要はない(そもそも一日中立ちっぱなしは無理)。
あと意外なメリットとして、配線を整備したり掃除したりなどデスクの下や裏に回り込む作業がめちゃくちゃ楽になる。
今回はハードウェア編という内容になりましたが、ソフトウェア編もいずれ書いてみようと思います。Blenderのバージョン管理、アドオン管理、データ共有、フォルダ構築、バックアップのやり方、作業効率化など、結構ネタになるかなーと。。
▼過去noteの紹介▼