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ESPRESSOは「のむアート」

 こんにちは。
今回は、「エスプレッソって何?」という部分を僕が考えてきた事も含めて、書いていきたいと思います。

 「エスプレッソ」、と言われるとまず思い浮かぶ事が

1. コーヒーの濃ゆいもの
2. 苦い
3. 少ない
4. ラテとかに使うコーヒー

 これは、僕がエスプレッソの世界に入る前に思っていた事です。
 実際にエスプレッソを作るようになってからは、「旨みの凝縮した液体」と思うようになりました。

 なぜそう思うようになったのかというと、

ドリップコーヒーで、15gの粉を使って180ccを1杯分として作った場合
エスプレッソでは、15gで30ccを1杯分として作ります。

 同じ量の粉を使うのに、「エスプレッソはドリップの6倍濃縮」し、旨みを抽出していることになります。

 どの抽出においても、「コーヒーが持つ旨み」を、どういう風にカップにおさめるのか、それがエスプレッソの場合は、9気圧の力で15g前後の粉から30ccの液体へと
「旨みを搾り取る」=「1番だし」=「エスプレッソ」

とイメージするとわかりやすいです。

 エスプレッソに感じるのは、「香り、舌触り、喉を通したときの余韻」、濃厚でありながら3つの要素を、豆に合わせて引き出せるかがポイントとなります。

 こちらの写真は、東京の丸山珈琲-西麻布店で頂いたエスプレッソです。
 チョコレートのように、ほろ苦で甘く、トロッとしながら、顔の周りを漂う余韻に、特別な時間を味わうことが出来ました。使われている豆はブレンドされたもので、ブレンドならではの一体感のあるエスプレッソに感動です。

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 僕がエスプレッソの世界に強く惹かれている理由は

「30ccに全てが表現される」


 それは、豆の持つ良さを「生産者→焙煎士→抽出士→飲む人」にまで、それぞれの持つ豆へのイメージが一本に繋がることを意味します。そして、カップに全て表現できたとき、記憶に残る1杯となり、忘れられなくなります。

例えば、コーヒー好きなら一度は耳にしたことがあるでしょう

「パナマ産ーエスメラルダ農園ーゲイシャ種」

 一度でも飲んだことがある人には忘れられない体験だったのではないでしょうか?

 「コーヒー」という枠から飛び抜けた、華やかな香りに、焙煎しているとは思えないみずみずしさ、口の中でほとばしるヨダレを感動と共に抑えきれなかったのを覚えています。

 そんな「ゲイシャ」のストーリをザクっとまとめるとこうなります。

・耐病品種として、病気が蔓延したときに持ち込まれた。
・一定の標高以下では効果が無いことがわかり、どんどん引き抜かれていった。
エスメラルダ農園のダニエルさんが、焙煎し飲んでみると美味しいとわかった。
・オークションで敵なしの状態になる。
・今では1杯2000円以上の価値が付けられている。

参考記事=近年注目を集め続けているコーヒー『パナマ・ゲイシャ』とは?

 もうサクセスストーリー過ぎますね。
 一時は引っこ抜かれていた無価値の木が、今では、1杯2000円の価値を付けるコーヒーの木へと変わっているのです。

 これも、エスメラルダ農園のダニエルさんが、「飲んでみよう」と思わなければ「美味しい」にならず、無価値のまま「ゲイシャ」は無くなっていたのかもしれません。
 今では、バリスタチャンピオンシップの決勝に出場する人たちのほとんどが使う豆となり、他の生産国でも栽培されるようになりました。
 みんなが、「淹れたい」豆であり、「飲みたい」豆となり、
カップに表現される「旨み」に夢中なのです。

 写真は2016年に台湾のコーヒー農園へ行ったときに撮った「ゲイシャ種」です。

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 僕は最近、「ゲイシャ」のような感動を生む豆に出会いました。
 その豆を「エスプレッソ」として表現すると、五感を超えるほどの感覚をしたという感想を頂き、「コーヒー」の枠を飛び越えていたのです。

まさに

「飲むアート」

 先日、「青森コーヒーフェスティバル」でROKPRESSOをしたときに頂いた感想は、僕の予想を遥かに超えていました。

「人生が覆りそうになった人」

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「時間が止まった人」

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「阿鼻叫喚に満ちた場」

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「概念が覆った人」

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 「ロブスタ」という品種は、今のコーヒーブームとは真逆の豆で、「アラビカ」種が持つ、明るい個性が無く、麦の焦げ臭さやドロドロの性質に、ブレンドに使われたり、安価なコーヒーとして扱われたりと、敬遠されがちです。
 でも、インドネシアで飲んだ「ロブスタ100%のエスプレッソ」を飲んだときに刺激されたのです。

「ロブスタにも旨みがある!」

 口に含むと、ブレンドしていないのに、キャラメルやチョコみたいにトロ甘く、長く続く余韻に、「ロブスタも美味しい」と、僕の概念が変わりました。

 それから、「ロブスタ」の抽出方法を作り、バリスタとして「豆の価値を作ること」を軸に、エスプレッソを提供した結果が、上記の画像のような声となりました。

 青森でのことから僕は、より多くの人に「30ccの中にある本質」が伝わってほしく、感慨深くなっています。
 本当にありがとうございました。

どんなコーヒー豆にも「旨み」はある。

 エスプレッソという抽出はとても繊細で、

焙煎後どんな保存するか、焙煎してからいつ使うのか、使う時は晴れの日雨の日なのか、グラインダーはどれで挽くのか、日が経つにつれて粒度はかわっていないか、ホッパーの量が変わって粒度が変わっていないか、豆から油が出始めていないか、粉の量は?、タンピングの強さは?、抽出量は?、クレマの色は?、クレマの量は?、香りは出ているか?、味がキツく出ていないか?、余韻はあるのか?

パッと思いつくなかでも普段こんなことを気にしています。
 1秒、1分と時間が経過していくとともに、豆も変化していくのです。
 コーヒープロセスの最後に位置するバリスタは、常に自分が触るコーヒーの変化を捉え、ポイントからずれないように調整していく事が役目の1つです。

 これは、アラビカ種、ロブスタ種の二大品種から始まり、どの豆に対しても同じです。

 僕はエスプレッソを作るときに、同じエスプレッソを一度も作れたことがないです。いくら数値で揃えても、圧力の掛かり方は変わり、クレマの表情が変わり、同じ抽出感覚というものがなく、必ず「何か」が違います。それを感じつつ、抽出ポイントを外さないように提供していくことが大事なのです。

 実は、エスプレッソで「同じ味」を作れることは、バリスタとして尊敬に値します。

 エスプレッソは表現の「凝縮」でもあります。
 どんどんESPRESSOを飲みましょう。

 エスプレッソに夢中になるとこうなります。

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あとがき

 普段、アメリカーノやカフェラテで親しんでいるエスプレッソを、30ccの液体のまま飲む、という文化が日本にはあまりない印象を感じます。
 もちろん、アメリカーノやカフェラテで伝えたい「美味しさ」もありますが、元にある「エスプレッソの美味しさ」に価値、意味を見出せると、よりコーヒーの世界が面白くなるのではないかと、日々考えています。

 まだまだ拙い文章ですが、最後まで読んで頂けたことに感謝しています。
 少しでも、エスプレッソについての思いが伝わってもらえると嬉しいです。

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手動エスプレッソマシン「ROKPRESSO」から「ESPRESSO」を作るときに考えている事を文字にしています。 30mlの液体から生ま…

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