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太陽トーク《ディレクター編》|"好きなもの"を持つことの大事さ

連載【太陽トーク】では、映像制作現場の話を中心とした太陽企画の社員インタビューを紹介しています。

入社4年目にして活躍する同期ディレクターの石川と西村の対談回。
『ブレーン』が主催する動画コンテスト『第8回Brain Online Video Award (BOVA)』では、西村Dirの「面接」がグランプリを、石川Dirの「Hair album」は審査員特別賞を見事受賞(その後、ACC 2021やD&AD Awards 2022、MAD STARS 2022など、それぞれ国内外で多数受賞)。同じ美大出身でもあるお二人の仕事内容を拝見!
(※このインタビューは弊社リクルートサイトで公開している記事を展開したもので、2021年12月に実施しました。)

ディレクター兼プランナー、それぞれの役割とは?

── お二人は現在 TOKYO*で切磋琢磨される日々かと思います。お互い、どのような印象をもっていますか?
*TOKYO =太陽企画内にある制作ユニットの一つ。

石川:
西村くんはしっかりしていて、尊敬しています。企画の出だしがガタガタしていても、そこからまとめ上げる能力がすごくある。グネグネしてた線がすっと直線になっていくような感じ。

西村:
石川さんの印象は、線がグネグネしているのに、何故かグッとくる企画を出して来る。え、なんでこんなグネグネなのに美しいの??といつも感じ入ってます。学生時代からコマ撮りや温かみのあるクラフト系が得意で、企画の思い切りの良さと、造形物の魅力を活かした繊細な演出とのバランスが絶妙ですよね。

太陽企画に応募した際の企画コンテ。(左)石川 作、(右)西村 作

── 企画を考えるプランナーと映像演出を担うディレクター、それぞれどういう仕事内容なのか教えて下さい。

西村:
新人の時の集合研修でプラモデルに例えて説明してもらいました。プラモデルのパッケージには、完成したときのイメージやワクワクする謳い文句が表現されていて、それがプランナーの作る企画にあたる。箱の中にある、実際にどうやって作っていくのか記されている設計図が演出に相当する。企画はここが面白いポイントだよって明記し、演出はその面白ポイントに行き着くまでのフリや盛り上がりを設計している仕事だと言えるよね。

── 広告代理店に出向経験があると聞きましたがそれはどういう経緯だったのですか?

石川:
太陽企画ではプランナーとディレクター、2つの仕事を担います。メディアを横断しながら幅広い企画を学ぶため、また俯瞰して案件を見る目を養うために、2年目の時に代理店でプランナーの経験を積みました。

西村:
僕もいきました。出向期間は1年間ですが、ディレクターの仕事が面白くなってきたところだったから最初声を掛けられた時、実は気が進まなかった。

石川:
本当にそう。でも最終的には行ってよかった。企画と演出の両方に対して理解が深まりました。代理店のプランナーの業務は、プロダクションのプランナーと違って、企画を考えるだけじゃなくて、ディレクターを選んで演出コンテの発注をするのも仕事なんですね。CM制作の流れにおいてディレクターに求められているものが明確になったし、代理店側からの視点を得られたのは大きいです。それまでは、代理店と制作会社では少し距離がある印象でした。でも代理店側の立場になってみたら、仲間として横並びで一緒に作っている意識が強いんだなって思いました。強すぎてオーダーが多くなってしまうこともあるけれど。

西村:
本当に学びが多かったね。僕は特に『ディレクターを選ぶ』経験をしたことが大きくて。ディレクターとして自分の色をもっていることがどれだけ重要なのか知ることができた。僕は会話劇や日常を描いたものが好きで、自分でもそこを得意としていきたいのですが、競合がいっぱいいるイバラの道なんです。だからその上に何かしら自分らしさを積み上げていく必要があるんだと知ることができました。

石川:
他にも「伝え方」の大事さ。例えばある1カットの必要性を伝える時に、ディレクターとして「映像的にこれがいいので」という説明は無力すぎる。企画のゴールから遡って論理的に組み立てて話すと、人はちゃんと聞いてくれるんですよね。これまで全然伝わらない説明をしてたことが分かりました。

西村:
言語化することで、自分の考えも整理できるという利点もある。入社して先輩から「ディレクターとして、進みたい方向や描きたいもの、"なんかいい"と思うものがあった時に、なぜそれが素敵だと思ったの?そのCMが好きなのはなぜ?みたいなものを常に言語化できないとダメだよ。」と教えていただきました。その『なぜ』をどんどんストックしていかないといけないんだと思います。今だからこんな風に話せるけど、僕、入社当初、めっちゃ喋るの下手だったと思います。

石川:
飲み会の時に、グラスの水滴をずっと拭いてる時があったね(笑)。

西村:
まだ完全克服してないけど(笑)。頭の中でどんなに考えていても、発言しなかったらゼロなんですよね。こんなに考えているのに伝わってないのは損だって思うようになってから変わり始めたと思います。

── ディレクターやプランナー、それぞれどういう人が向いていると思いますか?

西村:
プランナーは方程式を知っている人なんだと思います。いろんな商品といろんな知識を掛け算して、クライアントの悩みや課題解決のアイデアを作ることが仕事。

石川:
そして好奇心旺盛な人。企画は、展開するメディアやキャストも考えるので、芸能から社会的なムード、映像表現の流行まで広く興味を持ってるほうがいい。一方でディレクターは自分の好きなものがしっかりある人が向いてるんじゃないかな。

── それぞれプランナーとディレクターの、どちらの業務が好きっていうのはありますか?

石川:
ディレクター!

西村:
僕もディレクター業が好きです。就活の時、広告代理店も受けてましたが、ディレクターを選んでいてよかった。実際にアイデアを形にするのって僕たちじゃないですか。めちゃくちゃやりがいがあります。

ディレクター脳の磨き方

タカラベルモント「Hair album」
Dir: 石川結貴 
第8回Brain Online Video Award (BOVA)|審査員特別賞のほか、
D&AD Awards 2022 | Animation部門 - イエローペンシル
MAD STARS 2022 | Film Craft部門- ゴールドなど国内外で多数受賞

── ディレクターの仕事で一番こだわっているところって?

石川:
だんぜん美術。視覚的なコミュニケーションにおいて美術が重要だと思ってるので、美術に関するコンテや指示はめっちゃ書く。スタッフへの説明も、美術を説明しながらだと上手く伝えることができるんです。「Hair album」のようなシンプルな設定だと、ライティングも美術枠として考えます。なにより美術が可愛いと単純にテンションが上がるんですよね。CMって、テレビを見ていると急に挟み込まれて、企業が言いたい事だけ言って去っていくというある意味強引なメディアなので、作る側としては楽しさやエンターテインメント性を提供したいなって思うんです。

西村:
僕はやっぱり会話劇の演出が好きなので、耳に心地いい会話のテンポをすごく考えます。CM監督が作る映画って、テンポが良くて観やすいんですよ。CMの会話劇は短い尺の中で物凄く速いテンポで進みますが、みんなちゃんと理解出来るように構成されていますよね。そういった経験値が映画制作にも活かされているんだと思うんです。それってすごいことだと思っていて、自分もその技術を身に付けたいです。そのために、必ず事前に自分で声を入れたVコン(ビデオコンテ)を作って検証して、言いづらいセリフや不自然なセリフはないかチェックします。

マスメディアン「面接」 
Dir: 西村征暁 
第8回Brain Online Video Award (BOVA)|グランプリのほか、
ACC 2021|フィルム部門- BRONZEを受賞

── スキルアップのためにお二人が心がけていることを教えて下さい。どのようにディレクター脳に磨きをかけていますか?

西村:
さまざまな映像を見るようにしています。ネットで拾ったりもするけど、社内で映像アーカイブが共有されているからよく使っています。

石川:
私も入社した時に諸先輩に言われて、今や習慣化してる。国内外の先人たちの知恵を知ることって本当に大事。新人のときは、知らないことだらけだったので、30秒とか15秒の短いCMになんでこんなに内容が詰まっているんだろうとか、何カットあるんだろうとか、いろいろ考えながら見ていました。

西村:
プランナーとディレクターを同時にやっていると、自分の好きなものが迷子になることがあるんです。プランナーは自分の好き嫌い関係なく、多方向にアンテナを張りながら解を出していくので、好きなこと思い出す作業が定期的に必要で。自分の好きなものをリスト化して見たり、好きな映画のシーンを繰り返し見たり。ディレクターにとっては、新しいものを吸収するのも大事ですけど、好きなものを明確に持つことが大事だと思います。そして、その“好き”に対して自信や覚悟を持たないといけない仕事なんだと思います。

── お二人の原動力は何ですか?

石川:
将来笑ってる為にがんばってます。この仕事好きだけど、5年後も同じような状況なら辞めようかと考えてます。力がないのにずっといたくないというか。だからがんばる。

西村:
僕、ちっちゃい頃からCMが好きだったんですよ。15秒で楽しくなれるし、たまたま見たものに対していいなって思える。そんな僕が感じたようなことを今度は作り手として提供したいと思ってます。

ディレクターを取り巻くプロフェッショナルたち

── 映像制作で、ディレクターにとってこの人がいないと始まらないのがプロデューサーとPMだと思います。パートナーとして何を求めますか?

石川:
モノづくりが好きな人だといいよね。あと私の場合、アイデアが小さくならないように、あえてスケジュールや予算といった"事情"を全部無視して演出を考えるから、"モノづくり"と"事情"の間を上手くつないでくれる人がいいです。

西村:
場の雰囲気を作ってくれるプロデューサーはやっぱり助かります。クライアントや代理店からの要望に対して、クリエーティブの一線を守ってくれながらも、ギクシャクしないようにコミュニケーションをとってくれる人は信頼がおけます。PMは一緒に考えてくれる仲間だと思っているので、編集でもよく意見を聞きます。やり取りを重ねていくことで、モノづくりマインドがシンクロしていくのは、すごく嬉しいです。

── 太陽企画は社内に、映像制作に関わるすべての部署がありますが、その仕組はディレクターにとってはどう働いていますか?

石川:
めっちゃいいんですよ。ミキサーの先輩もエディターの同期もいる。ミキサーの先輩に「ナレーション録りが上手くならないんですがどうすれば?」って相談したり、エディターの同期に「なんで、ここで合成用のマスク切ってるの?」とか些細な事も気軽に聞ける。私は入社当時からTECARAT(新木場にスタジオのある、社内のコマ撮りユニット)に頭が上がらない。やりたいけど、技術的な問題や撮影方法とか、どうすればいいかわからないところを教えてくれた。ありがたいよね。

西村:
まったく同感。僕がやったことのないような撮影も、どうやって撮ってるのか気軽に教えてもらえる。また競合プレゼンの時に、社内にCGチームがいるとCGでイメージ画像を作って提案できたりするんです。

── 最後にディレクターを志望する方に向けて、アドバイスをお願いします。

石川:
スマホで映像を作れる時代なので、とにかく手を動かして作る。成功でも、失敗でもいいけどモノになった経験をすることが大切。しかも自分が好きな物を作った方がいいと思う。作るって習慣だと思うんです。振り返ると学生時代は絵を描いたり課題をしたり、日々モノづくりをすることで練習をしていたんだと思います。社会に出るといろんな理由からそういうの止めてしまってて、反省も込め、Blender の勉強を始めました。

西村:
僕はCMを作る仕事に就きたくて受けた第一志望の学科に落ちて、せっかくだからと思って学生時代はアニメーションとかインスタレーションとかいろいろなことをやっていました。だから就活のときに提出したポートフォリオには、ちゃんとした映像作品はなかったんです。ただ何を思って、どう作ったのかをちゃんとプレゼン出来たので、映像でもこの子は表現出来るんじゃないかって評価してもらって、受かったんだと思うんです。映像作品じゃなくても、好きなものを掘り下げてモノづくりをするといいと思います。

太陽企画に興味を持った方は コチラへ☟
http://www.taiyokikaku.com

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