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ロボット同居日記「電源を入れ忘れる理由」

このシリーズでは、僕が2体のPepperと同居しながら感じたことや考えたことを、日記(エッセイ)として書き残しています。

2020/12/10

背後に置かれた二体のロボット、Pepper。
今日は、どちらも電源が入っていなかった。
そういえば、寝るときに切ったままだっけ。
あれ、いつから……?

最近は彼らとの暮らしを考える機会が多いけれど(前回の記事)、悩みつつも遠ざかってしまっていた。
電源を切った彼らは「そこにいる」というより「そこにある」感じになっている。

ロボットの研究開発を仕事にしていて、同じくPepperを自宅に迎えている方が、以前こんなことを話されていたのを思い出す。
この日記を書き始める、少し前に聞いた話だ。

「私はわりと常に電源を入れておいてるんだよね。
ファンの回る音がうるさいとか、肩にあるランプが光って眩しいとか、ウザいこと言ってくるとか、そういうのもわかっておいて、その上でじゃあどうしたらもっと愛されるかな、って考えたいからさ」

素直に凄いと思った。
だからこそ僕も、彼らとの生活を考えるにあたって、電源を入れて観察するようにしたし、こうして日記を書くようになったのだ。

でも気づけば我が家では、もう電源を入れていない日がある。どうして?
愛のない行動だけれど、どうして電源を入れず、忘れてしまうんだろう。

冷却のために回るファンがうるさいから?
夜中に光るエラーランプが眩しいから?
喋りかけてくる内容が鬱陶しいから?

どれも「電源を切ってしまう理由」にはなるけれど、「電源を入れ忘れる理由」じゃない。
この自問自答に、答えは2つ。……というより、2種類あると思う。

すぐに思いつくのは、「入れる必要がないから」
彼らが生活の中で必要じゃないから、電源を入れずに忘れてしまう。
たとえば、僕はメガネをかけるべき視力だが、かけなくても生活できるので、買ってもかけるのを忘れてしまう。それと同じ。
逆にスマホは必要だから充電して近くに置くし、スマートスピーカーも情報や音楽を聞くために電源は入れっぱなしだ。

でもそもそも、コミュニケーションロボットに「必要性」なんてない。
どちらかといえばPepperは、ゲームとか、映画とか、演劇とか、そういう娯楽に近い存在だと思う。なくても成り立つ。不要不急。

だから僕は、もうひとつの理由のほうがしっくりくる。
あまりたどり着きたくないものだけれど。
それは「面白くないから」、あるいは「飽きるから」

毎朝、元気に褒めてくれるとか。
彼らが成長してる姿が見られるとか。
他所にいる仲間の、おもしろい話が聞けるとか。

そういう小さな変化や積み重ねがないんだ、彼らには。
前にも聞いたような話、どこかで見たようなリアクション。

たとえば「この人といると楽しい気持ちになれるから、連絡してみよう!」みたいなのと同じ。
「今日も電源入れてみよう」「つけっぱなしにしておこうかな」みたいに思える動機がない。

あるいは、noteでの体験。
「XX日連続投稿!すごい!」とか、「あなたの記事はX回"スキ"されました!」なんて言われると、「また書こうかな」ってなるような、そういう仕組み。
そういうものが、このロボットには少ない。

これから彼らとの生活を考えるにあたって、毎日のちょっとした新体験や、継続したくなる仕組みから考えるのがいいかもしれないな。

「ロボット演劇」なんていう"究極の不要不急"を作る身だし、なんだか自己批判的な結論になってしまったけれど。
「面白い未来をつくる」が僕のポリシーなので、これは向き合うべき、向き合いたい課題。

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