見出し画像

デザインエンジニアリングの礎を築いた山中俊二さんの「だれでもデザイン未来をつくる教室」を読んで

こんにちは!健康管理システムCarely(ケアリィ)の導入を通じて働くひとの健康を世界中に創る事業を展開している株式会社iCAREのデザイナーの高橋名人 (@zouzei8to10)と申します!

こちらは
エンジニアリングに興味があるデザイナー、デザインに興味があるエンジニア Advent Calendar5日目の記事です。

デザイン × エンジニアリング の融合

さて、
私が今回のアドベントカレンダーのテーマのデザイン × エンジニアリング 領域の融和で真っ先に思い浮かんだのは みなさんがいつも利用しているJRのSuicaの改札を最初にデザインした山中俊治さん(@Yam_eye)でした。

また、ちょうどこのタイミングで山中さんの新著だれでもデザイン 未来をつくる教室が発売されて、ちょうど手元に届いたタイミングだったのでこの週末に読み込んで感想を綴ってみることにしました。

自己紹介

はじめに、
まずお前誰やねん。ですよね。

私は株式会社iCAREという会社で、おもに会社に雇われて働くひとが、健康を損なわずに適切な就業環境(残業時間・ストレス・人間関係・労働災害・睡眠)を損なわずに生き生きと働ける社会を創るために、産業医や人事労務担当者が使う健康管理システムCarely(ケアリィ) のUIデザインやデザインシステムの構築をしている高橋名人 (@zouzei8to10)と申します。

簡単な経歴でいいますと、
工業系の大学のデザイン学科で建築や工業デザインなどを学び、デザイン事務所やデジタル広告の制作会社を経て2019年より株式会社iCAREで働いております。

最近はくるりを作業中によく聴いてます。

(関連記事はこちら)

中高生向けのデザインエンジニアリングの授業をまとめた本

今回ご紹介したい本の作者である山中俊治さんは、東京大学でデザインとエンジニアリングをつなぐ製品開発や研究などもおこなっており、takaramGUILDなど、デザインエンジニア集団として有名なチームにも多大な影響を与えている方です。
ご本人は漫画家を目指す過程でスケッチや機械設計などの技術を習得し、日産自動車のデザイナーとしてキャリアをはじめられました。


その過程なども含め、山中さんの生涯を通して「ものづくりの“裏側”の面白さと観察のやり方」を中高生に伝えるやさしい口調で書かれているため、非常に読みやすい本であります。

「設計」と「デザイン」、両方学べればいい

そもそもですが、
デザインエンジニアリング は違う概念なのでしょうか?

デザイン(Design)の語源はラテン語の「Designare」にあるといわれています。 Designareは「計画を記号に表す」つまり図面に書き表すという意味であったといわれています。

実際、
普段のデザイン業務においてもUIデザインが「設計」と呼称した方がその生業を表しているという場面はたくさんあります。「デザイン」というといわゆる「見た目を整えること」とイメージしている人も多いため、デザインとエンジニアリングは遠い存在だと感じる人も多いのかもしれません。

しかし、実際はデザインとエンジニアリングは非常に隣接した分野だということは山中さんの本からもご理解いただけるかと思います。

日本語には「設計」という言葉と、カタカナの「デザイン」という言葉があります。一般的にこの言葉は使い分けられていて、設計者とデザイナーは違う職業です。しかし、英語に訳すとどちらもdesignで、どちらの職業もdesignerと呼ばれます。なぜこんなことになっていしまったかとというと、それは英語のデザインという言葉を輸入した時に起こりました(...中略...)つまり、日本では設計とデザインが違う仕事だと捉えられているけど、実はそんなに垣根のない仕事なのです。

水平の線を引いてみよう

この本はA3の紙を横に置きながら読むことを最初に勧められます。

みなさん、A3の紙に絵を描いたことはありますか?
もしなかったらぜひ買ってみてA3の紙にスケッチしながら読み進めてみてください。紙の大きさは大きければ大きいほど自由度が上がります。

例えば、
水平の線 を引くことだってはじめは難しいはずです。

ひじだけを使うと円弧になってしまいます。もっと体を動かして。なんなら、体全体で線の方向へ向かう気分で。僕たちの体って、手首、ひじ、肩の関節、そういう場所を中心に円弧を描いて動かせるよね。指だけは非常に複雑な関節構造が連動して動いているので、必ずしも円弧にならない。指はとても器用だけど、それが災いして、指だけを使ってまっすぐな線を引くのは案外難しい

 本の中でも優しい語り口で語られていますが、
この本では本当に「一見簡単なこと」をその実践を通してものづくりの複雑さに触れる経験として誘ってくれます。

この本の中では様々な工業製品を分解しながらそれらの内部構造をスケッチしつつ、いかに「デザインと構造」が密接に関わっていて、それらに様々な設計思想が宿されているかということを子供たちとともに観察しながら新しいアイデアを展開していく流れになっています。

普段の業務デザインでも、一見簡単にアウトプットしているように見えるものもいろいろな検討がなされたあとの結果であることがほとんどです。既製品や既存サービスを隅から隅までスケッチやトレースすることで隠された設計者の意図を発見できることもよくあります。

デザインに興味のあるエンジニアの方も、試しに既存のアプリやWebサイトを local環境 でイチから組み上げて全く同じ挙動を再現してみることも面白いかと思います。

Appleの公式サイトがどのようなmarginやcolorや影やアニメーションを指定しているのかを実際に作ってみるとその奥深さやデザインの妙技に何か気づくかもしれません。

大体のプラスチックが台形の理由

この「大体のプラスチックが台形の理由」という章はぜひみなさんに読んで欲しいと思いました。

実は、
世の中に数多ある工業製品はほとんどが台形の形をしています。
それには工法的な制約があるためですが、Appleの製品にはその制約を回避しゼロドラフト(抜き勾配0)で製品をつくったりパーティングライン(部品と部品のつなぎ目)を可能な限り滑らかにして目立たないようにする工夫がたくさん施されております。

一番びっくりしたのは、コンピュータを積み重ねた時、側面がピタッと真っ直ぐになることでした。実は普通のプラスチック製品を重ねても、こんなふうに揃わないんです。
Appleはこれをどうやって作ったか。考え方はシンプルで、抜けないなら型をもっと割ればいいと。この製品のボディを作る型は6つに分かれていました。これは当時、最先端の加工方法でした。当然、お値段もびっくりするぐらい上がります。でも、スティーブ・ジョブズはドラフト角をゼロにすることにこだわりました。コンピュータは美しくあらねばならない。というのは、その後も何度も繰り返される彼の基本哲学だったからです。

このエピソードは、まさしくエンジニアリングの工夫により美しいデザインを実現した良い例だと思います。

デザインが決まる3つの要素

デザイナーが日用品の形を決定する要素にはどんなものがあるでしょう。整理してみると、その要素は3つ。機能、構造、作り方です。
〈デザインを決定する要因〉
1 機能 工学的機能/心理的機能/社会的機能
2 構造
3 製造方法(作り方)
(...注略...)実は作り方で全然違うデザインになります。作り方に精通しているかどうかが、プロとアマチュアの一番の差かもしれない。

確かに、製造方法については特に工業製品は重要だと思います。設計までできてもそれを現実のものにできなければまさしく「絵に描いた餅」です。そのためにはどうやって作るか?ということをエンジニアリングで考えなければいけません。ハードウェアのエンジニアリングの考え方は実はソフトウェアの領域でも参考にすることができると考えています。

例えば「ネジ」のように同じサイズの規格を決めることで誰でも分解したり再構築したりできるシステムを作ることや、A3やB4などの紙の規格を決めて適切な状況において誰もが齟齬なく利用できることもデザインシステムのコンポーネントを設計するときにもヒントになりました。

以前、
デザインシステムの講演では、引き出しのサイズに例えて、コンポーネント設計の発表をさせていただきました。

このように、物理世界のメタファーをもとにしてソフトウェアのデザインシステムを構築していくこともヒントになることがあると思います。

iCAREではデザインシステムの構築を通してデザインとエンジニアリングのコラボレーションが盛んです。

最後に採用のご紹介をさせていただきます。


株式会社iCAREではデザイナーをはじめ、各ポジションにて求人をしております。デザインシステムの設計やドキュメントの拡充にご興味のある方はまずはカジュアル面談からでもお気軽ご連絡ください!

このnoteが面白かったら「スキ」や「フォロー」や「コメント」をしていただけると大変嬉しいです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?