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踵を鳴らして行けば

思い出の手招きで僕は
高架下から這い出るように繋がる
ただ青いばかりの空へ
右手に持った花束に
大した意味も感慨もないけど
何も要らない様で
でも何かが要る様な
思わず立ち眩み。

嗚呼、喉が鳴る
何処かから呼ばれたための返答か
何処かへの遺志を投げつけたいのか
狂ってしまった脳内経線では
感覚は頼りにならない
それでも、一昨年より少し細くなった両手首を包む
冷たい約束だけは、今確か

壊して、さらって、破いて、砕いて
灰になれたら最上、砂利になったらそれも一興
躊躇って、振り返って、跪いて、独白して
迷い道は途絶えた、磨り減った色んなものが
乾坤一擲、尽きる瞬間に放つ圧倒的な光で
僕の世界は紙一重で保たれている。

相変わらず高架下は薄暗い喧騒
垂れ流された世界の余情が、至る所で唾を吐いている
こんなもんだったろうか
もう少しまともな生き様を描いていた
指揮者のない楽団だった様な
次々に捲られていく追憶が、その度
何と無く吹き抜けた風に泳いでいった。

嗚呼、喉が鳴る
いくら探したって煙草はない
沈静のための処方はこの手じゃ掴めない
知識が花咲く前には持ってたはずの
楽園への鍵も錆び付き始めたのを最期
見てもいない。でも生きてた

思い出の手招きで僕は
高架下から這い出るように繋がる
ただ青いばかりの空へ
左手に握られた透明な銃
撃ち抜こうとしているのか
撃ち抜いた後なのか

僕は生きてた、生きてしまっていた

高架下を抜ける頃
書きなぐった手紙が読まれることを
祈って
不細工で不器用な歩調
踵を鳴らし、行く

『踵を鳴らして行けば』

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