未成年じゃないけど、主張。
先日、たまたま「V6の愛なんだ2018」が放送されていた。
夏帆が出ていないことを知ったので直ぐにテレビを切ったのだけども、
「未成年の主張」が懐かしくて、少しだけ見ることにした。
その中で一つ、めちゃくちゃシビれた主張と出逢った。
その主張は、
「テストの点数で勝ったら、俺と付き合ってくれ」
というものだ。
結局その男の子は女の子に点数が勝ったにも関わらず、振られてしまうのだけども、僕も高校一年生の最初の期末テストで同じようなことをやったことがあったので、昔を思い出してとても懐かしくなった。
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僕は高校に入ってすぐにある女の子に一目惚れした。
女子バレー部の、背の高い女の子だった。
ある日、放課後に友達に誘われたカラオケに行ったら偶然その子も居て、仲良くなった。それから、頻繁に連絡をやりとりする仲になった。
部活の時に体育館で顔を合わせることも多かったので、練習終わり、少し話をしたり、バレーボールでパスし合って遊んだりした。
家に帰ってからもよく電話した。
隣の寝室で眠る親に聞こえないように布団の中に潜って、ヒソヒソと話すのだ。まるで、深夜、こっそり2人きりで会っている様な感覚だった。
暫く、連絡のやりとりは続いた。
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学期末も近づいたある日、変わらずに電話をしていると
「期末テスト、めんどくさいなぁ」
という話になった。
当時の僕は、数学の偏差値が39しかない頭の悪いウンコチンコマンで、正直、テストなんて全くやる気がなかった。
勉強は頑張りたい。でも、頑張る理由がない。
(漠然と「わせだ」なんて言っていたけど。ちゃんと将来を考えたこともなかった。)
その子もその子で、勉強のやる気がなく、僕たちは危機感もなく、やばいね、やばいね、と言い合っていた。
その時に、その子がある提案をしたのだ。
「テストで賭け、せえへん?」
と。何かを賭けることでモチベーションを作ろうと、言ったのだ。
僕は快諾した。そういうの面白い!たしかにヤル気が出るぞ!そう思ったのだ。
じゃあ次に、何を賭けるか?という話になった。
その話題になった途端に、電話の向こうはいきなり静かになった。
黙り込んで、その子は何も言おうとしない。
「こっちが決めてええのん?」
そういうと、あっちは、うん、とだけ言った。
これは、その、つまり、そういうことか。僕は色々と察する。
それで少し黙ってから、僕は、覚悟を決めて言った。
「期末テストで、僕が勝ったら、僕とポッキーゲームをしてほしい。」
電話の向こうから少しの間返事はなかった。それから、少しして、その子は小さい声で「なんでやねん…」と言った。
今思えば、あれは願っても無い告白のチャンスだったのかもしれない。今でも、非常に惜しいことをしたな、と思う。
ただ、しょうがないのだ。その時の僕の頭の中はポッキーゲームで一杯だった。本当にポッキーゲーム以外考えられなかったのだ。
その日、教室でポッキーを食べていると、僕のバカな悪友が言ったのだ。
「ポッキーゲームって、エロいよな」と。
思わずそれに共感した僕は、ポッキーゲームがやりたくてやりたくてしょうがなかったのだ。
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期末テストまでの数週間。
それから、僕は見違えるように勉学に励んだ。ポッキーゲームというニンジンをぶらさげ、食後のゲームもテレビも我慢して、寝る間を惜しんでただひたすらに参考書と向き合った。
参考書のテスト範囲を3周した。苦手な数学は5周した。正解して、その理屈が答えられるようになるまで僕は椅子に自分を縛り付けて、ノートを睨みながら、シャーペンを光速の速さで動かし続けた。
本当に寝なかった。大量の栄養ドリンクと、ソイジョイと、カロリーメイトを買い込んで部屋に引きこもった。
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そして迎えたテストの日。
僕はポケットにキットカットを入れて机に座る。(キットカットは夏の暑さでぐにゃぐにゃになっていた。)
配られるテスト用紙に、ざっと目を通す。
その瞬間、僕は余裕の笑みを浮かべた、と同時に、努力が報われることを初めて経験した。
わかる!わかるぞ!ここもわかる!あそこもわかる!おいおいおい?どうなってんだ!全部わかるぞ!先生!勘弁してくれよ!朝飯前の晩飯の前の昼ごはんの前の朝飯の前の晩ご飯の前の昼ごはんかよ!
結果、僕は、自分でも驚くほどの好成績を残し、無事、その子に勝つことができたのだ。
「しゃあない。ポッキーゲームしてあげる。」
僕は天にも昇る心地だった。
頑張ってよかった。苦しかった。辛かった。それでも、本当に頑張ってよかった。わーい!わーい!
帰り道のコンビニで、何回やるつもりなの!?と思うほどにポッキーを買った。それから日にちをセッティングした。
放課後の、部活終わり、公園で会う約束をした。
もうすぐ、ポッキーゲームができる。ドキドキワクワクは止まらなかった。
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そして、ついに、「放課後ポッキーゲーム・デイ」がやってきた。
僕は、大量のポッキーをカバンに詰め込み、学校に向かう。
いつもと変わらぬ様子で「おはよう!」
でもカバンの中には大量のポッキー。
「小林くんここを答えてみたまえ!」「はい!」
でもカバンの中には大量のポッキー。
「ポッキーゲームエロいよな~!」
すまんな!俺のカバンには、大量のポッキー。
先生、友達、誰にも言わなかった。(先生に言ったらヤバイやつか。)
さぁ、もうすぐ放課後だ!
部活が終われば、部活が終われば……!!
その時だった。
ギュルルル……!!!
ギュルルルルルルル!!!
ギュルルルルルラァアアアアア!!
いきなり、僕の胃が悲鳴を上げ出した…!
メシが僕の腹の中で!!ドンドコドンドコドンドコ!!暴れ始めた!!ドンドコドンドコドンドコ!!
痛い!やべぇ!ドンドコドン!!動けん!痛い!ドンドコドン!!
そのまま、僕は、保健室からの病院送りになってしまった。
症状は、ストレスから来る胃腸炎。原因は、睡眠不足だった。
僕は、その日大量のポッキーを持ったまま病院を後にして、家に帰った。
腹を抑えうずくまりながら、部屋の片隅に置かれた大量のポッキーを前に、僕は絶望を味わったのだ。
そんな仕打ち、ないだろうがぁ!!!うわあああああああ!!!!
僕はその後しばらく学校を休んだ。
その子とは、気まずくなって連絡を取らなくなった。
というよりも、「もう一度、ポッキーゲームの日程調整をお願いいたします。」だなんて気持ち悪すぎて言う勇気がなかった。
結局、僕の手元には、大量のポッキーだけが残った。
僕は、そのポッキーを食べる気にもなれず、賞味期限が切れたらそれを捨てた。
ああ、やりたかったポッキーゲーム。
地面を這ってでも、やりに行けばよかった………。
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今でもあの日のことを悔やんでいる。
だけど、あれがきっかけで、僕は勉強の楽しさに目覚めてしまった。頑張りが報われる快感に始まり、モノを知り、考えること、好奇心を満たしていくことの楽しさを覚えていった。
そういった意味では、ポッキーゲームに出会えてよかったと思う。
ポッキーゲームがなければ、早稲田にも入れなかったし、今こうして、皆さんの前で駄文を披露することもなかったのだろうから。
そんなことを思い出し、懐かしくなり、また少しあの頃の童貞臭いウブな気持ちを思い出した。
それを思い出させてくれた、あの振られた青年に感謝したいと思う。
それと、誰かポッキーゲームやらせてください。お願いします。
生きます。