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アトリエの小部屋

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2020年5月の記事一覧

アトリエの始まり、そして始めてから

アトリエの始まり、そして始めてから

アトリエを始めたのは、「絵を描くことが好きになってほしい」「工作を上手に作れるようになってほしい」のではなく、造形活動は表現のひとつだということを体験してもらいたかったのです。

言葉にならない、言葉にできない感情を色や画材や素材が代弁してくれて、そこから出てきた本当の自分を怖がったり、嫌がることなく、むしろ、「やっと出てきた」と喜んでいた子どもたち。それをまわりも自然と受け入れ、ケンカしても前ほ

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アトリエが始まるまでの話②

アトリエが始まるまでの話②

Mはいつもまわりの目を気にしていて、なにをするにも自信がなく、小グループの話し合いでも友達と遊ぶ時でも「なんでもいい」「それでいい」と自分の意見を飲み込むところがあった。「無理」「できないからしない」もよく言っていた言葉だ。少し離れた姉がいろいろとできるようで、母がよく比べていた。

造形の時間は、いつも居心地が悪そうで、ソワソワしたり、まわりの子の様子を真似してみたり、でも上手くできなくて潰した

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アトリエが始まるまでの話①

アトリエが始まるまでの話①

年長児から入園してきて、頭の回転とかけっこが早く、リーダー的存在のAがいた。その圧倒的な自信はみんなを強く惹きつけていた。その分、少し強引なところがあってケンカもよくしていた。男の子たちは、Aがすること全てが新鮮にうつったようだった。

その園では造形の時間があった。グループに分かれて、それぞれテーマを決めて土粘土で作品を作った時、Aが友達と一緒に、あるグループの作品を壊してしまった。担任の私より

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