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読書80 『水たまりで息をする』

   高瀬隼子著

夫の研志が突然、風呂に入らなくなった。
会社の飲み会で、入社数年目の後輩に、コップの水をかけらたことがきっかけと考えられる。その後輩は、他の人とふざけていたのだそうで、だから「わざとじゃないんだ」

風呂に入らなくなった研志は、雨が降ると外に出て、濡れて帰って来るようになった。
そのうち、研志の会社から実家に電話があり、義母に知られてしまう。
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入社したときの緊急連絡先が、家になっていたからといって、実家に連絡がはいったようですが、上司は研志が依津実と結婚して、実家には住んでいないことはわかっているのです。

義母は、心配をして、依津実に頻繁に電話をかけて来ます。病院に連れていくとも言います。おそらく本人は行きたくないし、どこも悪くないからと、依津実は躊躇します。依津実にでなく「研志に直接聞けばいいのに」

印象に残った場面は、ここのところの依津実の心の声です。
「もう絶対に嫌だ。生きていくのが大変じゃない人なんて一人だっていないと、気付いていない人と関わるのは」「ああだこうだうるさいんだ」

今の状況に狼狽るものの、依津実の心の声と子どもの頃の話も交えて、物語は進みます。

ラストも釈然としません。想像するしかなく、そうなれば、行き着く先がものすごくこわいです。
研志が、どれくらいのしんどさを抱えていたのも書かれていません。言葉の端々や、会社が研志のことで、依津実にではなく実家に連絡をしているところなどから想像するしかありません。

自分ならどうするかなど、たくさん考えました。
130ページほどの短い作品ですが、この本の中に、改めて考えさせられる要素が詰まっていました。

高瀬隼子さんの『おいしいごはんが食べられますように』は第167回芥川賞受賞作です。

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