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記事55 『百貨の魔法』

   村山早紀著

 星野百貨店は、街の人々に愛され、その日常に溶け込むタイプの庶民的な店だった。
 創業者の星野誠一は、戦争孤児として焼き跡で育った。幼なじみだった商店街の店の子どもたちや、復員してきた従業員とともに、闇市から商店街を復活させ、昭和四十二年、その中心に星野百貨店が開業した。
 いまでは百貨店の建物も美しいままに古くなり、駅のすぐそばに東京資本の、大きくて立派な百貨店もできている。
 「大手の百貨店チェーンに、このまま完全に買収されるのでは?」「その店からも見放され、どこかに売られて、歴史ある建物はどこかに売られてしまうのでは?」という話が、従業員の間で囁かれている。

・空を泳ぐ鯨 
 エレベーターガールのいさなの話と、焼けたテディベアを持って、噴水の前でずっと泣いていた、フィンランドから来日している楽団員、サクラの話

・シンデレラの階段 
 百田靴店の咲子の話。幼なじみのことで、ずっと心に引っかかっていることがある。

・夏の木馬
 時計と宝飾品、高級な贈答品を扱うフロアマネージャーの佐藤健吾の話。この百貨店とのつながりと想いが綴られる。

・精霊の鏡
 資料室に勤める早乙女一花。容姿にコンプレックスを抱いている。絵を描くのが好きだったが、画才がないからとらあきらめている。

・幕間
 創業者、星野誠一の回想シーン。

・終幕・百貨の魔法
 お客さん、従業員、不思議な伝説の話。
 コンセルジュとして就任した結子の話。
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 百貨店を舞台にした物語です。それぞれにいろいろな想いを抱えていて、そこに不思議な伝説の話が寄り添います。
 「夏の木馬」は涙です。もう、苦しいくらいの涙でした🥲
 でも、どの話も親や友人など、誰かにつながっていて、どれもが思いやりにあふれています。

 百貨店業界の厳しい状況もところどころに出てきますが、お客さんや従業員が、いかに星野百貨店に対して、誇りを持って大切にしているかが醸し出されるようなお話でした。

 不思議な伝説の話が出てくるシーンが、わたしは好きです。そういう言い伝えも好きです。なんとなく信じたくなります🤭

 あとがきの最後に『桜風堂ものがたり』はこの作品の姉妹作だと書かれていました。また、読んでみようと思います。

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