タカオ

30歳。 社会人になってから転職、移動ばかり、気がつけば札幌暮らし。 林業、観光業、リ…

タカオ

30歳。 社会人になってから転職、移動ばかり、気がつけば札幌暮らし。 林業、観光業、リゾバ、委託ドライバーなどの経験あり。 これでも作家志望。 あと悩み相談の受付もしています。 悩み相談受付中。 https://coconala.com/services/3311553

マガジン

  • 生きる屍

    10本の小説を詰め込んでいきます。完全なオリジナルではありません。

  • さざなみ日記

    心象が主に9割くらい。情景描写が1割。そんな札幌生活でのエッセイ。

  • 『雑』

    過去の雑念集。

最近の記事

【小説】夏の挑戦⑧

前回はこちら そして彼が私の前からいなくなって、私の中にある冒険心の灯火が消えていくのを感じた。彼は私の中にある、心の炎を燃やす存在だったのだ。”あいつ”がいなくなってから、日常は急に当たり前のように顔を出し始めた。私は祖母の家でのんびりとそうめんと西瓜を食べて、午後は裏山にクワガタ虫を取りに行って、夕方は花火をする。結局、”あいつ”がいなくなるとこんなものだ。そう考えるとひどく味気なく感じた。本来であれば楽しいはずの虫取りも、なんだか味気ないようであった。 夜になると夕

    • 【小説】夏の挑戦⑦

      前回はこちら 次の日の朝。 私は友達と遊んでくることを祖母に伝えて、真夏の早朝の港町を駆けた。 まだ太陽が完全に姿を表す間際の時間帯で、街はしんとして、蝉たちもまだ眠りこけているようであった。 私の心の中は、すでに早く”あいつ”を見送ってやりたいという願いだけであった。涼しげな街並みが私の歩を軽やかにして行く。昨日とは打って変わって、すんなりと目的地まで辿り着いた。あの異様な暑さや重たい荷物、そして恨めしい中学生トリオがいないだけで、こんなにも軽やかに道は用意されているも

      • 結局書くしかないということ、何を諦めたとて

        わかっているようなことを改めて書くみたいであるけれど、それでもなお書くしかないような内容について触れてみる。 おそらくnoteでそれなりに文章を書いている人たちのほとんどが感じていることなのかもしれない。 それは、自分にとって文章を書くことが金になるのかどうなるのか、それを差し置いてまで、自分には文章を書くことが生きて行く上で必要なのだということ。 こんな文章は金にならんからもういいだろうと辞めてしまっても、しばらくすると書こうとする意志がムクムクと蘇り、たとえ疲れていよ

        • 新しくやってみる聞き手サービス

          昔から(いつから?)人の話の聞き役に回ることが多かった。 これは別に自分が人の話を聞いてどうこうしたいというジャーナリズム精神からきているわけでは毛頭ない。自分にジャーナリズムの精神はなく、多分そんなものは枯渇している。聞き役に回ることが多いのは、ただ単純にしゃべり負けしているのである。家に帰ると母と姉が口うるさくガヤガヤしていたのが学生の頃からの日常である。そんな環境に置かれていると、もう自分のことを話すことなんて面倒なことにしか思えなくなるのだ。それで成人になって、それ

        【小説】夏の挑戦⑧

        マガジン

        • 生きる屍
          9本
        • さざなみ日記
          55本
        • 『雑』
          40本

        記事

          自分のしたいことはライターじゃないかもしれない、あとは周りを見た方がいい話(まとまりゼロ)

          webライターといえば、クラウドワークスとか何とか開いて一日中パソコンとにらめっこをする類のことを最初にやらされる。人脈も何もない状態でフリーランスとしてやっていこうものならばだれもが通る道であろう。何時間もずっとスタバの席を動かずにコーヒー1杯でいつまでもカタカタしている人はきっとそう言う人なんだと思う。いい加減カフェのシステムとして一人当たりの席の確保時間を厳重に管理するべきだ。じゃないと札幌の中心部のスタバを初めとするカフェチェーン店はどこもかしこもMacbookと対峙

          自分のしたいことはライターじゃないかもしれない、あとは周りを見た方がいい話(まとまりゼロ)

          webライターを始めて半月が経つ、その振り返り。

          日々の流れはとても早いもので、5月も後半にさしかかった。 自分がライティングを仕事にしようと決めてから半月が経ったのだった。 この半月にしたことはとても大きな進歩であるはずだった。 なので、半月の間にしたこと&していることを振り返りたい。 以下、この半月で自分がしたこと+その解説 図書館に行きライティングの本を借りる →結論としてはそこまで意味がなかった。勉強するならば、インターネットである程度は調べられる。特にwebライターのノウハウのことなんて、ブログやYouT

          webライターを始めて半月が経つ、その振り返り。

          webライターになりたいかもしれない話

          自分はもしかしたら、webライターになりたいのかもしれない・・・。 そう思った2024年の5月。場所は札幌、すすきの近くにあるとあるマンションの中。 この町に移住してきてから早くも1年が経つ。 早いものでもう1年だ。札幌に来ると決めた1年前のことは今でもよく覚えている。去年のゴールデンウイークが終わって、自分はすぐに長野県の野辺山にあったホテルの寮を退去したのだ。そして、選択の余地もほとんどないままに札幌に移住した。本当は数ある都道府県の中から次の行き先を吟味してみたかっ

          webライターになりたいかもしれない話

          【小説】夏の挑戦⑥

          前回はこちら そして、私たちは道の途中で、まるで当然の待ち合わせのように出くわしたのだ。港に着くまでもなかった。私が彼を探していて、そして彼もまた導かれるようにして、私たちは引きつけあったようだった。”あいつ”は今の時点ではもう航海を諦めたようであった。何かを聞くまでもなく、”あいつ”はすでに気力をすり減らしていたのだ。 目があった時、図書館であった時の”あいつ”の生き生きとした面影は少し消えていたのだが、完全に燃え尽きたわけではなかった。私は安堵した。彼がもう完全にやる

          【小説】夏の挑戦⑥

          【小説】夏の挑戦⑤

          前回↘︎ 当時の私は気づいていなかった。 まだ幼かったので、知らないのも無理はない。晴れ晴れした気持ちや、なんとなくの希望があったとしても、先の未来を完全に乗り越えられたとはいえないということ。そんな簡単なことが、まるでわかっていなかった。あの時の私はまさしく「何となくの希望」で未来が約束されたものだと本気で思い込んでいた。きっと私は”あいつ”と楽しく話ができるだろう。”あいつ”はなんの問題もなく船旅に出ることができるだろう。そんな想像がごく当たり前のように脳裏で膨らんで

          【小説】夏の挑戦⑤

          【小説】夏の挑戦④

          前回は… 夏休みが始まって1週間。 この間、私は自由研究の題材を決めたり、父親と夏祭りに行ったり、毎朝のラジオ体操に参加したりと、ごく一般的な小学生の夏休みを謳歌していた。しばらくはクラスメイトたちへ感じていた苛立ちも、”あいつ”のこともあまり思い出さなくなってきた。しかし時折、”あいつ”が誘ってくれた小島への冒険に付いて行かなかったことは、何となく私の中でモヤモヤしていることとして浮かび上がることもあった。 あの時”あいつ”に一緒に小島へ行こうと誘われて、私が行かない

          【小説】夏の挑戦④

          瞬間

          ふと思った。 自分があるのは、連続ではなくて、瞬間がずっと続いているのだと。 その瞬間を捉えられないと、今の自分は過去の自分の連続として捉えることしかできなくなって、自分かこれだと思うことに挑めない。 別に過去の自分がどれだけ強い意志を保とうとも、どれだけの決意を表明しようとも、今の自分には関係ない。今この瞬間の自分に負けてしまっては、なんの説得力もないのだ。 別に昔の自分がどれだけ強かろうが弱かろうが、それは過去の自分でしかない。 瞬間が無限に続いていく中で、自分

          【小説】裸足

          彼女は、街にあるさまざまの喧騒で目を覚ました。 飲み屋通りで客引きをしている声、救急車の音、バイクのエンジン音、そんなところだろうか。音の正体もあまり正確には掴めないほど、外ではたくさんの音が交錯していた。眠りから覚めるとき、ここが家の中であることと、今が日付を超えた真夜中であることだけがわかった。理屈ではない、五感のどこかが彼女にそう教えてくれていた。 この馴染みのない街に引っ越してきてから一ヶ月が経過していた。この一ヶ月の間、彼女の周りではさまざまなことが起こっていた

          【小説】裸足

          【小説】夏の挑戦③

          前回は… 結局、図書室で出会ってからおよそ10日の間、”あいつ”は全く学校に来ることはなかった。 ”あいつ”が学校に来ない間も、担当の先生が自宅訪問に行ったり、他のクラスメイトたちが冷やかし半分で家に行ってみたものの、”あいつ”の姿を確認することはできなかったらしい。”あいつ”の両親は仕事で忙しいようで、普段から家には誰もいないようであった。 ただクラスメイトたちによる”あいつ”の目撃情報がたびたび報告されていた。やれ学校近くのスーパーで見かけた、隣町の港で見かけたなど、

          【小説】夏の挑戦③

          【小説】夏の挑戦②

          最初から読むなら… 夏のとある日の放課後。 私は自由研究に向けて調べたいことがあり、学校の図書室に行った。夏の長期休暇が始まると一時的に図書室は閉鎖されてしまうとのことなので、今のうちに読みたい本などを借りておきたかったのだ。 放課後となると、基本的に図書室は人気もなく、いるのは受付にいる顔馴染みの司書くらいである。こんにちはと軽く挨拶を済ませいつも通り本棚を物色する。換気のために開け放っている窓から、容赦なく侵入してくるクマゼミの鳴き声と、扇風機が鳴らす風鈴の音がやたら

          【小説】夏の挑戦②

          【小説】夏の挑戦①

          チャイムの合図とともに、クラスメイトの大半は慌ただしい勢いで教室を飛び出していく。これから始まる夏の長期休暇を一秒でも取りこぼさないようにと、もうその姿は見えない。教壇にいる先生の止める声もまるで、クラスメイトたちのはしゃぎ声や駆け回る音にかき消されてしまう。夏の楽しみは弾けたように始まり、教室の中はすでに乱れて、教室に残っているクラスメイトたちも、これからの夏の楽しみに心躍らせている様子である。 2階の教室の窓からは、先ほど教室を飛び出した元気な少年たちがすでに見える。彼

          【小説】夏の挑戦①

          【小説】訪問者

          (男の身なりは灰色のシルクハットに、同じく灰色のスーツ姿。左手には手提げのケース、胸ポケットには真っ白なチーフを入れている。髪は肩までかかった癖っ毛に、鼻の下に少しだけある髭が特徴的。年齢は20代後半くらいか) ・・・ここですね。 コンコン(ノックの音) ・・・ ・・・・・・ コンコンコン ・・・ ・・・・・・ ガチャ(ドアの開く音) あ、 「・・・・・・」 すみません、お取り込み中でしたか。 「・・・・・・」 初めまして、お尋ねしたいことがありまし

          【小説】訪問者