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「燕三条 工場の祭典」 体験レポート2019

皆さん、こんにちは。
プロダクトデザイナーの三島です。

先日、オープンファクトリーについての記事を書きましたが、実際に10月5日(土)「燕三条 工場の祭典」に行ってきましたので、体験レポートを書いてみたいと思います。

燕三条 工場の祭典とは?

「燕三条 工場の祭典」は、2019年10月3日(木)から6日(日)までの4日間、金属加工をはじめ、鍛冶や木工などの技術が集まる新潟県燕三条とその周辺地域で開催されるイベントです。普段は一般公開されていない数多くのKOUBAの扉が開かれ、見学や体験をすることができます。製品を産み出すKOUBA(工場)や、農業に取り組むKOUBA(耕場)、地元の産品に触れ、購入できるKOUBA(購場)。


今回、御伺いしたKOUBA一覧(行った順)
①武田金型製作所
②日本洋食器
③玉川堂
④火造りのうちやま
⑤タダフサ
⑥諏訪田製作所
⑦マルナオ

燕市にある武田金型製作所と日本洋食器、玉川堂が近く、
三条市にあるタダフサ・諏訪田製作所・マルナオが近いので、
燕地域と三条地域を分けて行っても良いかもです!

それでは、体験レポート始めていきます!


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今回は友人3人と一緒にオープンファクトリーを回ることになり、東京から、2時間ほどで燕三条に到着しました。駅には、こんな感じの看板でお出迎えしてくれます。ちなみに其々の工場は距離が離れているので、車で回ることを強くおすすめします!


①武田金型製作所

燕市で自動車や家電、建築部品向けの順送プレス型を得意とする、武田金型製作所。金属製品用プレス金型の設計から修理までを手掛けています。

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まず朝一番に御伺いしたので、武田金型製作所さん! 

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この金属の板から文字が飛び出したり、消えたりする加工物が有名。文字を押すと、凹の方に完全に埋まりあたかも金属の塊のように見えます。放電加工を用いることで、3/1000の精度で加工ができるようになります。その精度の凄さを体験してもらうためのオブジェクトだそうです。実際に見るとその精度の高さを実感できます!


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実際に放電加工や放電加工に用いるワイヤーの自動取り換えを見せてもらいました。この自動取り換えの時の、ひょっこと出てくる感じがとてもかわいいです。


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こちらは、順送プレス型での製作事例です。金型を作る製作所さんなので、金型は納品しますが、見本で作ったものは保管してあります。この見本を元に、近しい金型を作るときに参考にするそうです。ディスプレイとしても美しく、これだけでは何を作っているかも分からないものもあります。


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スケールの製作体験もしていたので、参加してみました。実際にプレス加工機のボタンを押して、スケールのメモリを付け、手作業で名前を刻印していきます。普段はプレスのボタンなどは絶対触られてくれないモノなので、良い機会でした。


②日本洋食器

『柳宗理デザインシリーズ』を中心とした、カトラリーやキッチン用品などを生産している。柳宗理:戦後の日本を代表するインダストリアル・デザイナー

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そして続いてお伺いしたのは、日本洋食器さん!

まず見学したのは、スプーンやフォークの成形です。ステンレス板から、ヘラのような原型に打ち抜く「地抜き」の工程から、徐々にスプーンの形になっていく工程を丸ごと見学できます。

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全て機械加工で自動でやっていると思う人もいるかもしれませんが、職人さんによる手作業での加工も大切になってきます。例えばスプーンの口に入る部分の曲面や薄さなどを出すロール加工など、繊細な部分は機械には出来ず、一つ一つ職人さんが調整していきます。


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こちらは研磨の工程です。丁寧な磨きの工程を何度も経て、美しいスプーンに仕上がっていきます。ちなみに自動研磨機では、1日で約6,000本以上を研磨していくそうです。自動研磨機で扱えない形状や大きさのものは、職人の手で丁寧に磨いていきます。


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他にもステンレスボールの成形なども見学できます。この金属の板からボール形状が出てくる、絞りの加工は見ごたえあります。


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最後にこちらでは、破格のくじ引きイベントをやっています。一回千円で、柳宗理のキッチン用品などが当たります。しかもジャンケンに勝てば、2回引けます。3等でも5000円相当のが貰えるのが、相当お得です。ちなみに一緒に来た友人が特賞を当ててました笑



③玉川堂

燕市の金属加工業の中でも唯一、1枚の銅板を鎚で叩き起こして銅器を製作する「鎚起銅器」の伝統技術を二百年弱に渡って継承している老舗企業。銅に多彩な着色を施す技術は、世界でも玉川堂のみが保有している。


玉川堂さんを見学予定でしたが、残念ながらちょうどお昼休みだったので、隣の「玉川堂 CRAFT CAFE」で地元食材を使った燕三条 工場の祭典カレーを美味しく頂きました。

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玉川堂さんは、この工場の祭典以外の時でも工場見学をしているので、ぜひ興味のある方はぜひ。


④火造りのうちやま

およそ400年前から続く三条の和釘づくりを継承する和釘鍛冶屋。伊勢神宮をはじめ、全国各地の神社・仏閣・城・茶室・その他文化財などの修理復元の現場に和釘を納入している。また一方で新しい素材や手法を駆使し、身近な生活雑貨の製造にも取り組んでいる。

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職人の内山さんに、工場の案内や作り方を見せていただきました。
ここが正直、一番興奮しました!


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コークスと呼ばれる石炭の炭素部分だけを残した燃料を用いて、火をおこします。そこに釘の元を入れ、熱します。

昔は木炭を作っていたのですが、燃料としてはコストが高く、温度が高くなるのに時間がかかる等の理由で、今はコークスを用いているそうです。ただコークスの灰は産業廃棄物となり、木炭よりも耐久性が出にくいということもあるそうです。

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熱したうちに釘を金槌でたたき、頭部や釘の先、全体の形状を作ります。叩く面は2面のみで、手首を90度返して叩くそうです。この90度返す練習をまず修行するらしく、それほど基本になっています。


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このような1cmほどの小さいな和釘も作っています。それも玄翁を用いて、叩いて、加工をしていきます。


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和釘にもいろいろと種類があり、用途によって使い分けています。

釘の頭部をくるんと巻いた「巻頭釘」。木に完全に打ち込めば、頭部分が平らになり、床と一体になるそうです。

釘の頭部がLのように曲がった「階折釘」。木の側面に打ち込む釘で、頭部が曲がっている理由は雨水が釘の中に入るの防ぐためだそうです。下に向けて打ち込むことで、雨水は下にそのまま滴り落ちます。


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大工さんが釘を口に釘を含んでいるの見たことがあると思いますが、理由を知っていますか?

正解は、酸化を早めるため(諸説あり)。錆びつくことで、木との食いつきが良くなり長持ちするとのこと。

他にもいろいろと紹介したい和釘の知恵(和釘は柔らかいので節を避けるように進むとか)があるのですが、またどこかの機会で。


⑤タダフサ

職人の手仕事にこだわる新潟県三条市の庖丁メーカー。

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包丁製作で有名な「タダフサ」さんでは、工場見学&庖丁研ぎ直しや、アウトレット販売もしております。今回は時間が合わず、アウトレット販売のみを見て回りました。


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使用には問題ないけども、ちょっと傷があったり薄かったりする包丁が何割引きにもなってこの期間限定で販売しています。

タダフサさんの包丁は切れ味がとても良く、1年間は切れ味が継続すると言われています。切れにくくなって研ぎ直しをすれば切れ味は元に戻り、一生使えるとも言われています。

こちらは、この工場の祭典期間以外でも工場見学を開催しているので、興味ある人はぜひ。



⑥諏訪田製作所

「刃と刃を合わせて切る」ニッパー型つめ切りを主に制作する。商品開発・材料選びから仕上げまで、全て自社の職人が手がけている。

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こちらでは、ツアーのようなオープンファクトリーを常時開催しており、建物自体が見学できるような仕様になっています。(中は撮影禁止のため、ほとんど写真がありません)

諏訪田製作所では、鍛冶職人をモチーフに、建物・機械・作業着も黒色で統一しており、機械も全て職人さんが手塗りで黒くしたそうです。

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この爪切りの凄さは、切れ味にあります。すべての工程が職人の手によって作られており、一つ完成するのには約3カ月かかります。一本約7000円ほどですが、販売数は年間約10万丁にもなるそうです。

オープンファクトリーでは、度迫力の鍛造工程から研磨、繊細な刃付け工程までまるっと見せてくれます。オープンファクトリーを体験すると、この一本7000円が自然と欲しくなり、その価値を体験できるかと思います。


⑦マルナオ

金属加工の町「燕三条」において、木材加工で有名なマルナオ。希少価値の木材を用いて、職人の手作りで主に箸などを制作している。

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最後に訪れたのは金属加工の工場ではなく、木材加工の工場「マルナオ」


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このような職人が手作りで、使いやすく美しい箸の製作を主にしており、実際に使ってみるとその持ちやすさに驚きます。


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こちらも常時オープンファクトリーができるようになっており、ガラス越しに職人さんの技を見ることができます。金属加工の工場と違い、音が比較的静かです。むしろシュシュと木をやする音は心地よいです。



いかがでしたでしょうか?

個人的には、金属加工の町を存分に堪能できた、大満足なオープンファクトリーでした!職人さんの技を間近で体験できる、貴重な機会になり、多くのことを勉強させて頂きました。

今回の工場の祭典、全体を通して感じたのは女性の職人がとても多いこと。パンフレットにも、女性の従業員数が書いてあったりします。

金属加工と聞くと、きつくて危ないというイメージあったかもしれません。しかし実際に行ってみると、それは過去の話で、職人さんが働きやすい工場作りが進んでいるのだと感じました。


工場の祭典の期間は、町全体がお祭りの様で行くだけでも楽しいです!
もし興味がある方は、ぜひ来年行ってみて下さい!



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